ゆあです。
今回は太宰のオーバードーズを匂わせるシーンが一瞬あります(でも本当に匂わせ程度なので許してください……)。
多分面白くないです!!!長いし。それでも見てやるよ、という方のみご覧下さい。
それではどうぞ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
10時半頃、自分の部屋について、そこからずっと太宰のことを考えて、今の時刻は22時。
《太宰がなんで僕も避けるのか》というのはいくら考えても判らず、《どうすれば良いか》というのは、もう、直接会って話すしかないだろうという結論に至った。
そうと決まれば実行しようと思い、部屋の冷蔵庫に入っていたおそらく与謝野さん辺りが置いていったであろう安酒の缶麦酒(カンビール)を6本、両手いっぱいに抱えて太宰の部屋へと向かった。
ガンッ
生憎(アイニク)両手が塞がっているので足で扉を1回蹴る。ノック代わりだ。
ギィッ
ゆっくりと扉が開く。
「…」
其処からはかなり元気が無さそうな顔をした太宰が出てきた。
「元気?」
「…あまり」
「ふーん、だろうね。まぁほら、入れてよ。お茶しよう」
「どう見てもお茶ではなくお酒ですが…」
「お前はいちいち細かいことを気にするね?そんなのどうだっていいじゃないか。世間話でもしよう。お邪魔しまーす」
「あ、ちょ、待っ」
「……なんと言うか、最悪だね」
太宰の部屋は溜まりに溜まった蟹缶の空き缶や日本酒の空き瓶、そしておそらく市販薬であろう薬の空き瓶、空き箱で溢れかえっていた。
びっくりするくらい「足の踏み場もない」と言う言葉がぴったりな部屋だ。太宰が先刻まで座っていたであろう小さなスペース以外、全てゴミで埋め尽くされていた。
当たり前だが臭いも最悪。こんな場所じゃ到底お茶なんてできない。
「だから、待ってって言ったのに…」
「こんな所いるだけで体調が悪くなるよ……もういいや、僕の部屋でお茶しよう」
そう言って僕は太宰の返事を待たず手を引っ張って自分の部屋へ戻った。
ガチャ
「はぁ、落ち着く…」
「貴方、最近時間の感覚可笑しいんじゃないですか?今朝もそうですけど、今だってもう22時10分ですよ 」
「そんなに遅い時間じゃなくない?」
「貴方からしたら遅いでしょう」
「あぁ、何?僕の眠気とか生活習慣を気にしてくれてたの?それなら大丈夫だよ。お前ほど悪くないから」
「…そうですか」
「うん。まぁ、取り敢えず、はい。呑みなよ」
酒が入っていた方が話しやすいだろうと思ったのだ。もし何か失言をしてしまっても、全て酔いの所為にしてしまえば良いから。
「どうも…これ、態々買ってきたんですか?」
「否、冷蔵庫に入ってた」
「へぇ…珍しいですね」
「与謝野さんのだよ多分」
「……なんで、与謝野女医のお酒が乱歩さんの部屋にあるんですか」
「あー、この前ちょっとね 」
「…」
「なに?嫉妬?」
「別に」
「ふぅん…」
「そういえば今日早退してましたよね。大丈夫ですか」
「うん」
「それは良かったです。でも、私は大丈夫じゃなかったですよ」
「え?」
「乱歩さんが解決なさる筈だった事件、貴方が私と賢治君にと任せたのでしょう?ナオミちゃんが言ってました。それが本当に大変で大変で」
『貴方がいなくて寂しかった』みたいなお決まりの台詞を期待した自分が馬鹿みたいだった。でも気持ちを悟られるのは好きじゃないので
「この僕が体調不良だったんだぞ?早退しないと社の存続に関わる」
と強がってみせた。
「それはそうかもしれませんけど…」
「因みに、どんな事件だったの?」
全く興味がないけど話題を広げるために聞いてみる。
「えっと、30代半ばの男性が4丁目で刺し殺されていまして。犯人はその男の妻だったのですが、なかなか犯行を認めなくてですね。苦労したんです」
「へぇ、なんで妻が犯人だと思ったの?」
「其れは簡単に判りましたよ。事情聴取で彼女は明らかに焦っていましたし、目元に涙のあとがありましたので。化粧も崩れてたし。直す気力も無かったのでしょう」
「ふぅん」
「……興味なんて無いくせにいちいち聞いてくるの、貴方らしくないですね。私に気を使ったりしないでくださいね。不愉快です」
出た。太宰の毒舌モード。
此奴は酒に酔うと必ず毒舌になる。加えて饒舌にも。
太宰の手元を見てみると既に四本の空き缶が転がっていて、今は五本目を呑んでいるようだ。
僕は酒に弱い訳では無いが好きな訳でも無いのでまだ一本目。ちびちびと少しずつ呑んでいる。大人の嗜み方(タシナミカタ)、ってやつだ。よく判らないけど。
「確かにその事件には全く興味が無いけどその場所には興味があるよ。四丁目には美人な三毛猫がいるんだ。見かけた?」
