テラーノベル
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「お互いの夢が叶ったら、また会おう」
(うん、約束)
そんな約束から10年がたった。
俺は現在25歳。
社会から見ればまだまだ若造だが、俺からすればもう焦りの対象になる年齢だ。
人生百年時代、その4分の1が終わっているのだと。
もうそう簡単に夢に向かって走り出せる歳ではないのだ。
走り出しても、すぐに息切れて結局引き返す。
それなら最初からその場に留まっていた方がいいに決まっている。
(ゆあん、これ)
「…はい」
夢に向かって羽ばたこうと翼を広げても、世間の目はそれを邪魔だという。
その視線が冷ややかで、痛くて。
大抵の人間は自ら自分の翼に手をかけるのだ。
「…寒」
今日は今季一番の冷え込みだという。
自然とつくため息は白く、自分の疲れが可視化されるような気分で少し腹立たしい。
「…これ、雪でも降るんじゃないの」
共感する人なんて誰もいない、ただの独り言。
そこに虚しさを感じつつも、街灯は俺を照らしてくれる。
静かな夜に、自分の足音だけが響く。
俺だけの世界のような気がして、すっかり浮き足立っていた、その時だった。
『あのッ、すみません!!』
『助けてください…!!!』
目の前に現れたのは、長い髪の女性だ。
誰のものかわからない血を纏い、それは吐き気を及ぼした。
だけど体は拒まなかったようで、自然と手を差し伸べていた。
気がつけば家には知らない人と2人きり。
彼女は口を開かず、ただただ俯き、何処か居心地の悪そうな顔をしていた。
なんなんだ。と思いつつ、不思議と危険とは感じなかったので、俺はお風呂に入るよう言った。
「服は洗濯機に入れて、部屋着は俺のを貸すから」
警察にでも届けるべきなのだろう。
が、彼女を突き出す気は起きなかった。
『…ありがとうございます』
出会い頭とは打って変わった落ち着きよう。
男の家に入っておいて、警戒心が無さすぎると思いつつ、疲れ果てた俺は一目散にベッドに倒れ込んだ。
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