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朝の光が敦の瞳に差し込んで、
瞳の夕焼け色が朝焼け色に変わっていく。
耳の奥でこだまする誰かの言葉___。
『 誰も助けられない奴に 、価値は無い 』
誰がこんな事を敦に云ったのだろうか、
敦にとっては厭に耳に残っていて、
爽やかな朝に反し頭痛がした。
「 濮は… 敦 。
えぇっと 、好物は お茶漬け… ? 」
太宰の置いていった自身のプロフィール、
その文字を敦はよくなぞり、
必死に自分を思い出す。
かたんっ 、
そう何かの倒れる音がした。
敦は回りを見渡して、倒れた物を探す。
病室の棚に飾ってあった、
セピア色の額縁の写真立て。
それが写真をうつ伏せにする形で倒れていた。
「 … ? こんなの 飾ってあったっけ、 」
敦は写真が見えるよう、立て直した。
そこに写っていたのは、12才ぐらいの敦と
「 誰 … だろう 、この人 」
敦に似た、美しい長い白髪。
だが瞳は、敦とは違う広大な海のような、
透明な蒼い光を放っている。
年齢は敦よりも一つ、二つ、重ねているようで、
敦に抱き着いて 優しく微笑んで 写っている。
「 … でも 、あの人が云うには
濮に姉や兄は 居ないはず 、それに濮は
孤児院出身だし… 」
だからと云って、孤児院に
こんな容姿の似た人物がいるのだろうか。
親族以外有り得ないほど瓜二つの人だった。
「 にいさん……… なんちゃって。
少しくすぐったいなぁ 、笑 」
妙にしっくりくるその言葉を敦は呟く。
何も生けられていなかった窓際の花瓶は、
純白のチューリップが添えられていた
―――――――――――――――――
墓場の木陰に、そっと誰かが腰掛けた。
ゆっくりとマッチを見つめながら、
目の前にある墓石に語り掛ける。
「 … 早いね 。織田作が
この世を去って 、 もう六年だよ 。 」
ふっ、と軽く口角を上げ、
視線を”オダサクノスケ”の文字に合わせる。
『 ”雪の夜の話” … 君の瞳には 、
何が写って いたのだろうね。 』
𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝ ♡300