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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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ホール内よりも静かな図書室。

独特な匂いが心地よい。

「話を遮ってごめんな、続き聞いてもいい?」

優しい口調で言う先生の表情は、先程と変わらず笑顔は無いが、先程のような感情のない顔ではなかった。

「いや、もう頭が真っ白で……最後なのに、、」

伝えられないもどかしさと、タイムリミットが迫ってくる緊迫感。

目頭が熱くなるのを感じた。

「じゃあ、僕の遺言も聞いてもらってもええかな?」

「えっ?、あ、はい」

わざわざ私に合わせて「遺言」と言う先生。

思えば少し不謹慎だったかな、と鼻で笑う。

「田辺さんへ

まず、数学を好きになってくれてありがとう。僕の説明で数学を好きになってくれる、素直に嬉しかったです。そして、僕のことも好きになってくれたんよね。……もちろん、私は先生なので生徒に好意を寄せることは無いし、答えることは出来ません。」

涙が零れる。

知っていたよ、先生が私を生徒としてしか見てないことは。

今までの態度で、ハッキリと分かっていた。

先生はいつも私ではなく、数学を見ていることを。

だけど、私がふざけた時に笑ってくれる先生は、?

いつも私にだけ褒めてくれる先生は、?

あれも仕事のうちだったの?

今まで自然と抑えられていたであろう感情が一気に涙に乗せて溢れ出す。

先生はそんな私に目もくれず、さっきの私みたいに話続ける。

「けれど、これだけは言わせてください。生徒として、田辺雪菜さんは一番でした。」

「……ぁ、」

嬉しい━━━

……とは思えなかった。

ずっと目指してきたことだったのにも関わらずだ。

卒業するまでに好意を持ってもらえることは不可能だって分かっていたから、せめて生徒として1番になれるようにって。

苦しくなってしまった私を、先生は微笑みながら見る。

そこにあるのは、いつもの笑顔だった。

「……なんて、嘘なんよな。ここから先は、教師として最低だと思う。やから、聞きたくなかったら言って欲しい。」

真剣な顔。

今までに見た事のない覚悟を決めた顔。

動悸が早くなる。

だが、答えは既に決まっていた。

「聞かせてください。1人の男性中村優としての遺言を」

「近づいてもいいかな」

「……はい」

ゆっくりと距離が縮まる。

私の体を包み込もうとするその腕は、やはり震えていた。

なんの疑問も思い浮かばず、ただ受け入れる私。

そこはずっと、入りたかった場所だった。

その中はあまりにも残酷で、悲しくて、暖かい。

私の全部を締め付けるように包む先生。

「正直、雪菜さんのことが1女性として好きになってしまった。真面目に授業に取り組む姿勢、指摘されたところはすぐに直す素直さ。他にももっとあるけど、」

遮る様に警報が鳴り響く。

外の電波塔からだろうか。

けれど、今はそれもどうでもいい。

先生の優しさに甘えるように、さらに抱きしめ返す。

津波が来るまで、残り30秒。

「……生まれ変わっても、私が絶対に見つけます。また同じ関係性でも、今度は成人してからですかね。」

「僕も、必ず見つけます。」

「中村先生」

「優って呼んで」

「優先生」

「何?雪菜さん」

「好きです」

「僕も、愛してます。」

そっと、唇に触れる。

津波が来るまで残り10秒。

大きな影が迫ってくるのを窓から確認する。

残り8秒

けれど、不思議ともう怖くない。

残り6秒

先生の腕の中で、私は。

残り4秒

今までの日々が脳裏に駆け巡る。

残り3秒

お母さん、私は先生が好きでした。

残り2秒

この世のどこを探しても、きっと見つからない

残り1秒

私の愛する人なんです━━━

残り0秒

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