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コメント
4件
やーーーてんしいい😭😭 ほんとにくろのスト表現力すごくて引き込まれるからだいすき
前回の続き楽しみにしてました! 最近は特に投稿が多くて嬉しいです! でも無理はしすぎないでくださいね! 次回も楽しみにしています!
あの日、私は運良く生き残ってしまったらしい。消毒液の匂いが染み付いた真っ白で冷たい空間の中で目が覚めた。その瞬間、ズキズキと痛みを感じる自分の体にほんの少しの落胆を感じた。
はぐれた私のバディは死んだらしい。
体のあちこちがちぎれ、見るに耐えない姿で発見されたバディの死体に、もう涙は出て来なかった。
こんな私を庇ったせいで死んでしまった優しい人。
まともで真面目な子だった。困っている人がいたらすぐに駆け寄って、仲間が死んだら顔がぐちゃぐちゃになるくらい泣いてあげられる子。
『…だから早く民間に行けって言ったのに』
冷たくなった白い頬を撫で、私は静かに目を閉じた。
「今日から○○ちゃんには、天使くんとバディを組んでもらいます」
数ヶ月後。
上司であるマキマさんから告げられたその言葉に、私は頭の中ではてなを浮かべた。
ぽかんとしてその場に立ち尽くす私を、マキマさんが座るよう促す。
『…てんしくん?』
椅子に座りながら、その名前をたどたどしく聞き返す。口で一回、脳内でもう一回その言葉を繰り返すが、やはりピンとこない。マキマさんはそんな私を見つめると、頬に柔らかい笑みを浮かべ、形のいい唇をゆっくりと開いた。
「“天使の悪魔”。人間に友好的な悪魔なんだけど、彼は少し特殊でね」
「触れると寿命を吸い取られちゃうから気を付けて」
淡々と抑揚のない静かなその声が告げる「悪魔」と「寿命」の言葉が遅れて自身の脳内に届いた瞬間、背筋に冷たい水をかけられたかのような衝撃が走り、周囲の温度がぐんっと下がった気がした。
理解しようと頭の中であれこれ考えようとしたのに、思考が渋滞(じゅうたい)してしまって、しばらく何も思い浮かばなかった。
『え、えぇ…?悪魔、って…それに寿命吸い取る?』
数秒の沈黙の後、私は絞り出すようにそう言う。
息を呑んだ拍子に零れた声は一瞬だけ裏返って無格好の響きになってしまい、慌てて畏まった調子で包み直した。
『悪魔と組むって…私達はデビルハンターですよ?それに寿命って…』
そんな私を見つめたまま、マキマさんはまた口を開いた。
「大丈夫だよ。仲良く出来なくても、上辺だけうまくやってくれたらそれでいいから」
そこまで言うとマキマさんは一度だけ言葉を区切り、丸いぐるぐるの瞳で私はじっと見つめる。
「出来るよね?」
その視線に混じっている“命令”に似たなにかを感じ取り、くらくらと頭が回らない状態のまま曖昧に頷く。
『……分かりました』
私はこの瞳が苦手だ。
“天使くん”のところまで案内してくれると言うマキマさんのあとを黙って追う。
歩調に合わせて振り子のようにゆらゆらと揺れる赤い三つ編みをぼんやりと見つめながら、私はふと思い出した。
あの日。今際の際に見た、私と同じか、少ししたくらいの年頃の少年。
あの子は誰だったんだろう。
死に際だったせいか記憶があやふやで、顔もうまく思い出せない。
そんな中、ふと、「そういえば」と朧気な記憶の端がふわりと揺れた。
あれ、あの子
背中に羽が
「○○ちゃん?」
いきなり聞こえたマキマさんの声にハッとし、意識が現実に引き戻される。ぼんやりとしてる間に目的地に着いたのか無意識のうちに足は止まっていた。
『あ、すみま……せ、』
そこまで言いかけ、視界を動かした瞬間。ぷつりと何かがちぎれるようにして、その先の言葉が途切れた。
『……ぇ』
瞳が自分の意思を無視して勝手に動き、視線が一つの場所に縫い付けられる。
こちらを覗き込むマキマさんの前にいる、小柄な少年。その少年の姿が今思い出していた“あの子”の姿と重なり、心臓が1拍分速さを忘れた。
「この子が今日からキミのバディの天使くん」
キラキラと淡い色で光る小さな輪に、洗いたての毛布のように綺麗で真っ白な羽。茶色がかった赤色の瞳とところどころ跳ねているオレンジ色の髪や色白な肌が目に染み込み、小さく1歩後ずさる。
「……どうも」
人間に近い見た目をしている、“天使”と呼ばれた“悪魔”の姿にを見た途端、私の頭の中であの日の記憶がフラッシュバックした。
─── 血と、土と、泣き声。
縫い付けられたかのように動かなくなっていたたくさんの人間と、ボロボロに崩れた建物。目の前で親を亡くした少女。死んだバディ。ぐちゃぐちゃになった自分の体。
そして、そんな死にかけの私の前に、文字通り舞い降りてきた“天使”のキミ。
あぁ、いや違う。
そうか
この子は“悪魔”だったのか。
しばらく黙った後、二人の視線が自分へ向いていることに気づき、慌てて口を開く。
『あ、ぁえっと、は、初めまして』
喋った瞬間、口の中が妙にパサパサして、言葉が絡まった。緊張で震える手を背に隠し、下手くそな愛想笑いを頬に浮かべる。
そうすると、マキマさんは一瞬だけ不思議そうな顔をすると、またいつも通りの表情に戻って、机の上に二枚の資料を置いた。
「早速で悪いけど、今からキミたち2人に任務があります」
その言葉に若干気まずいような空気を抱えながら、私たちは資料に示された場所へと移動した。