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side💚
レッスンが終わった後、スタジオを出ようとした佐久間を、俺がそっと引き止めた。
💚「佐久間、ちょっといい?」
俺の声に、佐久間は足を止めた。
メンバーたちはすでにスタジオの片付けを始めていて、二人だけがぽつんと取り残されたようだった。
🩷「阿部ちゃん、どうしたの?」
💚「俺の気持ち、伝えたい。」
それを聞いた途端、佐久間の表情が真剣になった。
🩷「…わかった。」
二人は静かに隅へと移動する。
そこで先に口を開いたのは佐久間だった。
🩷「俺さ、阿部ちゃんの気持ち、無理に急がせるつもりはないよ。」
佐久間がゆっくりと言葉を紡ぐ。
🩷「でも、俺はずっと阿部ちゃんのそばにいたいし、もっと阿部ちゃんのことを知りたい。」
俺は、佐久間の瞳を見つめながら小さく息を吸った。
💚「俺も…佐久間といると落ち着くし、楽しいって思う。」
🩷「うん。」
💚「俺は佐久間のことが好き。でも、これが恋愛としての感情なのか、自分でちゃんと整理できてなくて。」
俺は曖昧な答えを言ってしまった。
佐久間の気持ちに答えたいし、ずっと一緒に居たいっていう気持ちは一緒だと思うけど、俺は恋愛をしたことがない。
誰かを好きになったことがない。でもこんな感情を抱くのは佐久間が始めてだった。
俺の曖昧な言葉に、佐久間は少しだけ寂しそうに眉を下げたが、すぐに笑った。
🩷「それでいいよ。阿部ちゃんの気持ちが整理できるまで、俺、待つから。」
💚「佐久間…」
🩷「だからさ、焦らなくていい。ただ、俺がこうやって阿部ちゃんを好きでいることは、知っててほしい。」
その言葉は、俺の胸の奥にじんわりと温かく染み込んでいく。
💚「…ありがとう。」
ぽつりとこぼれたその言葉に、佐久間はにっこりと笑った。
🩷「じゃあ、俺たち、まずは”特別な関係”ってことでどう?」
💚「特別な関係?」
🩷「うん。まだちゃんと答えを出さなくていい。俺は阿部ちゃんの気持ちはちゃんと伝わってる。
でも、お互いに大切な存在だってことは、ちゃんと確かめ合える関係。」
💚「…それなら、いいかも。ごめんね。ありがとう、佐久間。」
🩷「謝る必要はないよ。俺たちのペースで歩んで行こ!!」
佐久間がそっと微笑んだ。
💚「…うん。わかった。」
🩷「よし!じゃあ今日は帰りにご飯食べに行こう!」
💚「え、急に?」
🩷「だって、阿部ちゃんと一緒に居たいし、阿部ちゃんのこといっぱい知りたいんだもん。」
佐久間が悪戯っぽく笑いながら俺の手を引く。
その瞬間、俺はふと自分の手のひらに伝わる佐久間の温もりを感じた。
(ああ、やっぱり…佐久間のこと、俺は好きなんだ。)
はっきりとした答えはまだ出ない。
だけど、この手のひらの温もりを、もう離したくない。
二人の歩く未来は、ゆっくりとでも、確かに繋がっていく気がした。
──手のひらの恋は、まだ始まったばかり。
end.