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1 - 待ち合わせ fkmr

♥

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2021年11月13日

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※死ネタ注意


kwmr side


愛してるという言葉は溜息とともに飲み込んだ。


福良が死んで1年が経つ。緩く鼻を掠める線香の匂いは、その虚しさを綺麗事のように表現していた。

m「………ただいま、ふくら」

……………。

静寂。

ああ。今、福良が、あの天使のような表情で「おかえり」と微笑んでくれたら、どんなに幸せだろう。

今は叶わない。


あの、あの、

福良が、事故に遭ったと。切羽詰まった様子の伊沢から電話が掛かってきた時。

忌まわしい記憶よ。忘れたい、忘れられない。

病院に着いた時にはもう既に手遅れだった。

陶器のような、人形のような、彫刻のような、美しい美しい顔をした福良の手は、僕を夢から覚ますように、まだそちらには向かうなという警告のように、

ひんやりと、冷たく、そこに在った。

あの氷のような冷たさが、今も指先に残る。珍しく泣いたなぁ。親友であり、相棒であり、ただ一人の恋人だった福良が、これから、僕の物語には登場しない、だって?

その悪夢は日を増すごとに現実味を増していった。

喪失感と絶望感。

あの日から毎日のように悪夢を見る。あの、福良が死んだ日の、冷たい手の記憶。


___生前の日々を、柔らかい笑みを、彼の体温を。

ふわりふわりと脳内に思い起こしながら、どうか、どうか、来世ではもっと幸せでいて、と、静かに手を合わせた。


額縁の中の彼は、穏やかに笑っていた。


m「……寂しい?」

だけど、どこか、寂しげで。まるでこちらに居る僕を誘うように。

僕もそっちにいきたいなぁ。

福良がいない世界なんて、生きる意味がないんだよ。お前も、もう、分かっているんだろう?

ねぇ、ふくら。

福良。

福良?

ねぇ。

僕は、一年も待ったんだよ。こんなに頑張ったんだから、もう、いいでしょう?

もう、__潮時、でしょう?……______


くるりと後ろを向くと、そこには、青く煌めいた海が、どこまでも美しく広がっていた。

「こっちにおいで」どこからともなく、手招きをする声が聞こえる。

m「…………そっか……………。」

ああ。ああ、もう、いいんだね。……

もう、こんなに痛くて苦しくて、つらいこと。

やめにしようか。


m「うん、そう、もうすぐ着くよ____………」



大丈夫だよ、福良。


今からそっちへ行くから。

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