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図書室の片隅、窓から差し込む午後の光が、本棚の隙間に埃のダンスを躍らせている。
もふは膝の上に分厚い参考書を広げ、淡々とペンを走らせていた。
その隣で、どぬくは突っ伏して、規則正しい寝息を立てている。
「……どぬ、風邪引くよ」
*もふが声をかけても、どぬくは*「んぅ……」と小さく唸るだけで、白い尻尾を力なくパタパタと揺らした。
普段ならそのまま放置して勉強に戻るところだが、今日はどうにも集中できない。
視線の先に、どぬくの白く細い首筋が見えているからだ。
(……なんで、無防備すぎるんだよ)
もふはペンを置いた。 どぬくはいつもそうだ。
誰に対しても等身大で、優しくて、そして自分に対してだけは、どこか特別に距離が近い。
それが「親友」としての甘えなのか、それとも別の意味なのか。
論理的に答えを出そうとしても、どぬくの行動はいつももふの計算式を軽々と飛び越えていく。
もふは衝動に駆られ、そっと手を伸ばした。 どぬくの柔らかな白い髪に触れる。
雪のような手触り。そのまま頬を撫でようとした時、どぬくの瞼がゆっくりと持ち上がった。
「……あ、もふくん」
寝起きの掠れた声。どぬくは潤んだ瞳でじっともふを見つめると、避けるどころか、もふの手のひらに自分の頬を擦り寄せた。
「もふくんの手、ひんやりしてて気持ちいい……」
「……っ、どぬ、起きてるなら離して」
「やだ。もふくん、さっき僕のこと変な顔で見てたでしょ」
どぬくがいたずらっぽく目を細める。
その瞳には、もふが隠していたはずの独占欲がはっきりと映り込んでいた。
もふの顔が、計算外の熱を帯びる。
「変な顔なんてしてない。……ただ、隙だらけだなって思ってただけだ」
「ふーん。じゃあ、もっと隙見せたら、もふくんどうするの?」
どぬくが上目遣いに、もふのシャツの袖をきゅっと掴んだ。
いつもふわふわしているはずの彼から放たれる、確信犯的な一言。
もふは観念したように短いため息をつき、眼鏡のブリッジを押し上げた。
「……後悔しても知らないからね」
もふがどぬくの肩を抱き寄せ、その距離をゼロにする。
静かな図書室に、二人の重なる鼓動の音だけが、やけに大きく響いていた。