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雨降る今日は「  」の季節

雨降る今日は「  」の季節

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「雨降る今日は僕の季節」📖

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2023年06月18日

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5月下旬に梅雨入りした。

台風の影響か、6月に入ると豪雨の日が続く。


「やぁ、おはよう」

隣に住んでる煌さんは僕に親しくしてくれている。

「煌さん、おはようございます。」

朝、挨拶を交わすのは日課になり

生活の一部となった。

「竣くん、今日学校休みだったよ」

そりゃ、こんな嵐のなか学校があるなんて考えたくない。

僕が外に出た理由はそれじゃない。

「今から、他のところに行くんです。」

煌さんは首を傾げたが、数秒でハッとした顔で僕の胸ぐらを掴んだ。


「あの、なんですか」

「俺も一緒に行く」

「一人で行きます」

「いや、逝かせない」

この時既に誤解が生まれていることには気づいていた。

「約束しましょう。僕は煌さんの家まで帰ってくるので1人で行かせてください。」

「わかった」

きっと煌さんの事だから後を着いてくるのは配慮済みだ。


僕の目的はさっき空から降ってきた何かをこの手に入れること。




僕は走り、デパートの屋上へと来た。

この手でソレを一番に触れた。

「もう大丈夫だよ。」

ソレに一言声をかけ、僕は煌さんに捕まった。



「なんだよそれ。」

「可愛いでしょ?」

煌さんの瞳に映る僕とソレはとっても美しく見えた。


ソレとは、1つのデコられたスケッチブックである。

僕は絵を描くのは苦手だ。

だけど、これが空から降ってきたのを見た途端、僕は心を鷲掴みにされた。


煌さんは呆れたような顔で僕を家に返し、僕はスケッチブックと共に一日を終えた。



スケッチブックは使用済みで、心に残ったのは空から何か、人のような物が降ってくる絵だった。



「おはよう」

「おはようございます」

昨日のことが嘘かのように今日は快晴から始まる。


3限目の準備時間には雨がポツポツと降ってきた。

「僕の季節だ。」

僕はそう確信した。

雨が降ると、僕の不幸は水へと流れ幸せが雨となって降り注ぐ。

今日も1人で帰り、雨の音色を聴きながら優雅に過ごしたいと思っていた。


下校時刻となり、僕は1番に下へ着いた。

目の前にいたのは、煌さんだった。

なぜここにいたのかはよく分からない。

「煌さん?」

思わず声をかけてしまった。

「竣。」

「何故ここに」

瞬きとともに煌さんの姿は前から消えていた。

幻覚だったのだろうか……

でも確かにそこにいた。

煌さんの匂い。

水溜まりの出来方。

人が居なかったとは思えない、この空気感。


少しこわばりながらも、外へ踏み出したその時。


空から僕の名前が聞こえた。


「竣」

「どけ……」


驚きのあまり、上を見た。

時は既に遅く。

僕が絵で見た光景が、今僕の記憶の1枚となった。

反射神経の無い僕は、ソレに潰され赤い雨を浴びながら身動きの取れない状況に陥った。

幸い僕は、ボクシングマシンになったような痛さで終わったが、唯一のおじさんがまた消えた。



毎年毎年

隣の人はみんな優しいのに。

何故そんな人ほど僕の目の前から消えるのだろう。



僕の不幸が他人の雨となり、それが降り注いでいる。と考えるようになってから僕は傘を差すことを辞めた。

でも、その解釈は間違っており、

「雨降る今日は僕の季節」

というのは正解だった。

不幸は流れ、幸せが降ってくる。

僕は煌さんとの時間がとても幸せだった。

煌さんが突然空から降ってきたのも、僕の季節のせいだろう。






僕は寿命1年となり、残り一日をこの日記で終わらせることにした。








もうすぐだね

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