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第17話:「監視カメラは見ていた」
静まり返った警備室。
田中蒼は、震える手でUSBメモリをPCに挿し込んだ。
画面がちらつき、映像が再生される。
日付は三年前の5月9日 22時47分。
場所は“あのビルの屋上”。
音声はなく、監視カメラの固定アングル。
しかし、そこに映っていたのは、誰もが知る人物だった。
「……やっぱり、お前だったのか」
モニターに映っていたのは、伊藤悠真だった。
スーツ姿でスマートフォンを操作しながら、彼はゆっくりと屋上に現れる。
すでに手すりには、美月が立っていた。
そのそばには、山本結衣――
そして、蒼の姿はどこにもない。
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録画映像の中で、伊藤は何かを美月に叫んでいるようだった。
結衣が驚いたように振り返る。
伊藤が美月に近づき、腕を掴む――
そして、ほんの一瞬、彼女の身体が後ろへ揺れる。
結衣が悲鳴を上げるように駆け寄ろうとしたその時、
美月の身体は手すりを越えて消えた。
「……これは、どう見ても……突き落としてるじゃないか……!」
蒼の声が震える。
だが、それはすでに彼の記憶の中に、断片的に存在していた“真実”だった。
その記憶を見ないフリをしていた自分。
逃げ続けていた三年間。
「俺が、助けられたかもしれなかったのに……
俺はあの時、美月の死から逃げていたんだ……!」
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生配信のコメント欄が爆発する。
【伊藤確定じゃん】
【映像証拠来たーーー!!!】
【田中蒼、よくぞここまで……】
【てか、管理人は何してんの?中村颯太は??】
そのとき、生配信に新たなチャットが差し込まれた。
🟦 [MODERATOR:告白ノ間] 中村颯太:
「これより、最終章に入ります。
次のスピーカーは“あの人”です。
皆さま、録音機器をお手元に。すべてが明かされます」
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蓮がマイクの前で不敵に笑う。
「次のスピーカーは……いえ、“最初の語り部”と言ったほうがいいでしょうね」
画面が切り替わった。
映し出されたのは――
加藤翔(かとうしょう)。
温厚で、蒼の数少ない旧友。
今まで名前だけしか登場してこなかった、あの男。
「やっと……俺の出番か」
彼の目はどこか虚ろで、しかし言葉には妙な確信があった。
「全部、話します。
この“ゲーム”の始まりから終わりまで。
そして……なぜ俺が、それを知っていたのか」