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『いなくなろうと思うの』
『あとはよろしくね。』
長女の私に投げかけた言葉。
朝、そうお母さんが言った。
土曜日だった。
これ以上一緒にいても辛くなるだけだろうと思ったから、お父さんについて行った。
お父さんが”お母さん”という度、ひるんだ。
お母さんが黙々と準備をしている。
心做しか明るくて、本当なんだなって。
それで、いよいよ車で走り出した。
見送りができなかった。
少し前に進んだ車を見つめた。
私は泣いた。大粒の涙だった。
携帯の制限が解除されていた。
もう、ほんと、ほんとにって。
そしたら着信があった。
弟は寝たか、離婚を考えてる、って。
…巻き込まないで欲しかった。
もう6年生だけど、まだ6年生なんだから。
まだ目を瞑っていられる歳なのに。
でも、お母さんがいなくなっても何とかなるんじゃないかなって思った。
設計図無しにその場で何とかした図工の作品がいっぱいあるから。
でもそう簡単じゃないんだろうな。
また着信があった。
みんなに迷惑かけたくないから帰るね、と。
元を辿ればお父さんが悪い。
自由すぎる、身勝手すぎる。
やっていいか聞く前にはもうやってる。
家にはぜんぜんいない。
いびきはうるさいし、言動もうるさいし。
家事もしない。
でも、弟達を連れてくれてるから、孤独をたしなめたのはいい点かもしれない。
お母さんは自由になりたかった。
1人、静かに、自由を。
もういやだぁ…。
私にできること精一杯やりたいけど無理だ。
お母さんは帰ってくる。
私はそれを拒んだ。
心のどこかでお母さんを拒否してたのかも。
気付かぬ思いやりだったかもしれない。
いずれにしろお母さんは帰ってきた。
もういい。もう決めた。
これから、またこうなったら。
がむしゃらに生きるか。
変わらず生きるか。
死ぬか。
希望に溺れた死欲。
もう二度と出てくるな。