テラーノベル
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五楼隊が進軍スピードを上げ、雨宮隊がテンションとコンディションを下げていた頃。
久坂隊もつつがなくピーライダンジョンの入口に到着していた。
「いやぁ、六駆の小僧にゃあ気ぃ遣わせてしもうたかのぉ。まさか街中のホテルの部屋に『基点』があるっちゃ、流石にたまげたわい」
「確かにそうかもしれん!!」
雨宮隊のスタート地点が流氷の上だった事を考えると、その格差については語るまでもないだろう。
六駆は先日、久しぶりに祖母と顔を合わせて「お年寄りには親切にしよう」と言う小学生の標語みたいな目標を立てていた。
「それにしても、これ美味しいっすね! 加賀美さん!」
「そうだね。腹ごしらえは戦う上でも重要だから、しっかり食べておくんだよ、山嵐くん」
「ホテルの1階の売店でスナック買えるって……。こんな任務のスタートの仕方、私は初めてですよ」
「すみませんの。うちの孫が混乱させてしまうような事をしまして」
彼らが食べているのは、ブラジルではポピュラーなジャンクフード。
その名も『マンジョッカフリッタ』と言う。スキルの名前ではない。
マンジョッカと言う芋を油で揚げたもので、塩をかけて食べる。
なお、マンジョッカとはキャッサバの別名であり、キャッサバはお馴染みタピオカの原材料である。
森の中、気配を殺して進んだ五楼隊。
門を抜けたらセイウチが歓迎して来た雨宮隊。
繰り返すが、久坂隊は完全に当たりを引いていた。
ピーライダンジョンは街の郊外にある廃病院の中に入口がある。
ダンジョンは基本的に偶発的に発生するため、このように建物の中に入口ができる事もあるが全体でみるとやはり稀なケース。
「こりゃあ国際協会も気付かんはずじゃのぉ。ワシらもオペレーターの指示聞きながら、半信半疑じゃったもんなぁ。もしもーし。聞こえちょるか? 福田の」
久坂隊のオペレーターも福田弘道Aランク探索員。
月刊探索員のお正月特大号で行われた「理想のオペレーターランキング」で堂々の第1位を獲得した全オペレーター憧れの的であり、その手腕も評価に恥じないものである。
『こちらは福田弘道です。久坂さん、いかがされましたか』
「こっちは第1層を問題なく攻略したんじゃけどのぉ。ワシらのダンジョンは罠が多いっちゅう話じゃろ? 第2層に入っても問題ないかいのぉ?」
『確認します。……問題がありました。第2層の入口に転移装置があります。しかも、煌気を抑えてある様子から見ると、完全に罠でしょう』
「かぁー。なんちゅう陰湿な罠仕掛けるんじゃ。堪らんのぉ」
ここで元アトミルカの55番が思い出したように久坂に告げる。
「そう言えば、聞いたことがある! アトミルカの構成員は元探索員も一定数いるのだが、彼らはダンジョン攻略中に気付いたらアトミルカの施設へとたどり着いていたと。察するに、このような罠にハマった結果なのだろう!!」
「55番さんの考察には筋が通っていますね。片道切符の転移装置に巻き込まれてしまえば、もうアトミルカの軍門に下るか、自決するかの二択を迫られる訳ですから」
「こ、怖すぎる……。ヤメてくださいよ、加賀美さん。ポテト食べる気がなくなりました」
「では、ポテトは私が引き受けよう! 山嵐助三郎!!」
「あっ、私ももらいます! 山嵐くんって意外と繊細なんだから!」
55番と土門佳純Aランク探索員がポテトをサクサク食べている間に、働く老人は罠についての対策を講じていた。
「ほいっ! 『赤い転ばぬ先の杖』!!」
四郎が【黄箱】から取り出したイドクロア装備を解放。
すると、ダンジョンの床や壁のところどころが赤く染まる。
「こりゃあ四郎さん! 仕事が早いのぉ!」
「お給金を頂いとる以上は働きますぞい! ワシらの作ったものが早速役に立ちましたな、久坂さん! ほっほっほ!」
「そうですのぉ! 年寄りの知恵を甘く見ちょるヤツらにひと泡吹かせるのは楽しいもんじゃて! ひょっひょっひょ!!」
「すごいですね! これがお二人の作った新装備ですか! では、破壊は自分が!! 攻勢参式! 『極楽鳥』!!」
美しい羽を広げて、煌気に反応する斬撃を何発か放つ加賀美政宗。
この3人で罠を突破していくのが久坂隊の基本方針である。
まずはその内容についてお話しよう。
◆◇◆◇◆◇◆◇
