楔『……ぇ……?』
この人は誰だ、という困惑と、齧ってもいいか、という質問に疑問を抱き、固まりながらも
楔『……?…いい、けど……おいしくないと、おもう…よ、?』
と、小さく声を絞り出すと、目の前の人物は少しきょとんとしたような顔をした後、ふっと笑って。
『……おヤ、ちょっとした冗談だったんですけド…いいなら少しだケ』
そっ、と楔の手をとり、かぷり、と噛んだかと思えば、そのままかみかみと軽く噛み続け
楔『んっ……こしょ、ば…ぁぅ…』
慣れない感触にびくり、と体を小さく震わせ手を引こうとするも、しっかりと腕を掴まれており、動かせない。
『……♪』
心做しか、少し上機嫌で片目を隠した人物はかみかみと楔の手を噛み続け。
楔『も、や、ぅ……だめ……おしまぃ…っ…』
『ふフ、もう少しだケ♪』
そう言うと、先程と比にならない強さでガリッと楔の手を噛み、滲んだ血をぺろりと舐めて。
楔『いッぁ……いたぃ、も、やぁ……』
そう言って、うっすらと涙目で頭を困惑させながら、噛まれていない片手をグーにし、ささやかな抵抗でぽふ、ぽふと片目の人物を叩いていると
『ちょっと茅濡くん!!可愛いの原石になにやってんの!?』
いきなり、可愛らしいピンク色の衣服に身を包んだ人物が勢いよく部屋に突撃し、楔を自身に引き寄せて。
楔『ぅ、あ……??』
『おヤ、飛鳥クン。おかえりなさイ♪』
『おかえりなさいじゃないよなに泣かせてんの…!?』
飛鳥、と呼ばれた人物はきゃんきゃんと噛みつくように先程楔の手を噛んでいた人物を問い詰めている。
『少し齧ってもいいと了承を得たのですガ……』
飛鳥『了承得る得ないの問題じゃないでしょ!』
『ふム?そういうものなのデ?』
飛鳥『キミほんとさぁぁ…!!』
楔『?…??』
一人、会話についていけず、大きな声が飛び交う場所から逃げられはしないものかときょろ、と辺りを見渡すと、とある影が目に入り。
楔『……っ』
飛鳥『あっ、ちょっ、楔くん!?』
楔は扉の近くまでよたよたと駆け寄って、少し躊躇いはしたものの
楔『ゆすず、くん…こわぃ』
そう言って、部屋の近くまで来ていた柚涼に抱き着き、酷く困惑させたのだった。
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柚涼『ったく…俺の仕事を増やすな貴様ら』
『『はい反省してます/これからは気をつけますネ』』
あの後、2人は柚涼にかなり怒られたようで飛鳥はすっかりしょげきっている。が、何故か片目の人物はにこにことしているようだった。
柚涼『姉様からの命を邪魔する者は容赦しない。次やったら飛鳥は夕餉抜き、茅濡は2日外出禁止令だからな』
すんっと、かなりガチトーンで言い切ると、柚涼は楔に視線を戻し。
柚涼『んで、お前は早く食べたらどうだ?せっかくの夕餉が冷めるだろう』
楔『………』
きょろ、と目の前に出された色鮮やかな料理と目の前の3人を、楔は困ったように交互に見て、料理に手をつけようとせず。
柚涼『…なんだ?毒が入っているとでも?』
その様子を見、少し不機嫌そうに柚涼が声を出すと、楔は小さく首を振り
楔『……みんなは…たべない、?』
柚涼『いや、俺達は後で食べ…
楔『………たべない…?』
柚涼『うぐ…』
飛鳥『いいじゃーん!みんなで食べよーよ!そこに隠れてる逢祐人くんも含めて!』
茅濡『ふフ、そうですネ』
楔『……?』
にぱにぱと笑いながら飛鳥が言うと、茅濡と呼ばれていた人物もくすりと笑いながら肯定して。すると
『……気付いてたのかよ』
そう、少し気恥ずかしげに声を出しながら、扉の影から角と尻尾の生えた人物が姿を現して。
飛鳥『あったりまえでしょー??ご飯作るの大抵柚涼くんか逢祐人くんだし!ほら、みんなで食べよーよ!』
逢祐人『いや、みんなつっても今ここに居ねぇやつもいるだろ()』
茅濡『細かい事は気にしないのが吉ですヨ♪』
逢祐人『…はぁ……』
そんな会話を聞き流しながら、楔は柚涼の服の裾を掴んで見上げて。
楔『…いっしょ、たべよ…?』
柚涼『〜っ…はぁぁ…分かったよ、人数分茶碗持ってくるから待ってろ…』
と、柚涼は諦めたように立ち上がり、茶碗を持って帰ってきて。
柚涼『今日だけだからな、お前のわがままに付き合うのは』
そう言って、む、としたような顔をしながら茶碗を並べる柚涼と対象的に、楔はどこか嬉しそうに食卓を見つめ。
柚涼『それじゃ、手を合わせて』
いただきますっ
なお、この後柚涼と逢祐人が作ったご飯があまりにも美味しかったため、楔の頬が緩んだとか緩んでいなかったとか……
次回『かたことのひと』
コメント
10件
あ、あとすんごい今更なんですけど設定出てない方も遅れて出して頂ければ途中から出しますので(*‘ω‘ *)!!!!(忙しかったら辞退もおーけーでっす!!)
可愛いの一言に限る空間!!!!!!!! 楔くんの頬が緩む…!?柚涼のご飯食べたすぎる!!!!!!!!!!((((((