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「ふわぁ…っねむ…」
「なに琉夏?寝不足?」
「そう。昨日課題まだ終わってなかったから…」
「寝不足はお肌の敵よ」
「わかってるよ…」
と一際大きなあくびをして机に伏せる。あの説教は結局12時まで続いたのだ。ほとんど私は関係ないから足が痺れて大変だった。なんて、同級生には言えない。
キーンコーンカーンコーーン
朝のホームルームだ。
これほど眠くなる時間はないだろ。どう考えても。こりゃ、授業も寝そう…。
そんな小林を見かねたのか、担任が声をかけた。
「小林、後でお前職員室こい。」
「エっ?なんでですか。」
声が上擦った。
「なんでって…お前あからさまに体調悪いだろ」
「…?…っあー、わかりました、」
先生に連れられてやや小走りで教室を抜ける小林、連れてこられたのは空き教室だった。
「まぁたあそこに行くの??今日の朝ここからきたのに??」
「仕方ないでしょう。ここは唯一あそこに繋がっていますから…」
空き教室の鍵を探しながら会話を続ける。
「もっと増やしてよ〜、ね、今村せんせ」
「ここで“先生”はやめてください。僕はただのなんでも屋ですから、」
「今村さんって先生してる時の方がかっこいいのに」
「余計なお世話です。」
鍵を見つけた今村は鍵穴ではなく、扉の縁の凹んでいるところを押し、その中に鍵を差した。すると、教室の扉の下の方に人が一人ようやく入れるぐらいの穴が開いた。
「言い訳は?」
「ありますよ、早く行ってください」
「ありがと!」
滑り台状になっている穴を落ちていく。上からガコンと音がして唯一の光もなくなった。目を瞑って寝そうになっていると、顔に羽毛が当たった。
ついた。学校の地下、MEA(Minster extermination agency)
ここでは一流ハンターになるために三歳から十八歳までの人を訓練してくれるいわばハンター教育機関でもありバケモノ討伐機関(ハンター)本部なのだ。なので卒業生でもここにいることが多い。
そこからさらにエレベーターに乗って下へ行く。呼び出しがあった部屋は黒井班専用部屋だ。カードキーをブレザーから取り出してカードリーダーに差し指紋を全て消しておく。それでやっと中に入れるのだ。中は会議室のような見た目で端っこには和室がある。結構広い。
「んん〜っやった、今日はミスなしで来れたぜぇ〜!」
そう。ハンターになって早半年経つがこの動作だけはほとんどミスしていた。カードキーを落としたり…なんてことも。
「それが普通なんだよ、」
池田に当たり前すぎるツッコミをされる。
「ようやくッ、ようやく琉夏が手順をっ…!」
おいおいと親のように泣くふりをしている中山はやっと動作を覚えた事に嬉しかったらしい。バカにされて不愉快だが、自分でも自覚している事なので何も言い返せない。くそ。
「黒井班長〜、みんながいじめて来ます〜!」
「皆いつもそんなもんでしょ、じゃあ皆席について今回の議題について話します」
あ、くそ。綺麗に話題を逸らされた。
前にあるホワイトボードに今回の議題を書き込んでいく。議題内容はこうだ。
『港町のバケモノ発生率について』
「最近、全国の港町のバケモノ発生率が異様に増えているの。普通なら一日2種類とかなんだけど…港は一日に五種類、しかも数が多くて強いとかいう性能をしているらしいの。」
「五種類て正気か?馬鹿多い上に馬鹿強いとか狂ってんやろ」
テーブルを指でトントン叩いていた中山が嫌そうな顔をしている。
「で、なんでも屋の白菊(しらき)が向かったらしいんだけど…襲われて、大怪我して帰ってきたって」
「同じバケモノなのにか?」
大胆に言えば、なんでも屋は喰型のバケモノである。
喰型はニンゲンを喰らい、その喰らった人間になるバケモノだ。本来、ハンターによって殺されるはずだが、人であった頃の記憶が残っており、そのニンゲンが二人いるならばバケモノの方は処分しないといけない。そしてニンゲンが全て喰われた場合バケモノは処分しないといけない。襲われたニンゲンはバケモノを喰らう事で失った部分を取り戻すことができるが、バケモノとニンゲンのハーフになってしまう。その場合バケモノはバケモノを襲わない性質を持っているのでバケモノを知っていて、バケモノに襲われない。という最高のカードがなんでも屋というハンター界随一の情報屋である。
「やめろ木内。あいつらはまだ人間だ。あんなバケモノと一緒にすんなよ」
なんでも屋に肩入れしている池田は木内を睨んだ。そんな池田が気に入らない木内は何も言わずにずっと睨み合っている。
「はいストーップ。これ以上やったら話進まんで、な?」
仲裁に入った中山はまたスマホで誰かと会話しているようだった。
「ありがと遊、本当に二限目までには間に合わせないと怪しまれるわよ」
やっと目を逸らした二人はやっぱりまだ犬猿の仲のようで気まずい空気が流れていた。
「話を戻すけど、こっから一番近い港町といっても電車で五時間はかかんで?どうすんの」
「それでなんだけど…冬休みがもうすぐあるじゃない?それでみんなで行こうかなって」
冬の潮風を想像しましょう。馬鹿寒いです。無理ですね。
「長期休みやもんな…いけるか!」
さっきまで二人を宥(なだ)めていた中山も賛成。
「バケモノは全部殺す。」
池田と喧嘩腰だった木内も賛成。
「わかりました。それまでに鍛えときます。」
池田も喧嘩をやめて賛成。
「琉夏は?」
こんなの…こんなの…行くしかないじゃん!!
「アッ…賛成します。」
「オッケー、じゃあ解散っ!」
ニッコニコの笑顔で会議室から出る皆を見送る黒井。
みんなが出てしばらくした後、一言こう呟いた気がした。
「遊に頑張ってもらわないとね…」