コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
過去へ
わたしは傘の怪異だった
破れたビニール傘に目玉が1つ
ついて いた
昔なら唐笠のお化けとか言われた
類いのものだろう
わたしは小さな異世界の門番だった
広がる地下の異世界の出入口
人の世と繋がっている上層部分
幽霊団地が私のテリトリーだった
私が 見えるものがいれば
異世界の入り口(エレベーター)に
誘導するのが仕事だった
なぜそんなことをするのかは
知らない
なんとなくそれが わたしの役目だと
いうことは知っていたから
ある日 彼女は現れた
白い肌 白いレインコートに
真っ赤な返り血 美しいと思った
彼女は 出会ったときにはすでに
怪異だった 少なくともわたしは
そう思った
ここの異界語は通じず 普通に人間の
言葉を操る 彼女は臆することなく
わたしを ひっつかみ 可愛いと
言って クルクル回して 笑った
新参者のクセに随分と生意気だ
わたしは嫌がったが彼女はわたしを
つれ回した
仕方ないので 言葉を教えて
コミュニケーションをとるように
なった
彼女は人間にたいしては強い憎しみ
を持っていた
理由を聞いたことはないが
誰彼構わず追いかけ回し バールで
ぶん殴っているのだから
誰がどうみても 憎んでいるのだろう
死んだ人間はそのままにしておけない
わたしがここの管理者なので
食べて片付けた
彼女は 化の あだみ と言う名で
一応噂になったこともあったそうだ
噂は怪異にとって力となる
『人間だったけど 人殺しすぎて
こうなっちゃった』 あはは
噂で日本中をさ迷ってることに
なったので それに従って
さ迷って あげているんだと
また笑った
凶悪な彼女の 笑顔はあどけなく
可愛らしかった
わたしはそのうちに彼女のことが
好きになった
彼女も幽霊団地にとどまってくれた
彼女が わたしのテリトリーで
人を襲うので 幽霊団地も有名になり
わたしにも赤い傘を持つ長身の男
という設定がついた
嬉しかった 彼女に見合う
人間の男の姿になれた
人を喰うようになりわたしも
強くなった
彼女と一緒に 狩りを楽しみ
わたしたちは お互い 恋に落ちた
彼女は少し前まで人間であったし
わたしは彼女に見合う男になりたいと
願って形を成したためか
普通の人間のように愛し合うことが
できた 二人がひとつになる行為は
とても幸せだった
繋がっているとお互いの言葉か
直接頭に聞こえて きた
お互いなんとなく通じてはいるものの
まだまだ片言だったので 愛を語らう
にも身体を繋げているのは 都合が
よかった
そのうちに 身体が離れていても
頭の声が聞こえる方法を編みだした
わたしたちはお互い身体のどこかに
秘密の印をつけてそこから
通信することができたのだ
これは大変画期的で 彼女も
最先端の怪異になったと赤い痕を
喜んでいた
しかし この小さな世界は 他所から
きた怪異を嫌い 追い出そうとした
彼女には役割が ない と
ならば 役割を与えるか
わたしを外に放つようにと交渉した
が叶わなかった
彼女は ならこの小さな世界を
ぶっ壊す!と息巻いていた
わたしたちは かなり 強い力が
ついていたため 思いあがっていた
わたしたちは世界の狭間に落とされ
引き裂かれた
彼女は記憶を引きちぎられ
どこか遠く外に放出された
らしかった
わたしは ここから離れることも
出来ず 彼女が帰ってくるのを
信じ ただ待ち続けた
彼女が帰ってきてくれたとき
わたしは 本当にうれしかった
例え 彼女が私を忘れていても…
前のように 獲物をわたしに
くれるようになった彼女
でも わたしに話しかけては
くれなかった
小さな世界は 皮肉にも記憶を
無くした彼女を受け入れた
エレベーターで下りて行く
彼女を追って
わたしも異界へ下りた
選択肢
『世界をぶっ殺そう』『スタートへ』