暇だなぁ…。
たまによく、頭が空っぽになって、何も考えたくなくなることがある。そういうとき、私はよく好きなものや、自分の配信のアーカイブをよくみている。
アーカイブってさ、私結構好きなんだよね。人生のアーカイブも見てみたいなぁ…って、思ってしまう。
そう思いながら、私はこの前の配信のアーカイブを見始めた。
「今日は色々な質問に答えていくよー!」
画面の中央に映る、ハイテンションな甘愛彩。横にはコメントが流れている。
画面の中の甘愛彩は、うーん…と流れるコメントから質問を見つけ出そうとしている。
「えーと…彩ちゃんの一番好きなものはなんですか…うーん…?改めて言われるとよくわからないなぁ…ファンのみんなかな?」
そう言い、あはは、と笑う。
ほんと、配信の時の私は生き生きとしている。今の空っぽな私じゃなくて。
「じゃあ反対に苦手なものは?って?えっとね、私、牛乳が嫌い。もうなんか、全部嫌なんだよね。農家の人に申し訳ないけど」
こういう配慮もちゃんと忘れない。つくづく、私ってしっかりしてるなぁ…と思う。自画自賛。
「その角と尻尾は本物ですか、?当たり前でしょー!私は悪魔なんだから。いや、ネタとか設定じゃなくて」
そう、私は割とガチ目の悪魔だ。みんな信じていなそうだけど。
「最後に…今悩んでいること…?えー?なんだろうなぁ…」
急に声のトーンが落ちる。私、何言ったっけ…?
「たまにね、何にも考えたくなくなって、頭の中がからっぽになっちゃうときがあるの。何にもやる気しなくて、ひたすらベットに横たわってる。でもスイッチが入れば治るんだよ?でもねぇ…」
あ、これのこと言ったんだ、私。
次は、この前のライブ映像を見る。
ちゃんとファンサ、できてたかなぁ。ちゃんと、歌えてたかなぁ…
画面に映った私は、顔を真っ赤に、汗をかきながら必死で歌ったり踊ってる。楽しそうな表情で。みてるとこっちまで楽しくなってきてしまう。私は、そんな没入感を大事にしているし。当然だよね。
「ありがとうございましたー!!!」
曲が終わるたび、そんなことを言う。
本当に私は、時々鬱になってしまう。
もう何もしたくない、配信やめたい、仕事忙しい、ライブでたくない。
喉痛い、歌いたくない、鼻声、聞かせたくない。
だいたいそんな日は丸一日寝て頭をシャキッと整えるんだけど。それでも治らない時があって。
この世界なんて、壊れてしまえ、って。思うことも多々ある。
こんな私を、ファンのみんなには見せたくない。ファンのみんなには、綺麗で可愛い私だけをみてもらいたい。そういうの、顔を隠して活動する歌い手とか、Vtuberとかにちょっと似てると思う。
だから私は、暗い私を隠すんだ。
世の中なんてこんなもん。でも私は、嫌いな人はいない。まぁ、嫌いな動物はいるけど。人を嫌いになろうとなるべく思わないようにしている。その時に便利なのが、『苦手』だ。
苦手と嫌いは違う…と自分に言い聞かせ、人を嫌いになろうとしないようにする。
だから、たびたび人と話が合わなかったり、すごいって思われたりしたっけ。
あ、そろそろ配信の時間だ。
「こんあやー!今日は久々の歌枠だねー!」
ちょっと喉が痛いけど、ファンのみんなを悲しませないように、我慢をして歌う。
ライブの日。
ちょっと頭が痛かったけど、衣装に着替えて、ニコニコ笑顔を忘れずに、輝く赤いペンライトを見つめながら、純粋な顔して、また歌う。時にはお話ししたり。色々。
「みんな、今日も来てくれてありがとう!」
って。
暗い私から逃げる。逃げて笑う。暗い私は私を睨む。私は止まる。足が動かない。
暗い私は私が鬱から抜けたら成仏した幽霊みたいに、すうっと消える。そしてまた現れる。
しょうがないね。
これも『私』なんだから。
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