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花梨
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【驚くほど】実家が酷かったからか、名前は自分でもわかるほどシャイになった。
アメリカには義務教育を親に任せていい法律だったから、名前のトイレは湖、お風呂も湖……焚き火の話題といえばセックス。
森林で立ったままの両親のそれを見た瞬間、わたしには絶対的に無理だと思ったし決めた。そう、だからわたしの両親は今どこにいるか。ジプシーなのだ。ちなみに曽祖父の時代から。
「名前」
と呼ばれるだけで恥ずかしい。と名前は髪で顔を隠しながらそっと伺うように赤井を見る。
「…取って食いはせんよ」
たぶん。と付け加えられ名前は真っ赤になる。
書類に人差し指が置かれ、誤字だった。名前はこくりと頷いてパソコンを開く。
「…」
しばらくそれを上から見ていた赤井に、また名前は顔を上げる。
「あ…な、に」
「ーーいや」
ぷっ、とジェームズが笑ったのを赤井は嫌そうに見る。
振り向いたらにやにやするジョディがいて最悪だった。
「赤井さんお茶出来ました」
キャメルがエプロンしたままテーブルに出していく。
「はい名前…」
ちょん、と手がキャメルと一瞬ふれあっただけで名前は爆発に巻き込まれたみたいにソファの端まで避けた。
「は、あああ!」
「あ!すみません!名前!あ」
ちら、と赤井のほうも見られ赤井は嫌になって目をぐるんとさせた。
「だ、大丈夫…ごめんねわたしーー」
「シャイだから」
とジョディが空いた椅子にどっと座り書類を取る。
その真ん中に赤井もどっと座ったので左右の女は揺れた。
未だにくすくすしているジェームズに、赤井は目を細めた。
「ああ!」
名前はがばっと立ち上がってリビングを出た。
「どうしろってんだ」
名前が消えた瞬間に赤井は口を出す。
「待つしかないじゃないの」
ジョディがカップを傾ける。
「隣に座っただけであれだぞ、どうなる?」
「…爆発しちゃうんじゃ」
キャメルが大真面目に困り出す。
「全部脱がさなければ?」
「…変態だと思われても困るし脱がしたい」
ジョディが吹き出す。
「素直に言えば?セックスしたいって」
一斉にジョディにヤジが飛ぶ。
「絶対だめですよ」
「言った瞬間月まで走って逃げそうだな…」
「というか赤井さん、どこまでスキンシップとれてるんです?」
「…見つめあうどまりだ」
「それじゃ無茶よ」
ジョディは無理、と手をやる。名前が帰ってきた。
「ねぇ名前…」
とジョディは名前を見つめる。ハンカチを持ったまま名前はだんだん手をおろした。
「…」
しばらくそれをじっと見ていた全員に気付き、名前は急に真っ赤になって飛び上がる。
「や…!見ないでよ…!なにっ!?やだ…」
ばっと顔を覆う。はー、と赤井はため息をついた。
「なに!?なにか間違ってた!?み、見えないから見ないで…!」
「手をはずせ」
うん。と全員も赤井に同情のまなざしを向けた。
彼女がシャイなのは【逆効果】だったからだ。食卓の話題がセックスでは、オープンマインドどころか恥ずかしくなって当然だ。
当たり前のように両親のセックスも見てきたんだろうし、とキッチンで鍋を混ぜる名前をばれないように見る。
「あ。もういいかな?」
名前はにっこりして小皿にビーフシチューの汁を乗せる。
「…うん。美味しい」
「寄越してみろ」
ぎくっ、と名前はまた壁にはりつく。
手をだし続ける赤井に、名前は新しい皿によそり出した。
「…」
「美味しい…?」
と見上げられ、赤井は頷く。
「名前」
また名前はぴくと反応する。
「素直に聞くが、俺が毎晩キッチンで料理して食べて片付けて眠って、満足する男だと思ってないだろうな」
名前は段々赤くなってうつむいていく。
無理か、その質問すら。と赤井は火を止める。
「皿」
「あ…うん……」
なんだと思ってるんだ?俺を。と尋ねたくなってしまう。
手を伸ばすだけでびくびくし、こちらだって隣で無防備に寝ていれば手をだしたくなるし、そもそも付き合ってるか?
