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人との関わりが苦手で無骨な牧場の若者直哉君
馬の気持ちはわかっても、女性(特に母親世代)の気持ちはわかりません
退院してから一週間、より一層お福さんの奇々怪々な行動に振り回されているご様子
ある日の出来事では・・・
キンコン♪ ―今日はカレーごず―
「・・・今日はカレーごず???」
直哉がお福からのlineメッセージを見て首を傾げる
「おい!アリス!このlineなんだ?」
リビングの横で明とハーモニカを吹いてる、アリスに直哉が眉をしかめてスマホを見せる
「ああ!これは打ち間違えているのよ、(今日はカレーです)ってナオ君に言いたいんじゃないの?」
「ふ~ん・・・ 」
おかん世代あるある①、【打ち間違いのlineメッセージを送ってくる】
またまたある日・・・「お福さぁ~ん(泣)私の眼鏡~」
朝アリスが眼鏡をかけていないのび太の、(3)の目をして母屋にやって来た
「テレビの二段目の引き出しに入れてますよ!物を置く定位置を決めて物を動かさずに、ご自分が動いてください! 」
「あの~お福さん・・・昨日テーブルに置いてあった電気カミソリ知りませんか?」
北斗が卵焼きを焼いているお福の後ろで、申し訳なさそうに聞く
「洗面台の下のシンクに入れてありますよ!」
「ありがとうございます(困)」
ピュッと北斗が洗面台に走っていく
「おふくさぁ~~~ん~~僕のハーモニカどこ~~~??」
明がお福の腰に抱き着いて言う
「昨日旦那様のおうちから聞こえてましたよ、持って行ったんじゃありません?」
「あっ!そうだった~~~」
直哉以外の家族がお福を探知機のように頼りにしている・・・その光景をソファーに寝っ転りながら、直哉は不思議に思った
「・・・ふん・・・・ 」
おかん世代あるある②、【家中の物の配置をすべて把握している】
その時ギロリと直哉がお福に睨まれる
ビクッ・・「なっ・・なんだよ・・・ 」
「直哉坊ちゃま!!午前中のお薬まだ飲んでませんよ!」
「ハイ・・・ 」
おかん世代あるある③、【家族の飲む薬の事情も把握している】
―その日の夜―
ガラッ「お風呂お先に頂きました」
直哉の部屋をガラッと開けてお福が言う、寝っ転がってテレビを見て、大笑いをしている直哉がお福を見ないで言う
「あ~~!俺あとで入るわ」
(1時間後)ガラッ・「直哉ぼっちゃま・・・お風呂・・ 」
寝っ転がって漫画を読んでいる直哉が言う
「だからもう少ししたら入るって!」
(2時間後)ガラッ・・・「直哉ぼっちゃま―」
「だぁ~~!もう!風呂は好きな時に勝手に入るって!」
(3時間後)・・・ガラッとまた直哉の部屋のドアが開いた
「だからもう風呂には入ったよ! 」
と怒鳴る直哉をじ~・・・とお福が見る
「な・・なんだよ!今度は・・・」
「あたくしもう寝ますわよ!」
「だからいちいち言いにこなくっていいって!(困)」
おかん世代あるある③・・【やたら風呂を進めてくる&自分が寝る時は宣言しに来る】
そのまたまたある日
「ねぇ~お福さぁ~んアリスお風邪なのぉ~~?」
お福の後をもはやコバンザメのように、チョコチョコついて回るのが日課の明が言う
「お嬢様は扁桃腺がお弱いですからね、この季節の変わり目にはどうしてもね 」
お福がコトコト煮ている鍋から、甘酸っぱい良い香りが漂ってくる
「それなぁに~~~? 」
明が瞳をキラキラして覗き込む、お福のすることは何でも興味津々だ
「金柑シロップですよ、金柑には殺菌作用がありますからね、このシロップをお湯で薄めて、数時間置きにチョコチョコ飲むんですよ、すると喉の腫れが引きますの 」
「僕も飲む~~~~~♪」
「熱いからふ~ふ~して下さいね」
「へぇ~~・・俺もくださいお福さん、なんだか喉の調子が・・・・ 」
アリスに移されたかなとゴホゴホ喉を、触る北斗もキッチンにやってきた
ギロッ・・「旦那様!今夜は余計なことはなさらずに、お二人ともよく休んでくださいましね!」
「あたりまえですよ!お福さん!」
余計な事をする気満々だった北斗が、お福に釘を刺されてあたふたしている、それを聞いていた直哉がブッと吹きだした
おかん世代あるある④・・・【家族のしていることはすべてお見通し】
「余計なことって何~~?ほくとぉ~~?」
明に右に左に揺すられて、無言で北斗が金柑シロップを飲む
「ねぇ~~ってば~~!ねぇ~~!」
さも金柑シロップを飲んでいるから、答えられないとばかりに耳を赤くした、北斗が明に左右に揺さぶられ続ける
成宮家の長男の北斗も今や絶対権力のお福には、歯が立たない様子を見ていい気味だと、直哉は少し愉快になる
ふ~ん・・・アレを飲むと風邪が治るのか・・・
直哉がリビングのソファーから、首を伸ばしてキッチンをのぞき見している、そこでバチンッとお福と目が合う、さっと直哉が目をそらす
「直哉坊ちゃまも飲みますか?」
「俺はいい!風邪ひいてないしっ」
「そうですか・・・それじゃあたくしはお嬢様の所に行ってきますね」
