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6.モモとの出会い
オークション会場フロア
椿が離れて行った後、一郎と二郎のインカムが振動した。
七海から報告を受けた一郎は、兵頭雪哉に耳打ちをする。
「どうしますか、ボス。三郎と六郎の方に人を送りますか?」
一郎はそう言って、兵頭雪哉に尋ねた。
「三郎達なら大丈夫だろう。それよりも、三郎達を狙ってるスナイパーを誰が派遣させたのかが気になる」
「俺達の他にも殺し屋団体が来ているのかもしれませんね。そろそろ騒ぎが起きる頃ですが、どうしますか?ボス」
「二郎は騒ぎに紛れて、四郎と合流だ」
「承知しました」
兵頭雪哉の言葉に返答をし、慌ただしく動いているフロアに二郎は視線を向け、状況の整理を始める。
ドタドダドタドタ!!!
「会場にお越しの皆様はオークション会場から避難して下さい!!」
フロアに会場の責任者の声が響き渡り、客達の困惑した声色が響き、我先にと逃げ出す客達の足音が混ざり合う。
「どう言う事?」
「何が起きたのか説明をしろ!!こっちはJewelry Pupilが目的なんだぞ!?」
「オークションはどうなるだ!?」
フロアにいる客達が騒ぎ出し、責任者の周りに人の群がりができ、二郎はそのまま人の波に身を任せながらフロア会場を出る。
「貴方の仕業ですか?雪哉さん」
兵頭雪哉に声を掛けたのは、椿恭弥だった。
「さぁな」
「確かに、Jewelry Pupilを持つアルビノの少女を欲しがる人達は腐る程いますしね。お付きの人が1人いないようですが?」
椿恭弥はそう言って、二郎がいた場所に視線を向ける。
兵頭雪哉は椿恭弥を静かに見据えながら、投げかけられた問いに答えた。
「椿には関係ないだろ」
「はは、伊織も相変わらず僕に冷たいね。君、見た事ないけど新入りさん?」
椿恭弥に話し掛けられた一郎は、短く「はい」と短く無難に答える。
「新入りが付き添いが出来るのって、滅多にないんだよ?よっぽど雪哉さんに気に入られてるんだね」
「恐縮です」
椿恭弥の後ろから、黒いスーツを着た男数人が歩いて来た。
「椿さん」
1人の男が椿恭弥に何かをコソコソと耳打ちしている。
兵頭雪哉達は椿恭弥達が話し終えるのを静かに待っていると、意味深な笑みを浮かべながら椿恭弥は言葉を吐く。
「誰かがここを襲撃しに来たみたいだね。Jewelry Pupiを連れ出す為に」
「それで?お前はどうするんだ椿。誰よりもJewelry Pupiに執着してるだろ」
「そうですね…。今日は帰りますよ。いずれ僕の元に来ますから」
椿恭弥の口から出た言葉を聞き、兵頭雪哉は少し唖然とする。
「へぇ…、大人しく帰る時もあるんだな。お前」
「雪哉さん、勘違いしないで下さいね?貴方が何をしたのかは、予想はついてるんです。この騒ぎを起こさせたのも、ある目的を果たす為に必要だったからでしょう?」
「分かった上で帰るんだろ?」
「えぇ、今回は帰ってあげます。また、会う事があるでしょうから」
椿恭弥はそう言って、一郎の肩をポンッと叩いてから組員と共に、椿恭弥はフロアを出て行った。
「椿の奴、大人しく帰って行くとは思いませんでした。ただ、何か企んでる事はあると思いますが」
「いずれにせよ奴が大人しく帰ったのは好都合だ。さっさとフロアから出るぞ」
「承知しました」
「兵頭雪哉!!」
フロアから出ようとする兵頭雪哉達を呼び止めたのは、数十人の男達で、彼等の表情は怒りに満ちている。
兵頭雪哉は男達が何故、自分に怒りを向けているのか見当はついてた。
一郎と岡崎伊織は素早く兵頭雪哉の前に立ち、一郎はズボンのポケットに忍ばせていたザートイーグル50AEに手を伸ばす。
「お前等が仕組んだんだろ!?」
「Jewelry Pupiを独り占めする気だろう?!!」
「おい、ちょっと待てよ。Jewelry Pupiを貰うのはこっちの組だ!!」
客達の間をかき分けて現れたのは、兵頭会を妬んでいる下っ端の組の人間であるこ事が分かった一郎は兵頭雪哉に耳打ちする。
「どうしますか、ボス」
「無論、殺せ。伊織、一郎を手伝ってやれ」
「分かりました」
カチャッ。
兵頭雪哉から指示を受けた岡崎伊織はそう言って、愛銃のコルト・パイソンを構え、一郎も同様にデザートイーグル50AEを構えた。
#イケメン
#ギャグ
***
CASE 四郎
カチャッ。
トカレフTT-33の銃口の先には、写真で見た少女が俺の背後に気配を決して立っていた。
いや、写真よりも遥かにもっと綺麗だった。
黒いフリルのドレスに、黒いレースのヴェールに包まれた少女はまるで人形のよう、血管が隠された真っ白な肌、アパタイトの宝石の瞳。
これは誰が見ても手を止め、目線すらも奪い、呼吸する事さえも忘れさせてしまうだろう。
少女はそうさせる程の美貌を持ち、人としての美しさとは違う異質な美しさ。
少女の白い額にトカレフTT-33の銃口が当たり、少女は俺を見据える。
死んだ魚のような宝石の瞳。
「私を殺しに来たんですか?」
砂糖菓子みたいに甘くて、高い声が耳に届いた。
「俺はお前を殺しに来たんじゃない。連れ出す為に、ここに来たんだ」
そう言って、俺はトカレフTT-33を下ろす。
俺の言葉を聞いた少女はゆっくり顔を傾け、言葉の意味を理解しようとする。
「私を連れ出す?」
「あぁ、ここに転がってる死体はお前がやったのか」
「この人達は…、勝手に死んだ。私が殺した訳じゃないよ」
「勝手にって事は自殺したって事か?」
「自殺?とは違うかも、お願いしたら死んだよ」
少女は首を傾げながら言葉を放った。
普通に考えてあり得ない、少女がお願いしたからって、死ぬなんてあり得ないこ事だ。
この少女が嘘をついているのか?だとしたら何故、俺に嘘をつく必要があるのか。
殺人した事を隠す為?自分の事を守る為?それとも無実を証明する為?
