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「ふぅ…これで全カップル、無事成立ですね…!」
If×初兎、ほとけ×りうらの関係を完全に“公認”まで持っていった名探偵ないこは、すっかり満足げにソファで紅茶をすすっていた。探偵帽を脱ぎ、「これで次の任務までしばらく平穏ですね…」とつぶやいた瞬間──
「で、ないこは?」
隣でゲームコントローラーを握っていた悠佑が、何気なく言った。
「え?」
「いや、お前自身の恋愛事情。みんなにズバズバ聞いてたくせに、自分だけノーコメントってずるくね?」
ないこは、笑って首を振る。
「いやいやいや、僕は探偵ですから。恋愛とかそういうのは…観察する側ですよ」
「でもさ、さっき“恋って素敵ですよね”って自分で言ってたやん」
「それはそうなんですけど、僕に関してはほら、そういうの、似合わないっていうか…」
「…ほんっと鈍感だなあ、お前」
「へ?」
悠佑は立ち上がると、ないこの前にどっかり座った。そして、ぐっと顔を近づけて、いたずらっぽく笑う。
「じゃあ、俺がお前のこと好きだったら…どうする?」
「……は???」
一瞬、世界がスローになった。
「そ、それは、え、じょ、冗談ですよね!?!?」
「さあ?名探偵なんでしょ?推理してみ?」
ないこは完全に固まったままフリーズ。顔がジワジワ赤くなっていく。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!そ、そういうのは…!こっちが言う前に仕掛けるの反則じゃないですか…!!」
「いや、それを“こっちが言う前に暴く”のが君じゃん。なあ、“探偵”」
「ぐっ……!!!」
完全にロジックで負けたないこ、初めての劣勢。
──それからというもの、悠佑のアプローチはエスカレートしていった。
「今日、ないこが好きそうな紅茶買っといたよ」「あ、それ取ってあげるぞ〜」「ないこの笑い方って、やっぱかわいーな」などなど、いちいち距離が近い。
そのたびに、ないこは「はいはい〜またからかって〜〜」と流そうとするが、顔だけは真っ赤。
「…おかしいな、心拍数が…」
ある日、Ifと初兎のカップルが、そんなないこの様子を遠巻きに見てつぶやいた。
初兎:「あれ、完全に好きなやつやん」
If:「うん、もう落ちてるけど、自覚してないだけやね」
そして迎えた、とある夜。
ないこはついに、自分の中でくすぶる“モヤモヤ”に気づいてしまった。
「……これが、恋ですか……?」
寝転がったままスマホを握ると、指が勝手に“ゆうすけ”と打っていた。
【ないこ】
あのさ、もし…俺が、誰かのこと好きになったとして
それが、ずっと近くにいて、くだらないことばっか言ってくる人で
でも、なんかその人の声とか笑い方とか、急に思い出して顔赤くなったりしたら…
……それって、どうしたらいいんだと思う?
既読がつく前に、ないこはスマホを顔に投げて布団にもぐった。
──そして、1分後。
【悠佑】
それ、俺のことだろ?
好きなら、俺も好きって言わせてやるよ。
お前の鈍感さ、ぜんぶひっくるめてな。
ないこ、スマホごと転がり落ちた。
「うわぁああああああああああああ!!!!!!」
布団の中で爆発する名探偵。
その姿は、もはやただの恋する一般人であった。
──名探偵ないこ、恋に落ちました。