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「ねぇ、殺人鬼さん。僕を殺すタイムリミット
の今日、実は僕の18回目の誕生日なんです。」「っ……」
「ちゃんと殺してくださいね。そしたら貴方は
幸せな時間を歩んでいける。」
「俺に君を殺すことなんてっ……」
「僕は今まで幸せな時間を生きてきました。今
度は殺人鬼さんの番です……ねぇ、殺人鬼さ
ん。殺人鬼さんは名前が無いんですよね。僕
に誕生日プレゼントをくれませんか。あなた
の名前を僕につけさせて貰えませんか。」
「君に俺からあげられるプレゼントは、これか
らの時間だけだよ。」
「ほら、ナイフを持って下さい。」
「やめろ!!」
「ひなたさん。暖かいと書いて暖さん。」「……俺には似合わねぇよ。」
「いいえ、あなたと過ごした1ヶ月間は僕にと
って陽だまりみたいに暖かくて、人生で1番
幸せな日々でした。あなたの真っ赤な瞳みた
いに暖かかったんです。」
「俺も幸せだったよ。俺なんかに優しくしてく
れて、笑顔でいてくれて、人生で1番幸せな
日々だった。だから俺は君を殺さない。俺み
たいなやつのためにこれからも生きて欲し
い。」
「ごめんなさい、暖さん。僕が笑顔を向けて、
幸せでいて欲しいのは……暖さんだけなんで
す。」
「君と出会って、君と過ごして、初めて死にた
いと思った。今まで何があっても死にたいな
んて思いもしなかったのに、君を殺さなけれ
ば行けない人生を初めて憎んだ。初めて人
を……殺したくないと、思ったんだ。……俺
もだよこの世界で生きて欲しいのは、君だけ
だ。」
「ふふ、僕は幸せ者だなぁ。ごめんね、バイバ
イ。暖さん。」
「っ!!やめろーーーー!!!」
――――――――――――――――
「あのね、俺の瞳が赤いのはきっと暖かさじゃ
ない。…………血の色だよ。今こうして、君
の死体を抱き抱えても涙も出ないんだ。ごめ
んね。ごめんね。」
雨が降っていた。年に1度あるかの大雨らしい。もしかしたら、暖さんの涙は雨と一緒に流れ落ちてしまったのかもしれない。僕の死体を抱えながら嗚咽を漏らしている暖さんに僕は触れることが出来なかった。僕は、血も涙もある暖かな殺人鬼を愛しているらしい。
―――なんで、今さら気付くのかな…――
大雨の中、暖さんは立ち上がり、こう呟いた。「愛してるよ、雪くん。」
僕の聞き間違いかもしれない。だって、僕は死んでしまった。今さら、愛を伝えたって僕は暖さんに触れることが出来ない。大雨に掻き消されてすぐに声は消えてしまった、だから、これは僕が都合よく変換してるだけだ。
「僕も、愛しています。暖さん。」
僕はもう聞こえない愛にそう、返事をした。