コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
らだぺん
過激なし
重い愛
名前操作あり
モブあり
地雷回れ右
そのうちフォロワー限定にします
________________
pn side
「ぺいんと、はぐれないでね」
人混みの中、はぐれないように俺はらっだぁと腕を組んで歩く。せっかくの外出なのに近くでイベントがあってるらしくて、人がうじゃうじゃしてる。
「これはぐれたらおしまいだな…」
「そうだね、だからしっかり掴まっといてね?」
「ん、わかってるよ」
足を踏まれたり前後関係なくぶつかってきたり、もう散々だ。お互いこの人混みに少しずつ苛立ちを覚えて空気も悪い。早く帰りたい。
「あ、あの!あの!!」
なんて考えていると後ろから大きな声で誰かを呼ぶ声が聞こえた。誰かとはぐれちゃったのかな?この人混みじゃ見つけるの難しそう…
「あなた…!!」
「うわ!!?」
らっだぁと組んでない方の腕をいきなり掴まれる。俺は思わず声を上げた。誰?
「だ、誰ですか?」
「かい!?あなた、かいでしょ!?」
誰この女の人!?かい?誰それ!?手首をがっしりと掴まれて怖い、怖いよらっだぁ
「ぺいんと?どうしたの?」
「ぁ、や、なんか知らない人に…」
「かいなんでしょう?お願い、そう言って、」
女の人は泣き出してしまった、俺の手首を握ったまま。どうすれば良いかわからなくて、視線をらっだぁに送る。しかしらっだぁは眉をひそめじっと女の人を見詰めていた。
「らっだぁ?」
「…人違いなんで腕、放してくれません?」
「え、?かいじゃないんですか…?」
「こいつの名前 ぺいんと なんですけど」
らっだぁはさっきの表情が嘘だったかのように冷静に女の人を説得し始める。
「ぺいんと…あ、ああ、ごめんなさい、人違いだったのね。」
女の人は悲しそうな笑みを浮かべながら頭を下げた。こんな人混みの中、止まって話しているのは俺らだけだろう。
「全然…!!かい?っていう人見つかるといいですね!!!」
俺がそう言うと女の人は頭を上げてまた泣き始める。俺なんかしちゃった!?訳も分からずなんとなく女の人の手を握ってみた。
「ごめんなさい、かいは私の息子でもう何年も行方不明なんです。誘拐されたんです。」
「誘拐!?」
落ち着いて息を整えれば衝撃的な言葉を発した。誘拐なんてそんな酷いこと…それに何年も見つかってないなんて心苦しい。
「あなたにそっくりなんです。笑い方も髪の色も何もかも。話し方でさえも。」
「そうなんですね…」
「……ぺいんと、もういいでしょ、帰るよ」
話していて俺までつられて泣きそうになった瞬間、怒ったような口調で声をかけられる。もう少しだけ、と言ってもらっだぁは首を横に振る。俺は渋々わかった、と返事した。
「ごめんなさいね、こんな人混みの中長々と話してしまって。」
「いえいえ、息子さんが早く見つかるよう祈っときます…!!」
「ありがとう、息子は今年で19歳なの、あなたも自分と似た人を見かけたらこの電話番号に電話してください。お願いします。」
「わかりました!!絶対、探します!電話します!!」
「行くよ。」
少しずつ遠ざかる女の人からぎりぎり紙を受け取った。紙には電話番号と可愛らしい絵が描かれている。なんだか懐かしいな。
俺は昔の記憶が全然ない。気づいたららっだぁと住んでて、らっだぁが言うには俺は母親に捨てられたって。捨てられた身として考えたら、誘拐された息子を探し続ける母親がいるのはとっても羨ましいと感じる。
「あの人、息子さん見つかるといいね」
「そうだね。」
らっだぁは少し怒っているよう。人混みで相当イライラしているんだろうな。俺は離れないようにまたぎゅっと腕を抱きしめた。
rd side
家に帰ってきてぺいんとはすぐにベッドにダイブした。疲れたー寒いーと手足をバタバタさせるその姿が愛おしくて仕方ない。
「スープでも作る?」
「天才!!作って!!!」
目を輝かせて言うのもまた可愛くて可愛くて胸がはち切れそう。俺は台所に向かいコンロに火をつけた。ふと机の上を見ると、さっきあの女に貰った紙切れが置かれていた。
「…余計なことしやがって」
俺は火のついたコンロにその紙切れを投げ入れた。ボワッと音を立てて燃える紙切れを最後まで見続けた。
「ぺいんとはもう俺だけのものなんだから。」
そう呟くと後ろから足音が聞こえた。
「らっだぁ、さっき女の人にもらった電話番号の紙知らない?ここら辺に置いたはずなんだけど。」
慌てるように周りをキョロキョロするぺいんと。それを見てドクンと心臓が跳ねる。ちょっと悪いことしちゃったね。まあ仕方ないよ、ぺいんとはもうあの女とは一生会わないし話さないんだから。
俺は一言こう言った。
「知らないよ。」
ってね。笑
.