モノづくり大好きじいちゃん、逆神四郎。
文武両道で自前の武器も作れる探索員の生き字引、久坂剣友。
この2人が今回の作戦に備えて、いくつかのイドクロア装備を開発していた。
南雲修一のように機能性に優れ洗練された発明品を作る事に関しては不慣れな老兵たちだが、彼らには「経験」と共に培ってきた「発想力」がある。
「罠っちゅう事ぁ、アレですのぉ。煌気がいくらか出ちょりますわいのぉ?」と久坂が言えば、「そうですな。ならば、その煌気に印でも付けますかの!」と応じる四郎。
彼らは「そりゃあええですのぉ! ひょっひょっひょ!」「破壊は若い子らに任せましょうぞい。ほっほっほ」と悪だくみを企てた。
そうして出来たのが『赤い転ばぬ先の杖』である。
この杖は煌気に反応するガスを噴射する事で、その部分を赤くマークできる。
煌気の弱い場合は赤い色が濃くなり、逆に強い場合は薄く色が付く。
「ワシじゃったら、大きい罠ほど煌気の流出は防ぎたいけぇのぉ」と久坂が考えた機能だった。
「それならば、破壊しやすいように特定のスキルを引き寄せる機能を加えますぞい!」と、更に改良をするのが四郎。
こうなると、老兵たちは止まらない。
「ほいじゃあ、破壊は加賀美の小僧に任せるのがええ!」と、久坂は加賀美政宗を呼び出した。
ちょうど彼は修行中。
自分の使う加賀美流剣道スキルの攻勢と守勢を新しいものに組み替えている最中であったため、「分かりました。追尾する剣技を作ります!」と応じた。
結果、「トラップ特化の久坂隊」が完成していたのである。
◆◇◆◇◆◇◆◇
加賀美の『極楽鳥』が赤くマークされた部分を次々に破壊していく。
「さ、さすが加賀美さんだなぁ。でも待ってください。これって敵にバレませんか?」
「確かにそうかもしれん! だが、そこをうっかりする久坂剣友と逆神四郎ではない!!」
『赤い転ばぬ先の杖』には「罠そのものを一定時間、空間ごと封印する」特性もあり、その時間内であれば罠に何が起きようと誰も知る事はできない。
もちろん、こんなチート装備なのだから支払う代償も大きい。
「やれやれ。やはり煌気消費が激しいですわい。第2層だけで結構な疲労感ですじゃ」
「お疲れ様ですのぉ、四郎さん。次はワシがやりますけぇ!」
この杖は煌気消費量が半端ではない。
一度の使用で、決して少なくはない四郎の煌気総量の5分の1を奪っていく。
だが、そのための大所帯。
「久坂剣友! 私も使ってくれて構わない!! むしろ、私がまずは煌気を使い切ろう!!」
「あ、それならばオレも! この中で1番弱いですし!」
「私も使い方を習っていますから、行けます!!」
若者たちの奮起に目を細める老兵の2人。
「ほっほっほ! この部隊は気持ちのいい若者ばかりですな!」
「ワシの人選ですけぇのぉ! そこのところは熟考しちょりますけぇ! ひょっひょっひょ!!」
トラップダンジョンとの戦いは始まったばかりだが、先制パンチは久坂隊が決める。
「……よし! 久坂さん! 全てのマークを破壊し終えました!! 先に進めます!!」
「おう! ご苦労じゃった、加賀美の! ほいじゃあ、行くぞいお主ら!!」
老人の経験値に勝る安心感はない。
その老人がさらに強いとなればもう、格別なのである。
#現代ダンジョン
夜鐘
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#学園
大正
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裏五条
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コメント
1件
いやあ、めっちゃ好きな回でした! 久坂隊のじいちゃんたちが作った「赤い転ばぬ先の杖」、名前からしてセンスあるし、機能もめちゃくちゃチートで笑っちゃいました。罠の煌気に反応して印つけて、しかも空間ごと封印って…他の部隊とのスタートの格差がまた面白いですよね。ホテルでポテト食べてる描写とのギャップがたまらなかったです。加賀美さんが「極楽鳥」でバシバシ破壊していくシーン、頭の中で映像が流れました。おじいちゃんたちの「経験値に勝る安心感はない」って台詞、ほんとそれ! 老兵たちのワクワクがこっちにも伝わってきて、読んでて自然と頬が緩みました。次はどんな装備が出てくるんだろう…続きが気になる!