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「————美紅っ」
「えっ……り、律!
そんなに走ってどうし……まさか、追いかけてきてくれたの?」
「……なんで置いて行くん」
「いやー……ちょっと……歩き出したい気分でして」
「………………そう。
良かったわ、追いついて。あっつ……」
「だ、大丈夫?
見るからに暑そうだもんね、スーツって。
あ、ちょっと座る?そこのベンチにでも」
「……ん」
「ええっと……ごめんね?先に出ちゃって。
あれ、タクマくんは?」
「別で帰ってもらった」
「そうなんだ……悪いことしちゃった」
「…………結局、泣かんかったな」
「え。あ……うん。
ちゃんと”お祝いの気持ち”だけ、持ち込んだから」
「…………答えは、出んかった?」
「いや…………多分、出てる。
まだ、まとまってナイんだけど……」
「じゃあ……まだ話せない?」
「うーん…………そうだな…………。
いや、思い切って話してみるか。
まぁ……律さえ良ければ、だけど」
「…………うん。聞きたい。
ゆっくりで、いいから」
「あ。その代わり、文句禁止ね?
『オチがない』とか言わないでよ?」
「言わんわ。関西人じゃないし、俺。
てか関西人だって、いつでもオチ求めてるわけやないし」
「ふふ、それなら良かった。
………………あのね。
朱音ちゃんがさ……余興で、”圭くんの好きな所”を聞かれて、何個か挙げてたじゃない?」
「うん」
「それでね……。
『すぐに拗ねる所と、喧嘩してもすぐに折れちゃう所も好き』って言ってるの聞いた時……
……結構、ショックだったんだ。
圭くんが拗ねてる姿なんて、見たこともないし。
喧嘩するだなんて……想像もできなかった」
「あー……年上ぶってカッコつけたがるからなぁ、圭兄は」
「……ほんとはね、朱音ちゃんにしか見せない顔があること、気付いてたの。
……でも、知らないフリを続けてたんだ、私。
多分、どうしても……”圭くんに恋する自分”を守りたかったんだと思う」
「え」
「一番ツラかった時期を、圭くんが好きって想うことで乗り切れたからさぁ……。
私じゃダメなんだって、気付いちゃったら……
この恋を失っちゃったら、また心の支えが無くなる気がして……」
「………………」
「……うん。やっぱり、答えは出てたな。
こんな拙い、身勝手な恋とは……もうサヨナラするっ」
「…………そっか」
「……ねぇ、律。
これが正しい恋だったのか、わからないんだけどさ。
“圭くんが好き”って気持ちは、本物だったって……思っていいかなぁ」
「……え?」
「私ね……圭くんの、優しい瞳が好きだよ。
周りをよく見てくれて、思いやりの深いところも。
“美紅ちゃん”って呼ぶ、暖かい声も好、きで…………
頼りになる……大きな手……も。
た……たまに悪戯っぽく笑うと、ころ……も……
………あれ?よく考えたら、いつも、横顔ばっかり……見てたなぁ……。
結局、最後まで、届けられなかったけど…………。
たくさん、幸せ……もらったなぁ……わたし………っ」
「………………美紅」
「っ………ご、ごめん。
おかしいなぁ…………今まで、我慢できてたのに」
「いや………………美紅は、すごいよ」
「え……………………そう?」
「うん。
ここまで弱音も吐かずに、一人で決断してさ。
俺なんかより、ずっと強くて……ほんま、すごい。
美紅の気持ちが本物ってこと、俺が保証するよ」
「へへ…………………嬉しい。ありがと。
でも……私、一人じゃ無理だったよ?」
「え?」
「律がいてくれたから……
律が、否定せずに聞いてくれたから。
どんな答えでも、受け止めてくれるから。
ここまで向き合うことが出来たんだよ」
「え……」
「律のいない4年間、
『なーんか足りないな』ってずっと思ってたの。
きっと私にとって……
圭くんが好きって気持ちと同じくらい、
律とたわいもない話してる時間が、大切なんだろうね」
「……………………」
「だから……これからもよろしく、なんてね。えへへ」
「……………………」
「あ…………流石に調子乗りすぎ?」
「————よしっ」
「え、何?怒った?」
「俺も、やめよ」
「え……何を?」
「……”大事にしまっておくだけ”にすること」
「へ?……どういうこと?」
「それは………………今はまだ内緒」
「ええ?まさかの説明なし??」
「そんなことよりさぁ、行きたい所ない?」
「え。い、今から?」
「いや、今度。再来週とか。2人で」
「ええ……いつものカラオケとか?」
「いや、そんなんやなくて……もっとあるやん」
「え……ど、どうしたの?なんか急に変だよ、律」
「リクエストないならさぁ……。
俺、美紅と動物園行きたい」
「ど…………どうぶつえん…………?」
「うん…………あかん?」
「いや……別に、いいけど…………」
「ほな、再来週。空けといてな。帰ろ」
「え。う、うん…………。
…………どうしたんだろ、突然。
見たくなったのかなぁ……パンダ…………」
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