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カイムはコユキの耳元に嘴(くちばし)を近づけて囁いたのである。
「あの二人が冬季の仕事、季節雇いの仕事、平たく言えば誰もやりたがらない代わりに収入、所謂(いわゆる)、割のいい仕事に採用されたでしょ? その仕事ってさ、冬場の北海道って除雪車が道路上に降り積もった雪を除雪するでしょ? そうすると歩道とかに雪が寄せられちゃうじゃない? んまあ、都市部だったら温水が歩道に有る雪を解かすんだけどさっ、道路と歩道の間にある場所は、誰の興味も引けずに春、ううん、初夏まで氷雪に覆われるんだよね…… んでもさ、それじゃぁ困る仕事の人達もいる訳でしょ? 例えば、毎日決まった時間に郵便物を集めなければならない郵便局員さんとかさっ! あの二人が雇って貰えたのは正にそれ! ポストから一日数回取り集めをする郵便車両に同乗して、スコップ片手にポストを開ける為だけに、雪掻きをし続ける、そんな季節雇いの仕事だったんだよ! 始めて数日で二人とも立ち上がる事が出来ない程疲労困憊でね…… ああ、これはダメだな、二人とも死んじゃうなぁ、そんな時だったんだよ、虎大が『身体強化』を覚えてくれてね…… 竜也の分も雪を掻き捲ってくれたんだよ? コユキ様、偉いでしょ? 虎大も!」
コユキは途中から大きな頬をグチャグチャに濡らして何とか言葉にしたのであった。
「んぐぅ、そっか、そっか、そっか、ぐあんばったんだねぇー、アンタ達三人も、きっと弾ちゃんやリボン、マッチもさぁっー、んぐ、んぐ、よぉくぅ、ぐあんばったねぇー! おいおいおいおい! おーいおーいおーいおいおいおいっ!」
「キョロロン?」
「姐さんどうしたんですか? どっか痛いんですかい?」
「そうですよ、お姉さん、少し休みましょうか? おおい、皆ぁ! ちょっと止まってくれないかぁ!」
「オーイオーイオイオイオイオイオーイオーイオーイオイオイオイオイィッ!」
コユキ号泣の最中、一際高い丘を登り切った場所で立ち竦んでいる三メートルを超える緑一色の存在が声を掛けて来たのであった。
「こ、コユキ様? どうしたんですか? そんなにお嘆きになって…… さあさあ、ここにお座りになって下さいませ、何が御有りになったのですか? この下僕にお話しくださいませ」
「えぐ、えぐっ! あ、アンタァ、若しかしてアジ? アジ・ダハーカぁ、ちゃんなのぉ? えぐえぐっ」
「はいはいそうですよ! アジ・ダハーカですっ! もうっ、どうしたんですか? 泣かないで下さいよぉ!」
そう言った緑一色の巨人は、蛇の様な顔を困惑に歪めながらコユキを慰める様に丘の頂上に招きあげたのであった。
緑の鱗に覆い尽くされた体躯は強靭その物に見え、両の肩からは中央に有る首と同様に逞しい二つの蛇頭が赤黒い舌をチロチロと伸ばしながらこちらを見つめていたのであった。
二本の太い腕は先端にある巨大な拳を力強く握り込み、指には美しい宝玉をあしらった指輪が光っている。
同様に首から提げられたペンダントやネックレスにも色鮮やかな宝石が煌(きらめ)いて居り、それだけで、この蛇、いいやアジ・ダハーカがこの世界に於いて、圧倒的な強者である事を告げている様であった。