テラーノベル
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【⚠この話は暴力的な表現を含みます⚠】
【⚠性的な話じゃないので勘違いしてほしくないと思い、センシティブ設定つけてませんゴメンなさい⚠】
死のうと思った。
毎日学校に行って毎日馬鹿にされて毎日ひとりで泣いていたから。
深夜2時23分、人通りの少ない橋にふらつきながら向かった。橋の上に立つと意外と狭い景色を見下ろし、足を前に出し、身を投げた。えもいえぬ喪失感が襲ったが、まもなく。
目の前がぶわっと虹色に光って、いつの間にか私は小柄な少女に抱き抱えられていた。可愛らしい衣装と顔、明るい表情と装飾されたステッキ。まるで私は、『魔法少女』みたいだと思った。
魔法少女は私をふわっと下ろした後に笑顔で語り始めた。その話によると、この少女はどうやら私が生み出した幻らしい。でも、なぜか私に触れることもできる。私はおかしいと思いつつも、夢だと思い込んで家に帰り、ついてくる少女を無視してさっさと寝た。
翌日、起きた。母はいつも通り私を起こした。どうやら他人にはこの少女の姿が見えないらしい。少女は他の人に姿が認識されないのを嬉しく思い、私の学校に上機嫌でついてきた。
朝の学校はいつも通りだった。私は時にゴミ箱、時に玩具、時にサンドバッグになる。いつも通りである。
少女はそんな様子をただ不思議そうに見ていた。
HRが始まる。少女はピッタリと私にくっついている。私は黙って席に座り、ただただ時間が過ぎるのを待っていた。担任の言葉がふらふらと耳を通り越す。続けて嫌な言葉が口々から聞こえてくる。これも耳を通り越せばいいのにと何回思ったことか。
授業はすらすらと流れるように進んだ。それと同じように私の心は沈んで泥のように溶けた。
学校が終わると、いつも私はアイツらのために教室に残る。殴られ蹴られて弄ばれた先にあるのはただ早く終わって欲しいという願いだけ。目を向けた先の外にあるのはまだ明るくて、バカみたいに青い空。そんな空も見飽きたころ、私は掃いて捨てられる。
ずっと無言で私へのヘイトを見ていた魔法少女は、教室の床に伏した私を見下ろして口を開く。
“いたい?”
そう聞いてくる少女がどこか可笑しくて、私は突っ伏したまま息を薄く吐くように笑った。
私が頷くと、魔法少女は手に持った装飾されたキラキラのステッキを私の目の前でくるくると回した。
そのまま少女が意味の分からないコチャコチャとした呪文を唱えると、私の目の前が光の粒子に呑まれた。 その光が眩しくて、私は思わず目をギュッと瞑った。
数秒して、自分の状態を確かめるようにゆっくり目を開くと、光の粒子は消え、目の前には満面の笑みの少女がいた。少し遅れて感じたのは体の浮遊感。痛みや怠さがない。感じるのはただ、軽さと清涼。私は理解した。これは『魔法』だと。しかし、私は自分の理解に呆然としてしまった。『魔法』なんて現実にないものを現実にな いものの幻が使うなんて。ありえない。 少女はそんなふうに床に尻もちをついてフリーズしている私にそっと手を差し伸べた。
私は少女の笑顔に気負され、その手を取った。
手を繋いだまま、私と魔法少女は帰路についた。いつもは痛みに顔を顰めながら帰っているところだ。先程の奇跡のような出来事に、まだ現実感がない。
フと横を見ると、少女はニコニコ笑っている。聞くと、私の役に立てたのがそうとう嬉しいようだ。
私は先程ありえないと感じたのを少し申し訳なく感じ、笑い返した。ずっと動かしていなかった表情筋だ。きっと私の笑顔はぎこちなく見えていただろう。それでも少女は私の笑顔を見てもっと嬉しそうに笑い、ぶんぶんと繋いでいる手を振った。
そこからは緩やかな日々だった。毎日虐められながらも少女の魔法で治る。何も解決してないが、私はこんなのも悪くないんじゃないかと思い始めていた。
魔法少女は、自分の幻だからずっと都合が良くて、一心同体みたいな感じだった。でも、私は自分を癒してくれる少女に幻以上の感情を抱き始めていたのだ。
季節がめぐり、私も卒業となった。ゆくあては無いが、何とかなるだろうと影の並木で桜の花びらを浴びていた。隣には魔法少女、これもいつの間にか私の中では当たり前になっていた。
すると、そこに人がやってきた。私と同じ花のブローチを付けていたから、クラスメイトだと分かったが、なにぶん余裕のない日々で、人の顔などろくに見ていなかった。
