城崎 愛羅編_挑戦
コンコンコン…
「愛羅!?開けなさい!?」
何度も叩かれ、廊下に響いている扉のノック音。耳から脳まで届く、ガンガンとうるさいノイズのような親の声。
しばらくすると、鳴りやんだ。
写真フォルダを開き、いつもと同じ指の動きで同じ写真を開く。
自分の愛人と、自分の写真だった。
愛羅「…ゆーちゃんッ…」
かつての恋人だった、ゆーちゃんこと結愛とやったゲームを漁り散らかし、ボタボタと目から水滴を垂らす。
結愛「付き合いたい…?」
私は友達のゆーちゃんが好きだった。
女同士だし、気持ち悪いってわかっていても、自分の恋心をうまく塗り潰せなくて。
愛羅「っ…やっぱり気持ち悪いよね…こんな私なんかがゆーちゃんと…」
恥ずかしい。
もう友達でいれないんだろうな、と思うとたくさん涙がスカートに落ちていく。
走って逃げ出そうとすると
結愛「好き、だよ…//」
愛羅「っぇ…?//」
結愛「好きなんだってばっ!//」
秘密で付き合ってた。
秘密だってことで、どきどきするデートもさらにどきどきした。
秘密だったのに
「ねぇ、城崎さんと新宮さんってつきあってるんだってぇ笑」
「えぇ、女同士でぇ?きもぉ笑」
広がってた、いつの間にか。
この日から、私たちの幸せは少しずつ音を立てて崩されていった。
机への落書き、暴言、暴力。
苦しくても抗えずにしてる、自分の愛人。
何も止められなかった、情けなくて馬鹿な私。
距離も少しずつ開いていった。
_そしてゆーちゃんは自殺した。
学校の屋上で、たくさんの生徒に囃し立てられ、我慢できずに飛び降りた、とお母さんは私に話した。
何もできなかった、その罪悪感と自分が止めなかったせいだという責任感で押し潰されそうだった。
息がうまく吸えない、ギギギという聞きなれたカッターの音。
ザシュッザシュッ
情けない自分を痛めつけてゆーちゃんと同じように苦しみを味わう。
もっと辛かっただろう、馬鹿な私にはわからないくらいの。
愛羅「なんでぇッなんでなんでなんでッ!」
「私のッ…屑ッ!!!」
いつものようにネットに入り浸っていると、1つの投稿が目に止まった。
愛羅「愛の花…」
カチカチッ
投稿をクリックすると、どうやら愛人を作り出すという花があるらしい。
こんな夢みたいな馬鹿げた話、誰が信じるのであろうか?
前までならそう思ったかもしれない。
でも私には、愛人がいないと生けられない私にはそれに頼るしかなかった。
藁にもすがるような思いでネットを漁る。
愛羅「○○峠、リアリナって花に似てるんだ…赤黒い…」
一通り情報をまとめていると、とあるDMが届いた。どうやら匿名のようだ。
[意外と愛の花を求める人は多いみたいですね]
なんで私が調べてるのがわかるのか?
その疑問より真っ先に出てきたのは、どうすれば相手に打ち勝てるか。
それは
愛羅「56す…って…そんな…こと…」
カッターを床に投げつける。
ガタガタと自分の体は小動物のように震えていた。
冷や汗が服に染み込んで気持ち悪い。
愛羅「でもッ…」
ベトベトと汗をかいた手でもう一度カッターを握り直す。
いつも諦めがちな私、でも今回ばかりは諦められない。
あの幸せを、愛人を、ゆーちゃんを。
取り戻すため、カッターをしっかりと握り、外に踏み出した。
愛羅「今日くらいは、無理させてねッ…ゆーちゃん」
next⇒星南VS愛羅 星南編
コメント
27件
普通に上手いし , 投稿頻度が高い…シンプルにすごすぎ…
ノベルの書き方上手すぎん?読んでてビビるんやが…
VS!56し合いかな?