俺の目から見ても、この少女は殺した事への後悔、罪悪感と言うものが全く感じられないのだ。
思考を巡らせていると、少女が言葉を続けた。
「皆んな、私が死んでってお願いしたら死ぬの。私の瞳を見た人は皆んなそう」
瞳を見たら…って、それはJewelry Pupiの力…なのか?
「信じられねぇ…」
スゥッと、少女の白い手が俺の手を掴んで来た。
ビクッ!!
体が大きく跳ね、少女が近付いて来た事に気が付かなかった。
いや、違う。
俺の体が少女に触れられる事を拒否しなかったんだ。
何んだ、この少女は…。
体が何かに縛られたみたいに動かない、この少女から離れようとしない。
Jewelry Pupiに魅入られた者の運命なのか、それともJewelry Pupiから離れたくないと言う願いからくる感情なのか、説明しようにも言葉が見つからない。
「見たら信じてくれる?」
「は?」
「死ぬのを見たら信じてくれる?」
ドタドダドタドタ!!!
廊下から足音がして来え、俺はトカレフTT-33を構えようとすると、少女が手をグイッと引いて俺の耳元に顔を近付けて来た。
「何すんだ、ガキ」
「見てて。そして、私から離れないで」
少女はそう言って、俺の前に出た。
バンッ!!!
「おいっ!?」
「見つけた!!」
「Jewelry Pupiを持ち出そうとしてるぞ!!」
勢いよく開かれた扉から、現れた数人の男達が俺を見て叫んだ。
コイツ等、床に転がってる奴等の仲間か、闇市場の人間じゃなさそーだな…。
銃を持ってるのを見た限り、客ではなくどこかの組の組員だと推測ができる。
「君、こっちに…」
1人の男が少女に触れようとした瞬間だった。
「死んで」
少女のJewelry Pupiと目が合った男は、持っていた銃を頭に突き付け引き金を引いた。
パァァァァン!!
ブシャッ!!
目の前で信じられない光景が起きる、少女が言っていた通りの事が起きているのだ。
本当に男が勝手に頭に銃口を向けて、引き金を引いて死んだ。
「嘘…、だろ?」
俺は思わず声が漏れてしまった、仕方がないだろう?
信じられない、本当に死んだ…?
「うわあぁぁぁあぁあ!?」
「な、何が起きたんだ!?」
「ど、どうなってるんだよ!?じ、自殺したのか!?」
男達も今起きた現状を理解出来ていなかった。
だが、少女はそんな事も気にせず一歩前に出る。
「ひ、ひっ!?」
「く、来るな!!!」
カチャッ。
男が少女に銃口を向けたが、少女はもう一度「死んで。」と囁く、すると男達は自ら頭に銃口を突き付け、同時に引き金を引いた。
パァァァァン!!
ブシャッ!!
バタッ。
男達は血飛沫を飛ばしながら床に倒れ込んだ。
ドクドクと撃った部分からの出血量を見れば、脈拍を確認しなくても死んだのだと目視だけで分かる。
意識とは裏腹に、体が勝手に動いたって感じに見えたが、本当にそうなのかは分からない。
俺はこの少女ではないのだから、どういう仕組みで殺させたのか知らないのは当然の事。
「信じてくれた?」
少女はそう言って俺に近付いて来た、その姿は俺に褒めてほしそうに見える。
「俺には言わねーの?」
「え?」
「俺には死んでって言わねーの?」
俺の言葉を聞いた少女はキョトンとしていた。
「何で?」
「何で…って、普通は自分を連れ出そうとする奴を警戒するだろ」
「お兄ちゃんからはそんな匂いしないよ」
「匂い?」
「うん、私を殺そうとは思ってない匂い」
そう言って、少女は俺に抱き着いて来た瞬間、心臓がドクンッと跳ねたのが分かった。
何だ…?この感覚は…。
今まで感じた事のない感覚に戸惑った。
何でこの少女は俺に抱き着いて来るんだ?
