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想いは募り、咲き誇る
sha×sm
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sm「……はっ……?」
突然せり上がってきた嘔吐感に抗えず、吐き出したものは目を疑うほどに鮮やかな紫色の花だった。
sm「……え……何……、これ……」
俺はしばらく呆然とその花を手にし、見つめていたが、
こんなことをしていても仕方ない、と思い直し、病院へと向かった。
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医者「スマイルさん、あなたの患っている病気ですが」
医者「“嘔吐中枢花被性疾患”……通称“花吐き病”という病です」
sm「……花吐き…………」
聞きなれない病名に、俺はぱちくりと瞬きを繰り返すことしか出来なかった。
医者「この病は、片想いを拗らせると発症します」
sm「……!片想い……」
医者「はい。花を吐く前、その片想いの相手のことを考えませんでしたか?」
sm「吐く前……」
俺の片想いの相手は、メンバーのシャークん。
高校生の時に出会ってから、ずっとずっと好きだったんだ。
でも、ワイテルズというグループを結成してから、その恋は絶対に叶わないものに変わってしまった。
だって、俺一人の感情でグループの形は変えられないから。
俺一人の恋愛感情を、グループに持ち込めないから。
…………だから、絶対に叶わないんだ。
医者「この病は、その片想いは叶わない、という絶望や、恋が実るか分からないという不安により、発症します」
sm「…………治す、方法はないんですか……?」
医者「あります」
医者「片想いの相手と両想いになり、想いを実らせることです」
医者「そうすれば白銀の百合の花を吐き出し、病は完治します」
医者「ですが……早めに処置をしないと、花を吐く度に内臓に負担がかかり、食事もままならなくなり……」
医者「死に至るかと」
sm「……そう、ですか」
俺は現実味のない“現実”に、曖昧な返事をすることしか出来なかった。
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sha「スマイル?お前最近、顔色悪いぞ?体調でも悪いのか?」
とある日の撮影終わり。
最近、メンバーのスマイルの顔色が悪いな、と思い、声をかけた。
昔から無理をしやすいヤツだ。こちらから聞かなければ何も話してくれないだろう。
だが、スマイルの様子は明らかにおかしい。
隠しているつもりなんだろうが、全く隠せてないっつーの。
sm「……、大丈夫。俺この後用事あるから帰る」
sha「あ、スマイル……」
結局、スマイルからは何も聞き出せずにその日は解散した。
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sm「Nakamu、ちょっといいか」
俺の患っている病が花吐き病であることが判明した1週間後。
この日は実写の動画撮影があり、俺とNakamuはみんなよりも少し早めに集まっていた。
nk「なに?どうしたの?」
sm「実は俺さ、病気に……かかってて」
nk「え……病気……?」
sm「ああ。花吐き病……っていう病気なんだけど」
nk「……うん」
sm「あの……俺、実はさ、高校生の時から、シャークんのことが好きで」
nk「うん」
sm「え、驚かないのか?」
nk「うん。だって、バレバレだったし。スマイルは隠してるつもりだったんだろうけど……」
nk「それで、花吐き病っていうのは?」
sm「……その恋は叶わない、っていう絶望……、とか、恋が実るか分からない不安とか……、そういう……、のが……」
nk「スマイル……?」
sm「う……っ、おぇっ……、はぁっ」
ダメだ。
どうしても、シャークんのことを考えると、吐き気に耐えられなくなる。
この間シャークんに話しかけられた時だって、話しかけられたことを喜ぶ暇もなく、せり上がってくる吐き気に耐えるのに必死だったんだから。
sm「おぇぇっ、う、っ……、はぁ、はぁっ」
nk「…………落ち着いた……?」
俺がひとしきり花を吐き終わるまで、Nakamuは背中をさすってくれた。
sm「もう……みんな来ちゃうから」
sm「この病気は、シャークんと両想いになって恋を実らせないと、花を吐く度に内臓に負担がかかって、そのうち、死ぬ」
nk「…………っ!」
sm「……この恋は、叶わない」
sm「…………だから、俺はもうすぐ……」
nk「……スマイル、冗談でもそんなこと言うな」
そう言い俺を見つめるNakamuの瞳は真剣そのもので、俺は思わず気圧されてしまった。
nk「……とりあえず、今日は撮影休んで。シャークんと、あんまり顔合わせない方がいいんだろうし」
sm「うん……ありがとう」
nk「…………でもさ、いつかは話さなくちゃいけない時は来るよ」
nk「第一、スマイルはシャークんの想いを知らないんだから」
sm「…………、そう、だな」
nk「もうみんな来るし、隣の部屋で休んでて。メンバーにはオレから言っておくから」
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シャークんの、想い…………
シャークんは今、誰を想っているのだろうか。
誰のために、生きているのだろうか。
シャークんのことが好きなクセに、俺はシャークんのことを何も知らない。
でもきっと、
─────その誰かは、きっと俺じゃないんだ。
sm「……うっ……」
そんなことをぐるぐる考えていると、また吐き気に襲われた。
sm「トイレ……っ」
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sha「…………?花びら……?」
撮影の前。念の為トイレに行っておこうと思ったオレは、廊下で花びらを拾った。
この撮影スタジオの中に花なんて飾ってなかったはず。
…………そういえばスマイルは、いつも撮影している場所の隣の部屋にいたよな…………
ここのトイレは、一番スマイルがいる部屋に近い。
そして、廊下…………ドアの近くに落ちていた花びら……
─────聞いたことがある。
とあることがキッカケになり、花を吐く病気があると。
まさか、スマイルはその病気に…………
でも、キッカケってなんだ……?
とりあえず、調べてみよう。
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どうやら“花吐き病”と呼ばれるそれは、片想いを拗らせると発症する病らしい。
スマイルの片想いの相手…………
誰なんだろうか。でもきっと、
それはオレじゃない。
だって、今までオレがしてきたことに、1度でもいい反応を見せてくれた事があっただろうか。
高校生の時、冗談で『好きだよ』って言ってみたり、この間だって、体調が悪そうなスマイルに声をかけたりした。
オレだって必死なんだ。
でもスマイルは、普段と顔色1つ変えず、『そうか』と言ったり、『大丈夫』と誤魔化したりするだけ。
それに、高校生の時、オレはスマイルのことを傷つけた。
何を言っても冷めているスマイルに無性に苛立ちを覚え、
『オマエみたいなやつと話しても楽しくない』
なんて、自分のことしか考えてない餓鬼みたいな発言で、スマイルを傷つけたから。
それなのに好きなんて、言えるわけが無い。
─────なぁ、スマイル。
オマエは、誰のことを想って、花を吐くんだ?
誰のことを想って、苦しんでるんだ……?
誰のことを想って、
散っていくんだ……?
✧• ───── ✾ ───── •✧
続きます