そのクラスメイトは少しはにかみながら話しかけてきた。自分のことを覚えてるかと聞かれたから、正直に覚えていないと答えた。クラスメイトは少しショックを受けたようだったが、すぐに私の目をまっすぐ見て口を開いた。
「好きです」
その言葉が私の耳に入った。危うくいつものように右から左へと流してしまいそうになったが、慌てて受け止めた。
私が信じられないという顔をしていると、クラスメイトは続けて話した。
いつも虐められているのを止められなくて嫌だったこと。人前で泣かない私がかっこよくて好きだと思ったこと。もし付き合って貰えたら、一生大切にすること。
私は次々と陳列されていく話を物珍しそうに呆然と聞くことしか出来なかった。魔法少女は静かにその話を聞いていた。妙に真剣な顔で。
一通り話すと、クラスメイトは私に向かって手を差し出してきた。どうやら返事が欲しいらしい。
私は数秒ほど沈黙したのち、差し出されたその手を握った。なぜそうしたかは覚えていない。ただ覚えているのは、クラスメイトの手があたたかかったこと。
月日が随分と過ぎた。随分と、随分 と。
私は今、白く重い布を纏っている。人に自分の顔や髪を触られてセットされるのは変な気分だ。横には魔法少女。あの頃と一切変わらぬ姿でじっと私を見つめている。
式が無事に終わった。誓いの口づけのあたたかさが、あの時の手のひらと重なった。
私は風呂に入ったあと、疲れてベットに項垂れ、彼は今風呂に入っている。
魔法少女がベッドに伏せた私を笑顔で見下ろしている。私は疲れてシパシパする眼で少女を見上げる。その時、溜まった疲労も忘れてしまうことに私は気づいた。
魔法少女の身体が薄くなっている。
私はガバッとベッドから起き、魔法少女を触ろうとする。触ることができない。すり抜ける。前までは触ることができた。
少女は笑顔で口を開く。
“わたしね、君の辛さを癒すための幻だから”
“君が幸せになったら消えちゃうんだ”
少女は変わらぬ笑顔でそう言う。涙がボロボロとこぼれている私の顔とは対照的だった。
私は思わず、自分よりずっと小さくて刻一刻と薄くなっている魔法少女の身体に、すり抜けながらも抱きつこうとする。
少女はそんな私を見て笑顔で少し目を伏せ、魔法のステッキを握りしめた。
“泣いちゃダメだよ、辛くなっちゃダメ”
魔法少女は優しく宥めるような声でそういう。私はその間にも涙で顔がぐちゃぐちゃになり、嫌だ嫌だと口から零している。
少女は少し困ったように笑って、ステッキを取り出す。
あの時のように私の顔の前でくるくると回し、コチャコチャとした呪文を唱える。相変わらず意味は分からないが、あたたかい声だ。
私は光の粒子に包まれる。キラキラというより、穏やかに広がる優しい光だ。
私は意識的に理解した。もうこの少女に会うことは無いのだと。私は涙を必死に拭って笑った。前よりずっと笑顔も上手くなったはずだ。
少女は私の笑顔に嬉しそうに笑い返した。光の粒子に視界が包まれる直前、魔法少女の声が聞こえた。
“ありがとう。結婚、おめでとう”
優しくも、消え入るような声だった。
私ははっと目を覚ます。目の前には心配そうに私の顔を覗き込む彼。私はバッと起き上がり、魔法少女を探そうとするが、探すまでもなかった。理解したのだ。もう少女はいない。
私はその理解が脳に届いた瞬間、涙がぶわっとあふれた。膝が崩れ落ち、天井に向かって叫ぶように泣いた。
彼は驚き、私の背中をさすって手を握った。あたたかい手だった。
「どうしたの? 」
私はその問いを返せなかった。ただただ彼の手を握り返すことしか出来なかった。
#青春恋愛
海月🪼🩵‐Mizuki
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コメント
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魔法少女が「自分の癒しのための幻」で、幸せになったら消える——その設定が最後にじわっと効いて、結婚の場面で涙が止まりませんでした。辛い日々を描きながら、手のひらの温かさや、ぎこちない笑顔が少しずつ変わっていく描写に寄り添いを感じて、痛いのに優しいお話でした。消える直前の「ありがとう。結婚、おめでとう」が、ずっと残っています🌷