これは本心。七夕の時に祈るくらいには会いたかった子だ。
「…見てないです」
「そう。なんか悲しいな」
「………乱歩さん、その三毛猫と私どっちが好きですか」
「はぁ?」
お前はどこの面倒臭い束縛彼女なんだと言いたくなったがぐっと堪えた。
「私より三毛猫の方が大事にされているように感じるんですけど」
「…お前は人間で僕の恋人、四丁目の三毛猫はただの美人な猫だ」
「…生命は皆平等です。人も、犬も、猫も、虫も」
「そうだね。たしかに僕もなにかに優先順位をつけるのは好きじゃない。でも僕の中ではお前が何においても1番なんだよ」
そう言うと太宰は酒のせいなのか照れてなのか、耳を真っ赤に染めてそっぽを向きながら
「……そうですか」
と言った。
この流れなら切り出せるかもしれないと思った。なんで僕を避けるのか、聞けるかもしれない。
「あのさ、太宰、なんで最近、僕の事避けるの?それなりに傷つくんだけど」
やけに心臓が煩いが、平然を装って静かに問う。我ながら格好悪い。
「え?えぇと、そんなつもり無かったのですが、貴方はそう感じたのですか、へぇ……なら、心の防衛本能かもしれないですね」
「防衛本能?」
よく分からなくて聞き返す。
「はい、防衛本能です。これ以上貴方と関わったらもう死ねなくなると、生き続ける事になってしまうと、脳が警告しているのかも」
「そう……あんまりこういうの、聞かないようにしてたんだけどね、太宰はさ、なんで死にたいの?」
最悪なことを聞いている自覚はあった。こんな事聞かれたくないだろう。でも、知っておきたかったんだ。何故此奴が死を望むのか。
この問いに彼はゆったりと微笑んで抑揚もつけず当たり前のように答えた。
「私なんかに生きる事は、難し過ぎたのです」
と。
恐ろしい程自分を粗末に扱うことに慣れてしまっているような、人に助けを求めるということを知らないような顔で話す目の前の死にたがりに何故か苛立ちを覚えた。
これはきっと、僕の存在が彼の救いになっていると思い込んでいたからだろう。そういう自信があったのだ。心の何処かで、きっと。
精一杯太宰に優しくしているつもりだった。太宰が少しは自分を好きになってくれるんじゃないか、と思うくらいには褒め言葉もかけていたと思うし。でもそれは全くの勘違いだったようだ。
現に彼は自分を肯定できていない発言や行動ばかり繰り返している。
「そう。別にそれは太宰の考えだから否定も肯定もしないけれど、少しは自分に優しくしてあげてもいいんじゃないの」
また太宰を傷つける可能性のある言葉になってしまった。でも、もう、疲れたのだ。
疲れた。そう、嗚呼、本当に、疲れた。抱え疲れた。
「私の何処に優しくしようと思える部分があるのか、疑問です。貴方はいつも無理難題ばかりですね」
太宰はまた当たり前の様な、本心でそう思っている様な言い方をした。
全くそんな事無いのに。
「……お前はそう思うんだね。そんな事、ないけど」
僕は思わずそう呟いた。誰に伝える為でも無く、ただ無意識に吐き出してしまった本音。
「貴方にそう言って貰えるなら、嬉しいです」
「……」
信じてないんだろう。微笑んでいるけど顔に感情がない。
「……あの、今日は、ここで寝てもいいですか」
「え?」
「あ、駄目なら全然、帰ります」
「ううん、いいけど…急だなぁ」
「気分です、気分。もうすぐ23時ですし、ここでなら寝れそうですし、まぁ、もう少し呑みますが…」
「…程々にしなよ」
「はい。あ、ちょっと自分の部屋から日本酒取ってきてきますね」
「ねぇ話聞いてた?」
彼なりに気を使ってくれたのだろうか。この夜は僕の部屋で一緒に寝た。随分と月が眩しい夜で、珍しく月の光が蛍光灯の光に勝って(マサッテ)いた。
ずっとこの時間が続けばいいと思った 。
非凡な僕らの平凡な時間が。
否、続くと思った。
そう思わせてくれる何かがあったのだ。
この時間の中に。確かにあった。あった。あった、筈、なのだが__。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
取り敢えずここまで…誤字脱字等ありましたらすみません🙇♀️
どこで切ろうかな、、と考えた末、ここだったのですが、少し中途半端な気もします՞߹ - ߹՞
今回の話、すごーく、自信が無いです…
次かその次で完結すると思います!
それではまた次の話で。
コメント
4件
自信あれ!?神作としか言いようが無いですよ!?何時もだけど!! 何だろう…、酔って二人しか出来ないような話してて、寂しい…?ですかね、そんな感じがしました!、太宰さんは感情が薄れてるみたいな表現であー!ってなりました(笑) 滅茶苦茶良かったです!神作有難う御座いました!