テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
桜春遥朔🌸
52
来華
457
ポンデリング
289
## 第47話:『大空を切り裂く盾』
「――チッ、熱源が目の前まで来てやがる! 全機、出撃だ!!」
ゼロの叫びがゼストの格納庫に響き渡ると同時に、新生した『ウイングエックス・ディバイダー』の巨体が、カタパルトのレールへと押し出された。
背部にマウントされた、大型コンデンサ内蔵の複合兵装「マルチプル・ディバイダー」。その漆黒の強固なフレームが、ドックの青白い照明を鈍く撥ね返している。
外は、リメイン・ヴィレッジへと続く、吹き吹きすさぶ砂嵐の荒野だった。
カタパルトから射出されたウイングエックスは、地表を滑るようにして着地し、右手に携えたビームライフルを構える。その左右には、セレスのヴィヴァーチェ、そしてカイルのバスターヴァイスが即座に陣形を展開した。損傷の激しいジュードのシャドウエッジは、艦の防衛のためゼストの甲板上に残り、実体砲を構えている。
上空からゆっくりと降下してきたのは、あのエメラルドグリーンの鏡面塗装を施された美しき海賊機――アルカディアだった。
霧の向こうで見た時は一瞬、ヴィヴァーチェのような一撃離脱を得意とする高機動型の機体かと思われた。しかし、間近で対峙したゼロの目は、その本質を即座に見抜いていた。
「(……違え。あいつ、ただ速いだけの引き籠もりじゃねえ。あの脚部のダンパーの太さ、それに胸部装甲の厚み……あいつは、無駄な動きを一切排除した『実戦型』の化け物だ!)」
そう、アルカディアは軽量化による高速戦闘機ではない。一歩一歩の踏み込みが大地を揺らすほどに重く、それでいて一切の無駄がない、極めて実戦的かつ洗練された堅牢な戦闘用モビルスーツだった。
『――呪われたガンダム、新しい翼を背負ったか。だが、その程度の小細工で、私のアルカディアを突破できると思わないことだ』
回線越しに響く、冷徹で凛とした若者の声。
アルカディアは背部の推進バインダーを激しく明滅させると、驚異的なトルクで地面を蹴り、ウイングエックスへと直線的に突進してきた。その手には、禍々しい刺突状のビーム・ランサーが握られている。
「速い……! だけど、直線的なら!!」
セレスのヴィヴァーチェが横から割り込み、巨大なビーム・サイズをアルカディアの首元へと振り下ろした。
キィィィィン!!
だが、アルカディアはそれを避けることすらしない。左腕の強固な追加装甲でヴィヴァーチェの光の刃を真っ向から受け止めると、その凄まじいパワーで逆にセレスの機体を押し返したのだ。
「きゃああっ!? なんてパワーなの……!」
「セレス、下がれ! おっさん、援護を!」
「任せろ、ゼロ!」
後方からカイルのバスターヴァイスが、大型実弾砲を連射する。正確にアルカディアの関節部を狙った砲撃。しかし、アルカディアは最小限のステップだけで弾道を躱し、なおもその前進の威力を落とさない。ただの「速度」ではない、パイロットの超一流の空間把握能力が生み出す、恐るべき無駄のない戦闘機動。
『まずは、お前からだ……ゼロ!』
アルカディアのビーム・ランサーが、ウイングエックスのコクピットを目がけて真っ直ぐに突き出される。逃げ切れない。そう判断した瞬間、ウイングエックスのコクピット内で、自動的に『ゼロ・システム』が起動した。
キィィィン――。
脳内に流れ込んでくる、数瞬先の未来の光景。アルカディアが突いてくる軌道、そしてその後に繰り出されるであろう追撃の予測。
以前なら、ここで脳を焼き切るような凄まじい精神的ノイズが走り、ゼロの意識を狂わせていたはずだった。しかし、今回は違った。
「(……ノイズが、来ねえ……! いや、頭の奥が少し熱い程度で、敵の動きがはっきりと見える!)」
コックピットの奥で、ガドルフが組み込んだ『ゼロ・システム緩和装置』が激しく明滅し、過剰な負荷を背中のマルチリンク・コンデンサへと逃がしていた。クリアな視界の中、ゼロは叫んだ。
「舐めるなぉぁぁぁ!!」
ゼロは右手のビームライフルを放り投げると、背部にマウントされていたディバイダーを左腕へと引き抜いた。ガシャイン!という重厚なロック音と共に、巨大な漆黒の「盾」がウイングエックスの前面を覆う。
ドガァァァン!!
アルカディアのランサーと、ウイングエックスのディバイダーが真っ向から激突し、凄まじい衝撃波が荒野の砂煙を吹き飛ばした。サテライトシステムを失ったウイングエックスだが、この盾の防御力は旧大戦の戦略兵器の装甲にも匹敵する。アルカディアの必殺の突きを、ディバイダーは完全にシャットアウトしてみせた。
『何……!? 我がアルカディアの推力を、完全に受け止めたというのか!』
「ジジイが作ってくれたこの盾はなぁ、ただの飾りじゃねえんだよ!!」
ゼロは即座に右腕のホルダーからビームサーベルを抜き放ち、エメラルドグリーンの装甲へと斬りつけた。プラズマの刃がアルカディアの胸元を掠め、激しい火花が散る。
『くっ……面白い。サテライトの天の光を失いながら、これほどの力を発揮するとはな。だが、私の執念はお前たちのそれよりも重い!』
アルカディアは一度後方へ飛び退くと、背部のバインダーを横一線に展開し、機体周囲のエネルギーを高密度で変調させ始めた。実戦的な重装甲でありながら、その挙動にはどこか神秘的な美しさが漂っている。
「ゼロ、気をつけろ! 奴のエネルギー出力が跳ね上がっているわ!」
セレスのヴィヴァーチェが再び間合いを詰め、カイルの砲撃が再び荒野を震わせる。
新生したウイングエックス・ディバイダーと、ゼロの過去を知る謎の美しき海賊機アルカディア。
リメイン・ヴィレッジへと続く荒野の真ん中で、両者の意地と執念が激しくぶつかり合う、真の激闘の幕が上がった。
**次回予告**
実戦型モビルスーツ『アルカディア』の隙のない波状攻撃に、次第に追い詰められていくゼストのガンダムたち。
仲間たちの危機を前に、ゼロは緩和装置の『限界(リミッター)』を突破する決意を固める!
「脳みそが焼き切れようが関係ねえ! 今はあいつを止めるのが、俺の役目だ!!」
限界を超えて駆動するゼロ・システムが、ゼロに見せる勝利の1フレームとは!?
次回、『美しき略奪者』
**「俺の新しいハモニカ砲で、その綺麗な装甲をブチ抜いてやるよ!!」**
コメント
1件
うおおおおっ!!第47話、めっちゃ熱かった……! 新生ウイングエックス・ディバイダー、かっこよすぎるだろ。 盾でアルカディアのランサー受け止めたシーン、思わず声出たわ。 しかもゼロ・システムのノイズが緩和されてて、成長をちゃんと描写してるところにグッときた。 「実戦型の化け物」って言われてるアルカディアも、ただの強敵じゃなくて存在感ヤバいし。 次回、リミッター外すってマジか……脳焼き切れんなよゼロ!!続き早く読みてえ🔥