生後3ヶ月。この頃、私がぶち当たった壁とは、
である。このお茶会は、私が生まれてきたことへの感謝と産んだ母へ贈り物をする、誕生日会のようなものだ。母の体調が万全になってから開かれるため、私が産まれてからは少し間が空いた。ところでなぜそのお茶会が壁なのか?疑問に思うだろう。
それは、このお茶会に王翼全員が参加するからである。王翼たちは世界の最高権力者。前世の記憶がある私は、礼儀を一応弁えてはいるが、今は生後3ヶ月の赤ん坊。そのような素振りを見せては怪しく思われるが、王翼たちの前で不敬なことなど絶対にできない。礼儀をとるか、年相応な演技をとるか。お茶会当日まで頭を捻った。しかし、どうやらその心配はなかったらしい。
クラール「此度は我が愛娘と妻のため集まってくれたこと、心から感謝する。本日はゆっくりしていってくれ。」
ジノウェ「なに、気にすることではないよクラール。めでたい事は全身全霊で祝いたいじゃないか。」
ザバナ「その通りだぜクラールのおっさん。ほれ、ほんなにおいひい飯もあるんらひさあ。」モグモグ
シオーナ「ザバナ!何フライングしてんだ!さっさと手に持ってる食い物を置け!」
ファシスト「まあまあシオーナ。落ち着きなさいな。赤子が泣いてしまうよ。」
カリグト「シオーナはザバナのこととなるといつも怒鳴ってばかりだねえ。そうは思わないかい?」クスクス
ガザード「まったくだ。王翼たるもの、いつなんどきも心の冷静さを欠いてはならぬというに。」
ジヲパル「おいおい、ここでも愚痴か?そんなんだから頭デッカチなんだぞガザール。」
ショファンナ「い、言い過ぎだよジヲパル。ガザードもだけど、みんな間違ったことは言ってないし、、、」
ドゼファン「さすがショファンナだね。この僕が小さい頃からそばに居ただけはある。まさにbeautiful girlだ。」
各々が楽しくダベっているが、やはり王翼。この底知れぬ圧は王としての威厳なのだろう。いつもと同じ空気が、高貴で恐れ多いものに感じてしまう。
シスル「フフフ。みなさんありがとうございます。この私からもお礼を言わせてくださいまし。」
母の優しい声が、皆の心に優しく降り注ぐ。よし、やるなら今だ。もう覚悟は決まった。今更引き返すもんか!
私「あ、あーと、、、ます!」(ありがとうございます)
はああああああああもう無理!なに「あーと♡」ってえええええ!いくら生後3か月だからってえええええ!
生後3ヶ月の赤ちゃんって、、、しゃべらないよね!?
クラール「マルーシャ、、、」
終わった終わった終わったああああああああマジでやらかした!なんで気づかなかったの!?あーもう無理無理無理!私の転生ライフがあああああああああ!
クラール「マルーシャ、、、なんって愛おしい声なんだ。」
ん?あれ?おっと?
ウェルコア「ああ、僕の妹にこんな素敵な声をくださった神に感謝せねば。」
お、お兄様まで、、、
シャルン「ほんとに可愛らしい。今の声だけで私、パン5つは食べれるわ、、、」
お姉様もかぁぁ。
ジノウェ「ふふふ。素敵なお言葉、嬉しく頂戴するよ姫君。」ニコッ
ファシスト「ええ。この子に祝福がありますように。」
おお、この2人。なんとも冷静な。、、、推せる。
カリグト「ほらほら、料理が冷めてしまう。早めに食べましょう。」
カリグトの掛け声に合わせ、皆は一斉に唱え始めた。
「「我らが王翼。いつなんどきもこの国のため、世のため。身を粉にし尽力すること、生涯を持って示す。我が国に栄光あれ」」
皆真剣な顔だ。おそらく王翼たちの決まった掛け声なのだろう。
そんな真剣な顔たちは長く続かず、掛け声が終わるとすぐに食べ物にかぶりついた。
食事が終わると、王翼たちは母に贈り物をし、しばらくの間楽しくおしゃべりして、各々帰って行った。私はメイドに風呂に入れられ、すぐにベッドへ連れて行かれた。
フウ、なんとか乗り切った。みんな割と和やかだった気がする。これからもうまくやっていけそうだ。
今年最大のイベを乗り切った私は、ベッドに入ってすぐに眠ってしまった。暗くなってゆく視界の中、私の目には柔く淡い今日の思い出が溢れ出ていた。
コメント
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やっぱ最高峰は感性バグってるのがいいわ(´д`)