どうして、俺を殺そうとしない。
どうして、俺に触れるんだ?
俺はどうして、この少女を拒めない…?
「おーい、四郎?」
扉から顔を覗かせたのは二郎だった。
少女は現れた二郎を睨み付け口を開けようとしたのを、俺は慌て止める。
「待てって!!」
「ムグッ」
「コイツは俺の仲間だ、だから大丈夫だ」
俺の言葉を聞いた少女はコクンッと頷いたので、口から手を離した。
「ど、どうなってるんだ?この状況は一体…」
「ここに転がってる死体は全部、コイツがやった」
そう言って俺は少女を指差しすが、二郎は当然信じていない様子だ。
誰が見ても、ガキが大勢の成人済みの男を殺す力がない事は見て分かる事。
「嘘でしょ?」
「本当、俺がこの目で直接見た。言葉で殺していたとしか言いようがない」
「とりあえずまずは、ここから出るよ。一郎と伊織が、兵頭会と敵対している組とやり合ってるから」
「やっぱりそうか」
大体の予想がついていたが、Jewelry Pupiを兵頭会よりも手に入れたかったって所だろう。
兵頭会を敵視している組は少なくない、理由としては傘下に加入させてもらえなかった腹いせが殆どだ。
「2人は問題なくボスを連れて、出口に向かってるって七海から連絡が来たよ。僕達もこの部屋を出て、ボス達と合流しよう。モモちゃんだよね?僕も四郎とは仲間だから安心してね」
「四郎…?」
二郎の言葉を聞いた少女モモは、俺に視線を向けて来た。
「お兄ちゃん、四郎って言うの?」
「あぁ」
「四郎、抱っこ」
「は?」
何を言ってんだ、このガキは。
いきなり呼び捨てにされ、今度は抱っこをしろと要求してきやがった。
「抱っこして四郎」
そう言って、モモは両手を広げる。
何なんだよ、マジでこのガキは。
何で、俺が子守の真似事をしないといけないんだ。
ボスの命令じゃなっかたら、今頃はガキなんか置いて、この場を去る事が出来たのに出来ない。
俺は溜め息を吐いた後、モモを抱き上げお姫様抱っこをした。
「何?モモちゃんに気に入られたの?四郎」
「知らねーよ、さっさと行くぞ」
「はーい、はい」
二郎の絡みを適当に受け流し、俺はモモを抱えて階段に向かって走り出した。
***
その頃、三郎と六郎は一仕事終えた状況になり、数十人の死体が地面に転がっていてる。
「はぁ…、疲れた」
「ハハハハ!!面白かったねー!!」
グッタリしている六郎を他所に、三郎は楽しそうに笑っていた。
「何…、笑ってんのよ。スナイパーの攻撃を避けながら、殺るのは疲れんのよ…」
「ま、コイツ等の仲間じゃないみたいだけどねー」
「は、はぁ?」
三郎の言葉を聞いた六郎は、思いっきり目を見開いて驚く。
「だって、援護するような射撃じゃなかったし。まぁ、どこの誰かは分からないけどね」
「アンタでも分かんない事があんの」
「ハハハハ、俺だって把握してない事ぐらいあるし」
ブブッ。
2人のインカムが振動し、四郎の声がインカムから聞こえる。
「こちら四郎。少女を捕獲し出口に向かってる。三郎達も合流出来そうか?」
「はーい、こちら三郎。粗方片付いたから合流出来るよ。今からそっちに向かうね」
「了解」
インカムが切れた後、三郎が六郎に視線を送った。
「四郎が女の子を捕獲したって」
「じゃあ、ここにいる意味はないね」
「それじゃあ、最後の仕事しますか」
三郎と六郎は四郎達と合流すべく、会場の中に戻る事にした。
***
そんな三郎と六郎を、ライフルスコープで見つめている人物がいた。
パステルピンクに染められた髪は肩までの長さで、毛先は外ハネにされ、白い肌にグレーの瞳をした女がM16A2のライフルスコープから目を離しす。
「あの男、こっちに気付いてた。ここから会場まで距離はあるのに…。まぁ、殺しの仕事じゃないから別に良いんだけど…」
女はそう呟いた後、スマホを取り出しどこかに電話を掛けた。
「もしもし椿様。ターゲット達が会場に戻って行きましたがどうしますか?」
女の通話相手は椿恭弥だった。
三郎と六郎を見張っていた女は椿が送り込んだスナイパーだったのだ。
「今回は良いよ。少し相手の動きを見たかっただけだからね」
「男の方はこっちの存在に気付いていました。女の方は気付いていなかったようですが…」
「へぇ、お前が気付かれるなんて珍しいな。その男やるね。もう、戻って良いよ」
「分かりました」
通話を切った女はM16A2を持ち上げ、会場の方に視線を向ける。
「椿様が目を光らせているだけはあるわね。アイツ等の存在を兵頭雪哉は隠しているようだし。それは私達も同じだけどね」
そう言って、女は会場に背を向け歩き出した。