「ああ・・・ 」
お福が大きな盆にアリスの看病セットを乗せて、直哉の傍を去り際にコトンッと、何か置いて行った
よく見ると大きな黒い湯呑の中から、甘くて良い匂いが漂っている、まるで吸い寄せられるように直哉が湯呑に口をつける
ズズズ・・・「うっま・・・・ 」
甘酸っぱい金柑シロップは喉越し爽やかで、一気に喉と肺が潤い、胸の奥からポカポカしてくる、なんとも不思議だなと直哉は思った
おかん世代あるある⑤・・【それぞれ独特の快復魔法を使える】
「でも困りましたねぇ~・・・」
アリスの看病を終えたお福が、ホウッと片方の頬を手で押さえて言う
「今日の午後橋本養鶏所さんに、たまご50個取りに行く予定でしたの・・・でもお嬢様があれじゃぁ~・・・連れて行ってもらう予定だったんですけどねぇ・・・」
「困ったねぇ~~~? 」
明が同じように片方の頬に手を当てて、お福の仕草を真似する
「まぁ・・キャンセルの電話をしましょうか、旦那様のご都合の良い時を聞いてね、また取りに行きましょう 」
「え~~~?じゃぁ今日のおでんに卵はないのぉ~?」
明がゴネる
「卵以外にも美味しい具財を沢山、入れましょうね 」
「俺が連れてってやるよ」
二人の会話を聞いていた直哉が言った
「え~~ほんとぉ~ナオ~~♪」
「まぁ・・・でも・・・ 」
「もうすっかり治ったよ!橋本養鶏所までなんかいくらでも運転できるよ! 」
「なんかナオが優しい~~いつもはお酒臭いただの酔っぱらいなのに♪」
「酒なんかもう飲んでねーよ」
ケラケラ明が腹を抱えて笑う
「本当に本当に?大丈夫ですか?出歩いても?」
「だぁ~~~っ!大丈夫だって言ってるだろ、早く!行くぞ! 」
「それじゃぁ、用意しましょうかね」
トコトコ自分の部屋に着替えにお福が入って行った
―30分経過―
イライラ・・・
「すぐそこまで行くのに、どれだけめかしこんでんだよ!!」
直哉が軽トラックにもたれてお福が来るのを、イライラして叫ぶ
おかん世代あるある⑥・・・【出かける支度が長い】
「40・・・・50っと 」
直哉が軽トラックの荷台の奥に、発泡スチロールを固定し10個入りの紙製の卵パックを綺麗に並べ蓋をする
帰りの山道で割れないように、荷台と発泡スチロールをロープで固定する
「お~い!もう帰るぞ 」
直哉が入口に呼びに行くと、橋本養鶏所の奥さんとお福さん・・・それともう一人誰かわからないが卵を買いに来た奥さんが、肘に籠をさげて話し込んでいる
ペチャクチャ・・「それで・・・あそこの養鶏所は餌が・・・」
「まぁ・・!それで? 」
「でもあそこの奥さんは・・・」
三人全員頬に手を当てている
イライラ・・・「話なげ~な!オイ!」
またまたイライラして直哉が煙草を吸う
おかん世代あるある⑦・・【一旦井戸端会議が始まるとそこに根を張る】
そしてやっとこさ帰り道
「あっ!直哉坊ちゃま!車止めて!!」
キキ――ッ
お福が急に叫ぶものだから、直哉が慌てて軽トラのブレーキを踏む
「なっ・・なんだ?なんだ? 」
「農家さんが青空市場を出していますわ!あたくし行ってきますから、少し待っててくださいね!何かいいものがあるかも!! 」
そういうとお福はシートベルトの留め具を外して、飛び出して行った
イライラ・・・「あ~もう!まったくいつになったら帰れるんだよ!」
イライラしながも直哉は軽トラックを駐車場に停め、お福が買い物を済ますのを待った
お福は白菜や新鮮な大根などを、どんどん軽トラックの荷台に積み、最後は箱に入ったトマトを二箱買った
そしてまた市場の人と長々話し込む
おかん世代あるある⑧・・・【一度買い物に出るとあちこち寄り道する】
イライラがピークに達した直哉が、お福が帰ってきたらすぐに軽トラを発車できるように、運転席に座りエンジンをかける
イライライラ・・・「もう我慢の限界だ!戻ってきたら、一言絶対言ってやる!」
ガチャッ「お待たせしました、直哉坊ちゃま」
お福が助手席に乗り込んでシートベルトを締める
「あのさぁ!お福さ―」
イラついた直哉がお福さんに一言、言ってやろうと彼女の方に顔を向けた、その時ガボッと何か口の中に突っ込まれた
ボリッ・・・シャクシャク・・・
「うんま!! 」
お福に口の中に突っ込まれたのは、きゅうりの一本漬けだった
割り箸に刺さったその1本漬けは良く冷えて、噛めば噛むほど瑞々しく、直哉は食べるのが止まらなくなった
シャク・・シャク・・シャク「ね?美味しいでしょ?これの作り方をおそわっていたんですの」
お福もボリボリ食べながら直哉に言う
フフフッ「おうちでもこの味を作りましょうね♪」
「・・・・・・ 」
その笑顔を見た途端
なぜが直哉は甘い痛みを覚え、何に怒っていたのか忘れてしまった
おかんという存在は・・・・
..:。:.::.*゜:.
ゴーイングマイウェイで・・・
さんざん振り回されるけど・・・
どこか「大切にしたい」と思う
..:。:.::.*゜:.
そんな存在なのだなと、直哉は思っていた
「ところで何かあたくしに言いかけました?」
「もうい~よ! 」