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「葉月、ちょっと話があるんだけど」


週明け、大学に着くや否や私の元へやって来た杏子はどこか深刻そうな面持ちで「話がある」と言ってきた。


「話? けど、もうすぐ講義始まるし――」


話というのは気になるけれど、時計を見ながらもうすぐ講義が始まると言ったのだけど、


「そんな事よりも、ものすごく大切な事なの! いいから来て!」

「あ、ちょっと、杏子!?」


講義よりも大切だと口にした杏子は私の手を掴むと、強引に引っ張ってきたので、私はそのまま中庭の方へと連れて行かれる事になった。


そして、


「葉月、アンタ……付き合ってるの!?」


人気の無い場所へ辿り着いた瞬間、そんな言葉を口にした。


「ちょ、ちょっと待ってよ、全然話が見えないんだけど……」

「待てないわよ! 私、びっくりしたのよ? 昨日浦部から聞いて」


突然「付き合ってる」だのと言ってきた事で何の話か全然見えなかった私は一旦落ち着いて話をするよう杏子に頼んだものの、興奮冷めやらぬ彼女は聞く耳を持たず、更に話を続けて来る中で「浦部くん」の名前が出てきた事で、何の話か何となく予想が出来た。


「あの、それってもしかして……お祭りの、話?」

「そうよ! まさか葉月が小谷と祭りに行っただなんて……私聞いた時心臓止まるかと思ったわよ!!」


話が分かって一安心……とはいかず、何故小谷くんとお祭りに行ったのか、そこを話す事になる訳だけど、それを話すにはやっぱり一緒に住んでいる事を話すのが一番手っ取り早い。


(……こんな事ならさっさと同居の事、話すべきだったよね……)


どんなに誤魔化したところで、これから先もまた小谷くんと一緒にいるところを見られればその都度言い訳をしなければならないのも面倒だと、悩みに悩んだ末に私は――


「あのね、杏子はびっくりすると思うけど……これには理由があって、小谷くんとは付き合ってる訳じゃ無いんだけど……今私たちは、ルームシェアしてるの」


小谷くんと一緒に住んでいると告白する事に決めて話を始めた。


「ルームシェア……? 小谷と?」

「うん……実は私と小谷くん、偶然同じアパートに住んでて……隣同士……みたいな感じだったんだけどね、私に色々と理由が出来て引っ越ししなきゃいけなくて、でも、引っ越し費用もかかるし、住んでたところが凄く格安なアパートだったからそれより家賃がかかるところも厳しくて……それに悩んでたら小谷くんがルームシェアを提案してくれて……知らない仲でも無いから、私の方からお願いしたの」


私の説明に杏子は驚いて言葉を発する事すら忘れているようだった。


まあ、こうなる事は予想出来ていたし、杏子からすれば、どんな理由があっても小谷くんとルームシェアなんて有り得ないと思うだろう。


何を言われるのか構えていると、


「……そう、だったの……。正直理解が追いつかないけど、理由があるのは分かったし、葉月の方から頼んだのも分かった。けど、だったら早く言ってよね! 隠すなんて酷いよ。そりゃあ小谷の事悪く言ってたから言いづらかったかもしれないけどさぁ……」

「ごめん……」

「そっか……小谷とルームシェアね……。アイツがそんな提案するなんて驚きだけど……それは相手が葉月だから……なのかな」

「え? それってどういう……?」

「アイツ、女の事はみんな嫌いなのかと思ったけど、そうじゃないのかもって事。きちんと人柄を見て関わる相手を選んでるのかなって思ったのよ。葉月は性格も良いし、人を悪くも言わないし、努力家だし」

「ちょっ、急に何よ、そんなに褒めて……」

「……葉月、ごめんね」

「だから、どうしたのよ、急に……」

「……私、小谷の事、全て知ってた訳じゃ無いのに悪く言っててさ……。葉月からしたら、面白く無いよね。同居人の事を悪く言われたら」

「いや、別にそんな……」

「それに、浦部の事もごめん。アイツはかなりショック受けてたけどさ、葉月は恋愛対象としては見れない訳だし、アイツにはきっぱり諦めるよう私から話すよ」

「杏子……」

「これからはさ、もっと色々話して? 私はね、葉月とは何でも話せる友達でいたいって思ってるからさ……話して欲しい」

「ありがとう……。私も、杏子とは何でも話せる友達が良い。今度は何かあったら隠さないで話すから、その時は聞いてね」

「勿論!」


意外にも小谷くんとのルームシェアについてすんなり納得してくれた杏子。


こんな事なら隠さないでもっと早くに話すべきだったと反省しながら、杏子とはもっと何でも話せる友達で在りたいと思えた瞬間だった。

近くて遠いキミとの距離

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