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「さて、それは解決だ。今度はこっちの番だな。みんな、俺とユウがご飯を食べ終わったら、話を聞いてほしい。もうそろそろだから少しだけ待ってほしい」
ムツキはそう告げて、もう少しで食べ終わるというジェスチャーをする。
「承知した」
「はーい」
「分かりました」
「分かりました」
「あぁ」
「はーい」
それぞれが返事をした後、ナジュミネとリゥパは自室へと一旦着替えに戻り、コイハとメイリ、サラフェとキルバギリーで雑談を始める。少し経つとメイリがサラフェとキルバギリーの話題に乗っかって、4人で話し始めていた。上辺だけの和解ではないことが分かって、ムツキは心の底から安心した。
ユウとムツキが食べ終わる頃に、ナジュミネとリゥパが戻ってきて、ケットは朝食の食器を片付けるために妖精たちとキッチンへと消える。その後、ユウが全員の顔を見回してから、頭を大きく下げた。
「いろいろとごめんなさい!」
「ごめんなさい、だけじゃ分からないだろう?」
ムツキが片膝をついて、そっとユウの両肩に両手を掛ける。メイリがユウと同じ目線になるように腰を落とす。メイリの表情は柔らかい。
「ん-、なんとなくは姐さんから聞いたけどね」
「姐さん? ナジュか」
ムツキは聞き慣れない単語に一瞬だけ首を傾げるが、すぐにナジュミネのことを指していると理解した。
「なんでそれで分かるんだ……」
「いや、ナジュは面倒見がいいからさ。ピッタリだと思うぞ」
ナジュミネがじっとムツキを見つめると、彼は優しく微笑みつつ答える。
「……そうか! それなら、姐さんも悪くないな!」
「まったく……ムッちゃんを絡めると一発ね」
ナジュミネは呼ばれ方でモヤモヤしていたが、ムツキに言われると霧が晴れたかのようなはっきりとした明るい表情になる。リゥパは少し納得いかない様子だ。
「ナジュミネさんに聞きましたが、サラフェはまだ彼女がユースアウィス様だと完全に信じたわけじゃありません。会ってみれば、ただの小さい女の子じゃないですか」
サラフェはナジュミネやムツキのことを信用していないわけではないが、ユウが特別な存在なのかどうかは分かりかねていた。
「なるほど。それもそうだ。ユウ、大人モード」
「はーい。みんな、目を少し瞑ってね。よいしょ」
ムツキがサラフェの言葉に納得し、ユウに大人になるよう促す。ユウもまたそれが一番手っ取り早いと納得し、軽い感じで返事をした後にピカっと光り出した。
「眩しっ……成長した?」
「おー、いろいろと大きくなったー」
そこにいるのは、大人の姿になったユウだった。子どもの姿の時のお人形さんのようなドレスとは一転して、ピッチリとしたボディラインのはっきりと分かるタイツスーツのような姿になる。綺麗、美しいの粋を集めたような顔立ちと男好きのするプロポーションは、彼女がどのようにでも変われる証拠でもある。ちなみに、いつもより胸が大きめである。
「ユウ、……メイリに対抗したな?」
「えへへ……ちょっとだけ。こんなこともできるよ?」
ユウが次に出したのは、ウサギの耳とウサギの尻尾である。服装も若干変化させ、まるでバニースーツのような姿は、艶めかしさが数段跳ね上がる。
「本物の獣人耳? それに、尻尾か? 変幻自在だな」
「メイリの変化の術とは違って、完全に本物なんだね」
コイハとメイリがまじまじと耳や尻尾を見つめる。サラフェは驚きのあまり、言葉が出ない。
「そう言えば、ユウを真ん中に立てると、リゥパとキルバギリーがなんとなくユウに似ている気がするな。リゥパとキルバギリーはそんなに似ている感じもないが」
ナジュミネに言われ、ユウとリゥパ、キルバギリーが並んでみる。
「たしかに、似ているな」
「私のモデルはユースアウィス様とレブテメスプ様が仰っていました」
キルバギリーがそう答えると、ユウは複雑そうな顔をし、ムツキは思案顔になる。
「好きな女を模したものを作るか……。ピグマリオンみたいだな」
「ピグマリオン?」
ムツキの言葉にキルバギリーが反応する。
「なんでもない。別の世界の知識だよ。さて、話を戻そう」
ムツキが改めてユウに謝るように促す。
「サラべえ、キルちゃん、メイりん、コイはん、私のせいで傷付いたり傷付けさせたりして……本当にごめんなさい!」
ユウはもう一度頭を下げる。その後、頭を少しだけ上げて、チラチラと全員の顔を窺う。
「メイりんってかわいい♪」
「コイはん……?」
「……何故、サラフェだけ、サラふぇんとかじゃないんですか……。キルバギリーに至っては、普通にちゃん付けじゃないですか……」
「ニックネームは語感で決めているからね!」
誰も怒っている様子もないことから安心したのか、ユウは頭を上げて、嬉しそうに答える。
「いや、そこにみんな引っ掛かるのか。というか、怒らないのか?」
ムツキの問いに、4人全員が首を縦に振る。
「まあ、だって、もうなんだか終わった感があってな」
「それもこれも姐さんのおかげかも」
「リゥパさんもですね」
「そうですね」
4人がそう伝えると、ユウがナジュミネとリゥパの方を向く。
「あ、ナジュみん、リゥぱん、迷惑を掛けてごめんなさい!」
ナジュミネとリゥパは顔を見合わせた後に、2人ともユウの方を向いて優しく微笑む。
「妾には謝るのではなく、礼を言ってくれると嬉しいな」
「私もナジュミネに1票!」
「あ、ありがとー!」
「ナジュ、リゥパ、ありがとうな」
ムツキは全員に対して感謝の気持ちと優しい気持ちでいっぱいになる。
「じゃあ、全員謝った、全員許した、ってことでいいのか?」
「うん。僕は大丈夫」
「俺も問題ない」
「サラフェも問題ないです」
「私に異論はありません」
「うむ。これにて、一件落着だな。だ、旦那様」
「それじゃあ!」
ナジュミネが一仕事を終えたので、ムツキに甘えようとした瞬間に、リゥパが突然大きな声を出す。
「みんなで仲良くムッちゃんに甘えちゃおう! それ、一番乗り!」
リゥパがナジュミネに先回りして、ムツキの真正面、一番良いポジションに抱き着いた。
「む。ズルいぞ!」
「私もー。狭いからちっちゃくなってから!」
「僕もー。ほら、コイハも!」
「俺もか!」
「サラフェは別に……」
「サラフェ、協調性を大事にしてください。えい」
「ちょっと、キルバギリー」
ムツキの前後左右に全員が押し詰め状態のようなり、果てはユウが彼の頭に肩車のようにしがみつく。
「もごっ……ぷはっ……おっと、さすがにいっぺんには無理だろ!」
ムツキは顔に笑みを浮かべながら全員にそう叫んだ。