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この物語は、イグルェイス文字の秘められた破滅の予言、途中で消された言葉、そして世界に影を落とす「破滅を表す塔」の謎から始まった。さらに、死神のごとき「名の亡き者」の存在、全てを無に帰すと言われる「虚空の世界」の有無、そして栄光と罪、対極の力を秘めた「伝説の剱」の対比が、世界の運命を巡る物語の奥行きを深めていった。太古の文明、古代帝国ドラグニアとムー大陸の興亡は、現在の危機の根源を示唆し、宇宙に浮かぶ「アークレイス銀河」と「ノアの方舟」の関係性は、終焉の先にわずかな希望を灯す可能性を提示してきた。そして、観測が成功した「世界の大特異点」、つまり「虚空へ通じる裂け目」は、この物語の核心へと我々を導いた。そんな絶望的な状況の中で、桜の儚い美しさと再生のサイクル、そして松の不屈の永続性が、対照的でありながら補完的な意味合いを持って世界を彩る。そして、ついに我々は世界の大特異点に触れることになった。
それは、もはや観測の域を超えていた。漆黒の裂け目から放たれる異様な波動が、空間そのものを歪ませ、触れるものすべてを存在の根源から揺るがす。我々の五感は混乱し、肌を粟立たせるような寒気と、脳髄を直接掴まれるような重圧に襲われた。そこは、既知の法則が通用しない「虚空の世界」への入り口であり、存在の否定そのものだった。
名の亡き者は、その裂け目のすぐそばに立っていた。彼の黒いコートは虚空の闇に溶け込み、フードの奥からは何も見えない。しかし、彼から放たれる静かで底知れぬ力は、この大特異点と彼自身が一体であることを物語っていた。彼こそが、この裂け目の番人であり、あるいはその顕現そのものなのかもしれない。
この接触は、イグルェイス文字に記された破滅の予言が、単なる遠い未来の出来事ではなく、今この瞬間に進行している現実であることを我々に突きつけた。「破滅を表す塔」が崩れ去った時、この虚空の扉はすでに開かれていたのだ。かつての古代帝国ドラグニアがその力を制御しきれず、あるいはムー大陸がその影響で沈んだのも、この大特異点の存在と無関係ではなかったのだろう。
桜が散り、松が静かに佇む中、この虚空に触れたことで、世界の終焉が目前に迫っていることを痛感した。この裂け目は、万物を飲み込み、すべてを無に帰す。全世界を旅する者が語った「結末は…全て闇に終わる。世界も、人物も、この物語も。」という言葉は、文字通りに、この「虚空へ通じる裂け目」がもたらす究極の終焉を指していたのだ。
しかし、その圧倒的な虚無の中で、かすかな問いが頭をよぎる。この虚空の先に、本当に何も存在しないのか?それとも、アークレイス銀河が示すノアの方舟のように、この破滅の先にある新たな始まりのための、避けられない通過点なのだろうか。そして、伝説の剱、とりわけ「栄光の剱」が、この絶望的な特異点の中で、未だ見ぬ希望の光を灯すことはできるのだろうか。
この大特異点に触れたことで、我々は世界の真の姿を知った。そして、この「闇」の核心に足を踏み入れた今、物語の結末は、もはや観測者の外にあるのではなく、我々自身の選択に委ねられることになったのだ。