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君は不思議な子。
どうして?
いつも屋上にいるから?
いつも肌を隠しているから?
いつも絆創膏を貼っているから?
いつもふわふわしているから?
それともーー…
「鈴木?」
うつらうつらとしていた意識がすっと引き戻される。
「あ…ごめん。」
「大丈夫。眠いよねぇ、今日あったかいし。」
そう言って佐藤は思いっきり伸びをして、屋上の床に寝転んだ。
それに合わせて俺もごろんと背中を床にくっつける。
「…うわ、あそこの雲真っ黒。」
「ホントだ、この後雨降るのかなぁ…。」
午後は音楽室で過ごすかなぁ、と君は呟いて、雲を映していた目が閉じられる。
雨が降るかもなんて話してたのに、今から寝ると言うのだろうか。
そんなところも佐藤らしい。
暫く何も話さずにいると、隣から静かに寝息が聴こえてくる。
確かに、今は程よく太陽がでていて心地良い。
ふと、手のひらに温もりが触れた。
逃さないようぎゅっと握った。
音楽室、窓越しに外の土砂降りの音が曇り気味に漏れている。
「まさかここまで降るとは…」
椅子に座っている俺に、向かいのピアノチェアに腰掛けた佐藤は呟いた。
本当、寝ているときに降ってくるとは予想外だった。
小雨の時点で気づけたので幸い濡れてはいないが、屋上からさほど距離もない音楽室についたらこれだ。
あと数分遅かったらふたりともびしょ濡れだっただろう。
突如後ろから、ぽん、とピアノの音が聴こえてくる。
「そのピアノ、何だっけ。調律が狂ってるんだよねそれ。」
「そう。合唱とかがあるから使わないんだろうけど、弾く分には困んない。」
「ふーん。」
説明を証明するかのように、がたがたと音をたてながら錆びたペダルを踏んだ。
ざぁざぁと窓越しにくぐもって聴こえてくる雨音が不思議と心地よくて、さっきの屋上での眠気がまた顔を出してくる。
椅子の背もたれに向かい合っていた身体を平行にして、目の前の机に突っ伏す。
水中に沈むように、滞りなく意識が夢の中へ落ちていく。
ぼんやりしてきた頭が、隣からかたん、と物音を拾って、閉じかけていた目を細目に開く。
次は身体に重みがかかり、そこから温もりが広がってくる。
佐藤が寄りかかってきたのだろう、机に突っ伏したまま少しだけ顔を彼の方へ向ける。
彼も夢の中へ誘い込まれたのか、くっついた体から息を深く吸っては吐いているのがわかる。
そのまま手を伸ばして、気まぐれに頭を撫でる。
指に絡んだ髪の毛は、思ったよりもさらさらしていた。
そろそろ重くなってきた瞼に伴って、伸ばした腕の力も抜けていく。
心地良い雨音も相まって、意識を夢に預けることにした。
きっと、こんな俺に構ってくれるから。
君は不思議な子。