テラーノベル
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…またな、からぴち
カタッ、カタッ
と静かな部屋に
マウスのクリック音だけが響く。
画面に映っているのは
YouTubeの管理画面。
そこには
「カラフルピーチ」
というチャンネル名と
これまでに投稿してきた
何千本もの動画の一覧が表示されていた。
じゃぱぱは、最後の動画のステータスを
《 公 開 》
から
《 非 公 開 》
へと切り替えた。
これで、世界中のどこを探しても
彼らの動画を見ることはできなくなる。
「……よし。これで全部、終わり」
大きく息を吐き、
椅子の背もたれに体を預けた。
誰もいない部屋。
いつもならメンバーの騒がしい声が
響いているはずの通話画面には
じゃぱぱと、もう一人
[ た っ つ ん ]
のアイコンだけが光っていた。
他のメンバーは
先ほど最後の挨拶を終え、
それぞれの未来へ歩き出すために
ログアウトしていった。
泣いていたメンバーも、
無理に笑っていたメンバーも、
みんな最後は
ありがとう
と言って去った。
『なぁ、じゃぱぱ』
ヘッドホンから、
聞き慣れた関西弁の声が聞こえる。
たっつんの声は
いつもより少し低くて、
静かだった。
『ほんまに、これでよかったんかな』
その言葉に
じゃぱぱは苦笑した。
彼らが解散を選んだのは
仲違いでも
誰かの不祥事でもない。
全員が大人になり、
それぞれの人生や
新しくやりたいことのために、
前を向いて決めた
前向きな解散だった。
でも、いざその瞬間を迎えると、
胸が引き裂かれるように痛む。
「よくないわけないじゃん」
「みんなで、何回も話し合って決めたんだから」
『わかっとる。わかっとるけどさぁ….』
たっつんが言葉を詰まらせる。
画面の向こうで
彼が鼻をすする音が聞こえた。
『俺とお前、からぴちが始まる前からさ』
『ずっと二人で動画作ってたやん。』
『あの頃は再生数なんて全然なくてさ』
『いつか有名になりたいなって言いながら』
『毎日バカみたいにゲームして….』
「うん、してたね。懐かしいな…、」
『それが、気づいたら…』
『こんなにたくさんの人が見てくれるようになってさ』
『メンバーも増えて』
『毎日が本当の学校みたいで』
『めちゃくちゃ楽しかった。』
『…..終わらせたくなかったなぁ、ほんまはッ、』
たっつんの声が震え
ついに涙が溢れ出したのが分かった。
いつも動画ではおちゃらけて、
みんなを笑わせるムードメーカーの彼が、
子供のように泣いている。
じゃぱぱはグッと奥歯を噛み締めた。
リーダーとして、
ここで一緒に泣くわけにはいかない。
そう思えば思うほど、
視界が涙で滲んでいく。
「たっつん、?」
優しく、
だけど確かな声で呼びかけた。
「俺たちが作った動画は消えちゃうし、」
「カラフルピーチは今日で解散する。」
「でもさ、俺たちがみんなと過ごした時間は消えないよ」
「リスナーのみんなの心の中にも、」
「俺たちの心の中にも。」
「絶対に残り続ける」
『…..おん』
「俺、たっつんが相棒で本当に….」
「本当によかったよ。」
「たっつんが隣にいてくれたから」
「俺はリーダーでいられた…。」
「ありがとう」
その言葉が引き金だった。
じゃぱぱの目からも、
堰を切ったように
涙がボロボロとこぼれ落ちた。
もう声を我慢することはできなかった。
二人は、誰もいない通話の中で
声を上げて泣いた。
これまで駆け抜けてきた、
奇跡のような日々の愛おしさと
それが終わってしまう寂しさを
すべて吐き出すように。
どれくらい時間が経っただろう。
夜が明け始め、
部屋の窓から薄暗い光が差し込んできた頃
たっつんがふぅ、と息を吐いて笑った。
『あーあ、めちゃくちゃ泣いたわ』
『じゃぁぱのせいで目がパンパンや、w』
「人のせいにしないでよ、w」
「先に泣いたのたっつんじゃん」
いつものような、
他愛のない言い合い。
だけど、これが___
カラフルピーチのじゃぱぱとたっつん
としての最後の会話だった。
「じゃあ….行こっか」
『….おう。』
『みんなのリーダー….』
『ほんまにお疲れさんッ、』
「…たっつんもお疲れ様。またねッ、」
じゃぱぱがマウスを動かし、
[ 通 話 か ら 切 断 ]
のボタンを押す。
ピ ロ ン ッ
と冷たい電子音が鳴り、
画面のアイコンが消えた。
じゃぱぱはパソコンの電源を落とした。
真っ暗になった画面に
少し目が赤い、
でも、どこかすっきりとした自分の顔が映る。
机の上には、
メンバー全員で撮った記念写真が飾られている。
みんな最高の笑顔だった。
「…またな、からぴち」
静かに部屋の電気を消し、
新しい一歩を踏み出すために
ドアを開けた。
ど ~ も
ご 本 人 様 と は ほ っ っ と に 無 関 係 だ か ら ね
じ ゃ な い と 泣 く も ん ()
ま ぁ 思 い つ い た も の は 仕 方 な い よ ね
ば い ば い ~
飴玉
7,992
#一次創作
コメント
3件
あっ...好きです死にましたありがとうございます(???)
このお話は一話完結です。 続きはありません。
「からぴち」という言葉に込められた重みを、最後までしっかり受け止めました……。動画を非公开にする動作、通話から切断する冷たい電子音、一つひとつの描写が胸に刺さります。じゃぱぱが「リーダーでいられた」とたっつんに伝えるところ、堪えようとして一緒に泣いてしまう自然さが本当に美しかった。寂しいけど、あたたかい読後感です。素敵な作品をありがとうございます。