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__まもなく、終点。
__帰星駅。
車内アナウンスが流れる。
その声はどこか優しかった。
けれど同時に、旅の終わりを告げる声でもあった。
車内は静かだった。
捺も。
いるまも。
蘭も。
尊琴も。
誰も話さない。
みんな気づいていた。
この駅は須千の駅だ。
そして。
何かが終わる駅なのだと。
こさめは窓の外を見つめる。
そこに広がっていたのは、今まで見たどの景色とも違う世界だった。
巨大な星。
青白く輝く海。
空を流れる光の川。
遠くには銀色の都市が見える。
美しい。
けれどどこか寂しい。
そんな景色だった。
須千「……ここが。」
須千が小さく呟く。
須千「俺の故郷。」
誰も言葉を失った。
列車はゆっくりとホームへ滑り込む。
ホームに刻まれていた文字は__
帰星駅
扉が開く。
六人はホームへ降り立った。
すると。
空いっぱいに光が広がった。
そして景色が映し出される。
須千の記憶だった。
幼い須千。
笑顔の人々。
争いのない街。
発達した文明。
優しい世界。
誰も傷つけない世界。
誰も飢えない世界。
誰も悲しまない世界。
こさめ「すごい……」
こさめが呟く。
まるで理想郷だった。
しかし。
映像の中の人々はどこか空虚だった。
笑っている。
でも
心から笑っているようには見えない。
すると幼い須千が誰かに尋ねる。
『幸せって何?』
返事はない。
別の人にも聞く。
『幸せって何?』
やはり返事はない。
誰も答えられない。
その光景を見ながら須千は静かに話し始めた。
須千「俺の星には。」
夜風のような穏やかな声だった。
須千「争いもなかった。」
須千「悲しみも少なかった。」
須千「何不自由なく暮らせた。」
少しだけ笑う。
須千「だからみんな幸せだと思ってた。」
そして。
須千「でも違った。」
その声は少し震えていた。
須千「悲しみを知らないから、喜びの意味も知らなかった」
須千「誰も幸せとは何か、知らなかったんだ。」
沈黙。
星々が静かに輝く。
須千「だから俺は旅に出た。」
「ほんとうの幸いを探しに。」
こさめは須千を見つめる。
ずっと探していたんだ。
たった一つの答えを。
こさめ「てか!すっちーは宇宙人ってこと?」
須千「まあそうだね」
須千が笑って言う
須千「最近の宇宙人はUFOじゃなくて鉄道で来るんだよ」
すると。
須千の前に大きな扉が現れた。
銀色の光でできた扉。
故郷へ続く扉。
その瞬間。
こさめの胸がざわついた。
こさめ「……帰るの?」
思わず口に出していた。
須千は少し驚いたように振り返る。
そして。
優しく笑った。
須千「うん。」
短い返事だった。
けれど。
こさめには十分だった。
寂しかった。
苦しかった。
やっと仲良くなれたのに。
もっと一緒にいたかったのに。
こさめ「嫌だ!」
気づけば声が出ていた。
須千「こさめちゃん……」
こさめ「嫌だよ…」
こさめの目に涙が浮かぶ。
こさめ「だって友達じゃん。」
こさめ「やっと仲良くなったのに。」
こさめ「もっと星見たかった。」
「もっと話したかった。」
言葉が止まらない。
須千は黙って聞いていた。
すると。
捺が頭をかく。
捺「俺もやな。」
須千「ひまちゃん……」
捺「せっかく仲良くなったし。」
いるまも頷く。
いるま「帰るなとは言わない。」
いるま「でも寂しいな。」
蘭が笑う。
蘭「すっちーがいない天文部とか想像できない。」
尊琴も微笑む。
尊琴「また会いたいなぁ。」
須千は目を見開いた。
驚いたように。
信じられないように。
そして。
少しだけ涙ぐんだ。
須千「……そっか。」
空を見上げる。
星々が輝いている。
流星駅
双星駅
桜星駅
鏡星駅
星雨駅
すべての景色が空に浮かび上がる。
そこで見たもの。
仲間を信じること。
好きなものを大切にすること。
前へ進むこと。
自分を認めること。
夢を見つけること。
そして。
今ここにあるもの。
須千はゆっくりと笑った。
今までで一番優しい笑顔だった。
須千「分かった。」
誰もが息を呑む。
須千は静かに言った。
須千「ほんとうの幸いって。」
星空を見上げる。
仲間たちを見る。
そして。
須千「誰かと一緒に笑うこと。」
須千「そして、その人の幸せを願えることなんだ。」
静かな言葉だった。
けれど。
誰よりも温かかった。
幸せは特別なものじゃない。
夢を持つこと。
悩むこと。
仲間と笑うこと。
別れを惜しむこと。
その全部なんじゃないかと。
須千「完璧な世界じゃなくていい。」
須千「悲しいことがあっても。」
「悩みがあっても。」
須千「それでも。」
須千は笑う。
須千「大切な人と笑えて、」
「心からその人の幸せを願えたら、」
須千「それはきっと幸せなんだ。」
その瞬間。
夜空が光に包まれた。
無数の星が輝く。
銀河全体が祝福するように。
そして銀河鉄道が汽笛を鳴らした。
ボォォォ――――ッ。
旅の終わりを告げるように。
けれど。
それは別れだけの音ではなかった。
新しい始まりの音でもあった。
須千は最後にみんなを見る。
須千「ありがとう。」
須千「みんなと過ごした時間そのものが答えだったよ。」
こさめは涙をぬぐって言った。
こさめ「もう会えないの?」
須千が微笑む
須千「こさめちゃんが宇宙飛行士になったら会えるよ。」
こさめは迷いなく言った
こさめ「こさ、絶対に宇宙飛行士になる!!」
そして笑う。
こさめ「また会おうね。」
須千も笑った。
須千「うん。」
その約束だけを残して。
銀河鉄道の旅は終わりを迎える。
けれど。
六人が見つけた星の光はこれからもずっと消えない。
夜空のどこかで。
いつまでも。
いつまでも__
終。
コメント
14件
完結おめでとう! ほんまにごめんけど途中読んでる時、🍵くんが彦星で(?)流星群に乗ってなにかするのかな(?)っていうばかみたいな考察してたけど全然違った笑 でもでも物語の進み方もだし、発想力がすごいから表現の仕方うますぎてわくわくしたし読むのが楽しかったよ〜!
初コメ失礼します! 完結おめでとうございます🎉 ものすごく心が温まる物語で大好きでした 神作品をありがとうございました! これからも作品読ませていただきます✨応援しています📣
♡明日連打するね! きゃああああああって叫ぶよね(?) え、幸せって何か、めっちゃ考えさせられた! うん。好き☆ 明日色々細かくコメントしたいなぁ。 ちょい早いけどおやすみー!