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「うわー、すごい人だかり!」
歓声の上がる場所に向かっていくと、かなりの人だかりが出来ていた。
「世界に5人もいない、S+級の冒険者ですからね。
国の数よりも少ない存在なんですよ!」
ルークさんの目はキラキラしている。
世界のトップ5に入る冒険者。
そんなに凄いなら、こんなにキラキラしてしまうのは仕方がない。
「キラキラばかりしてないで、見えるところまで行きますよ!」
まずは何より、私だって実物を見てみたい。
ルークさんを急かしてみると、彼は途端に慌て出した。
「は、はい! 申し訳ありません!!
向こうからなら、遠目ですが見えそうですね!」
「ではそちらに向かいましょう!」
引き続きルークさんの手を取って急ごうとしたが、人が多すぎて思うように動けない。
「アイナ様、ここからは私が先に歩きます。
私の後ろを付いて来てください」
「そうですね、よろしくお願いします」
私は素直に、身体の大きいルークさんに前をお願いすることにした。
とりあえず、ルークさんの服を後ろからぎゅっと掴んでおくことにしよう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
――舞い散る紙吹雪。
まるで魔王でも倒してきたかのような、そんな過剰な演出。
「……英雄の歓迎って、ここまでするものですか?」
飛んできた紙吹雪をいじりながら、私はつぶやく。
「普通、ここまでやらないとは思いますが――
……実は今回、伯爵家のお嬢様の発案でして……」
伯爵様のお嬢様といえば……ヴィクトリアのことか。
「あはは……。
派手な方なんですねぇ……」
苦々しい記憶と共に、私の言葉尻にも嫌な思いが混じってしまう。
「あ! あそこを見てください!
遠目で小さいですが、あれが英雄シルヴェスターのようですね!」
ルークさんの指差す方を背伸びして見てみれば、白銀の装備を纏った騎士が小さく見えた。
「何だか、凄そうな装備をしていますね」
「そうですね。
磨き上げられた白銀の鎧もかなりのものですが、何といっても彼の剣ですよ!」
「剣? すごい武器なんですか?」
「はい! 世界に3本しかないと言われる神器のひとつ――……『神剣デルトフィング』!!
まばゆい光と共に、すべてを斬り裂くといわれる伝説の聖剣です!!」
興奮するルークさん。
それにしても『神器』という言葉、何とも心を猛烈にくすぐる響きがある。
どれどれ? この距離からでも鑑定は出来るかな――
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【神剣デルトフィング】
形状:神器<剣>
属性:水
熟練:72/100
特殊:超斬撃 全攻撃補正 不死特効 悪魔特効 炎特効 全種族攻撃UP 状態異常耐性UP 装備限定<英雄>
加護:氷の加護
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……って、出来た!!
それにしても、何だか本当に凄い武器だなぁ。
形状に至っては、『剣』ではなくて『神器<剣>』。
完全に別格の扱いをされているし。
……そもそも『神器』ってなんだろう?
えい、かんてーっ。
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【神器】
極限の創造技術により生み出されたアイテム。
通常では見られない、様々な効果が付与される
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……なるほど。
たしかに『特殊』やら『加護』なんて、かなり凄そうだもんね。
……ところで、『極限の創造技術』っていうのは何だろう?
えい、これもかんてーっ。
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【極限の創造技術】
レベル99に達成した『鍛冶』『裁縫』『錬金術』スキルのいずれかに加え、
関連するユニークスキルを一個人で所有した場合の技術体系名
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……ふむふむ。
錬金術もばっちり対象に入ってるね……。
それに、『関連するユニークスキル』……と。
――あれ?
もしかして、私のスキル構成って……もしかして、もしかする?
以前、自分を鑑定したときにはそんな項目は無かったけど、もしかして――
……えい、かんてーっ!
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【アイナ・バートランド・クリスティア】
種族:ヒューマン
年齢:17才
職業:錬金術師
一般スキル:
・錬金術:Lv99(Lv14)
・鑑定:Lv99(Lv10)
・収納:Lv99(Lv7)
レアスキル:
・工程省略<錬金術>:Lv99(Lv1)
・不老不死(-)
ユニークスキル
・情報秘匿
・英知接続
・創造才覚<錬金術>
・理想補正<錬金術>
複合スキル
・極限の創造技術<全系統>
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改めて確認すると、新しく『複合スキル』の項目が増えていた。
どうやら鑑定結果には、私の『認識』も影響されるらしい。
そしてその項目に追加されているのは……『極限の創造技術<全系統>』!
……って、『<全系統>』?
これも、かんてーっ!
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【極限の創造技術<全系統>】
武器、防具、アクセサリ、その他 全ての神器を作成可能
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……!!?
ということは、錬金術で『神剣デルトフィング』も作れちゃうってこと!?
作れるなら、素材も調べることが出来るはず――えいっ、『創造才覚<錬金術>』!!
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【『神剣デルトフィング』の作成に必要なアイテム】
・オリハルコン×10
・ミスリル×3
・氷竜の魂×1
・浄化の結界石×1
・氷の魔導石×24
・光の魔導石×8
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……本当に作れるんだ!!?
いや、素材はもう凄そうなものばかりだけど――
「――様! ――イナ様ッ!!
――――アイナ様ッ!!!!」
「……え?
あ、ルークさん、ごめんなさい!?」
「大丈夫ですか?
ぼーっとしてましたけど……この人混みですし、酔われましたか?」
心配そうに声を掛けてくるルークさん。
神器が作れることを知って、トリップし掛けたなんて絶対に言えない……。
「大丈夫です!
つい、あの立派な剣に目を奪われてしまって」
「アイナ様もですか!
まさに神が創られたもの、と言いますか――」
……あんな武器を作れるのは、まさに神がかり的な存在のみ。
普通の人から見ればそうだろう。
しかし錬金術に関して言えば、私以上に神がかり的な存在はいないはず。
「そうですよね。
あんなものを作るなんて、神様以外には――」
……そう言いながら、私の顔はにやけてしまう。
そんな超越した存在を作る力が、私にはあるのだ。
視界の隅に、英雄シルヴェスターを歓待するヴィクトリアが見えた。
彼女を見ても、今や何も思わないようになっている。
何故だか、それほどすっきりとした気分になっていた。
私が目指すのは『そこ』ではない。
ヴィクトリアなんかが手を伸ばせない、もっともっと高い次元の世界――
……私は静かに、これからの生き様を決意した。
――そうだ 神器、つくろう。
何だか、どこかのキャッチコピーみたいだけど。