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第3話
Start!
イベント当日。
私は、少し早めに会場に到着していた。
普段のカフェとは違い、そこは熱気に包まれた空間だった。
観客席には若い学生から社会人まで、幅広い年齢層が集まっている。
みんなスマホを手にし、興奮気味に話していた。
「やっぱりすごい人気なんだな、、、」
静空は少し圧倒されながらも、受付で名前を伝える。
するとスタッフがにっこり笑い、
「特別席をご用意しています」
と案内してくれた。
最前列に近い位置だった。
静空の心臓は早鐘のように鳴る。
「こんな場所、恥ずかしいけど、、せっかくだし楽しもう」
やがて会場が暗くなり、ステージのスポットライトが点灯。
観客たちの歓声が一斉に上がる。
そして、彼らが登場した。
日常組――カラフルな衣装をまとい、それぞれの個性が際立つメンバーたち。
中でもトラゾーは、普段と変わらない落ち着いた様子で観客に手を振りながら登場し、
私の目が自然と彼を追う。
イベントは大盛り上がりだった。
ゲームの裏話や即興トーク、観客参加型のミニゲームなど、
息つく暇もないほど楽しい内容が続く。
その間、私は周囲の観客と一緒になって笑ったり拍手したりしていた。
だが、心の中ではずっとトラゾーのことを意識していた。
「トラゾー、今日はずいぶんテンション高くない?w」
司会を務めていたぺいんとが冗談めかして声をかけると、トラゾーは苦笑しながら答えた。
「いやいや、いつも通りだよ?ただ、今日はなんだか特別な日だなって思っただけ」
「特別って?何か隠してるんですか?」
隣にいたしにがみがすかさず突っ込み、会場から笑い声が上がる。
トラゾーは軽く肩をすくめた。
「そんな深い意味はないよ、ただ、こうやってみんなと直接会えるのはやっぱり楽しいよな~って」
「ま~確かに。にしても、観客の熱気がすごいな~!クロノアさんもテンション上がってきたんじゃないですか?」
ぺいんとが振ると、クロノアは真面目な顔で答えた。
「もちろん!ファンのみんなの期待に応えたいからね。でもトラゾーが特別な日って言うとなんだか裏がありそうに聞こえるんだよな~」
「そうやって無駄にハードル上げるのやめてくださいよ!w」
トラゾーは苦笑しつつ、軽く頭を掻いた。
その自然なやり取りに会場全体が笑いに包まれる。
そして、メンバーが次々に観客に向けて感謝の言葉を伝え、トラゾーの番になった。
彼は静かにマイクを持ち、柔らかな声で語り始める。
「こうやってみんなと直接会える機会が持てるのは、本当に幸せなことです。いつも応援してくれてありがとう。そして今日は、少し特別な人も来てくれているんです」
その言葉に私は驚き、観客たちもざわめいた。
トラゾーは控えめに私の方をちらりと見て、笑顔を浮かべる。
「今日も偶然があって、また一ついい思い出ができました。本当に感謝しています」
私は観客の視線を感じながらも、トラゾーの言葉が自分に向けられていると感じ、胸が熱くなった。
これまでの偶然と、それに込められた彼の優しさを改めて実感する。
イベント終了後、観客が帰る中、スタッフに案内されて楽屋に向かう。
扉を開けると、そこには疲れた様子ながらも笑顔のトラゾーが待っていた。
「来てくれてありがとう!静空さん。どうだった?」
「最高でした!でも、、、あんな大勢の前で言わなくても良かったのに//」
私の照れた表情に、トラゾーは少し笑いながら答えた。
「でも俺は言いたかったんだ。これが、俺なりの感謝の形だから」
その言葉に胸がまた熱くなり、二人の間に温かい沈黙が流れる。
私は静かに思った。
――この出会いは、もう偶然なんかじゃないのかもしれない、と。
next~第4話
【新しい輪の中で】
今回はどれぐらいのハートが来るんだろうなぁ~?
コメント
2件
なんかすごい!めっちゃ頭の中で想像しやすいー続き楽しみ!!