赤井は意味不明になってきて首をかしげた。
寝るときも「電気消して」「あっち向いて」「…もうちょっとあっち」が決まり文句。
可哀想だな、と自分で思ってしまう。
それでも嫌われたくないし、大事にしてはいるつもりだが……。
俺も男だからな、と口に出そうになる。
「あ、あの…」
食卓につくと、名前が珍しく話しかけてきた。
「こ、今夜…あ、あの…その…」
どんどん俯いていく名前に赤井は首を振る。
「無理するな」
「違うの!」
赤井はびっくりしてただ名前を見る。
いつもの困った笑み。染まる頬。
「…」
しん、となる時間にずる…とシチューをすする。
「だ!」
ぎゅっ、と名前は目を閉じる。
「抱き締めて…ね、むってもい、い…?」
「は?」
カラン、とスプーンを落とす。
「…抱き締めてくれならまだしも」
名前は首を激しく振る。
「黙っててごめんなさい…!実はわたし…っわたし抱き枕がないとうまく眠れないのっ…ごめんなさい…!」
わっ、となる名前にたまらず赤井は頭がフリーズしたが首を振った。
「構わんが…」
まさかのさわる方は平気なのかと思い、それから赤井もちょっと赤くなってしまう。
なんだその……可愛いおねだりは…。
だが待てよ。と赤井はまたすすりながら思う。
からだが密着したら……と唸り声が出た。
「あの…わかってる……でも…もうちょっとだけ…」
「いい」
とは言ったものの、まさか初めてじゃないだろうな…とまた唸るしかなかった。
「…ありがと…シュウ…」
蚊の鳴くような声に、赤井は少し微笑む名前に同じようにした。
「よいしょ…」
パタン、と暗い部屋に入ってくるシャツ1枚の名前を見ないようにして、赤井はとっとと後ろを向いて横になった。以前見ていたらしゃがんで動かなくなったから。
「…」
ギシ、と同じ香りがベッドに入ってくる。
しばらくしたら、背中から腹に手が回ってきた。
「かたい…」
「ふっ」
枕じゃないから我慢しろ、と赤井。
「うん…いい匂いだね、シュウ…」
「…」
すーっ、と匂いをかいだとき、背中にくっつく胸が上下したのがわかり赤井はとっとと目を閉じようとした。
「…名前」
「ん」
「あまり煽らないでくれ」
「あおる…?」
眠たいのか名前は珍しく恥ずかしがらない。
肩越しに振り向く。幸せそうに微笑む伏せた睫毛に、窓枠が月明かりで映っていた。
「は」
ぱっ!と名前が目を開けたのですぐ赤井はまた向き直る。
「…あ」
「寝ろ」
自分にも言い聞かせていた。ぎゅ、とまた手に力がこもる。
…震えてる?
「おい。無理するなとーー」
「違うの…あ、のね…」
背中に額がくっつく。
「…好き…」
「!」
「好きなの…で、でもはずか、恥ずかしくて…」
名前は一気にいう。
「…人って完璧だと聖書にはあるのに、パパとママの裸もそうは見えなかった…だから……わたしも…そうだと思ってる…から……」
「その黒い本は絵本だ」
赤井は向き直した。名前は息を止めたように見えた。
す、と頬に手をやる。びくりとしたが、名前の瞳はふわりと力を抜いた。
「…俺がお前に、名前…ふれたらどうなる?」
「シュウ…」
ふわ、と髪を撫でる。
「それが本物の美しさだ」
「…」
名前は1度息をつくと、目を閉じて顔を上げた。
そのままふたり抱き合って口付ける。
ゆっくりだ、ゆっくり……。
ちゅ、ちゅ…と啄むキスを繰り返す間に囁く。
「あ…」
シャツのボタンを外す。名前はぎゅ、と赤井にしがみついた。
「…どこへ行けばいい、名前」
「え…」
名前は赤井を見上げるがすぐ苦しそうな顔をする。
「あっ」
胸を揉まれたまま、またキスされる。
す。と赤井は胸元に名前を寄せる。
心臓の音が……とてつもない。
名前は困ったようにまた顔を上げる。
「どこへ行けばいい…」
「んっ」
名前の首筋の匂いをかぎ、赤井は息をつく。
「少しずつ…お前に近づくのが…」
「シュウ」
たまらなくいとおしいんだーー…
「本当は」
赤井は名前の上になる。
「んんっ…」
俺を刻み付けてやりたい。考えただけでからだじゅうが脈打つ。
その隠されたすべての肌に唇をつけて味わいたいーー
我を忘れるお前が見たい。叫び声をあげさせて髪を振り乱させたい……。
「…ん」
鳥肌がたっている名前に赤井は気づく。
「寒いか」
「ちが…」
はっ、と赤井は目を開く。まさか…
「違うの違うの!怖くないよ…でも、でもっ…」
名前はぎゅっと赤井の頭を胸元に引き寄せる。
同じように早鐘を打つ音に、赤井は名前を見つめた。
「…連れてって」
「!」
名前は赤井にしがみついた。
「お、ねがい…わたしもどこに行けばいいの…?」
「名前」
磁石みたいに唇が張り付いた。耳元で赤井は囁く。
「…許してくれ…」
繊細なきみには少しーー…でももう止められない。
「好きだ」
「シューー」
「名前…」
月が出てきて名前ははっとしたが、まっすぐ赤井を見つめた。
「ああっ」
「いいか?」
片方を口に含み、片方をくりくりと動かす。あまりに柔らかくて赤井はちゅるちゅると夢中になって吸い付いた。
「あ、あっ…あ」
「何がいいか教えろ…わからないだろ」
名前はぎゅっと目をつむる。
「あ、どっちもして…どっちもくりくりして…あああっ」
枕を握りしめてのけぞる姿にはあっ、と赤井は息をつく。
そうーーそうやっていいことばかりしてやるからもっと……
「あああっ、ん、ああ…」
「下は」
「えっ、だ、め!」
「…」
よく見たら左右に紐がついていて、一気に赤井は引っ張ってほどいた。
恥ずかしいとか言っておいてこんなもんしてやがったのか。
「はあっ…」
「だめだよなめたら…」
「なんでだ」
ちら、と名前を見る。赤くなっているのがわかる。
「あ…生理来るから…味が…」
「いつ」
「あ、あしたかあさって…だ、だからなかに出して…そう教わったから…」
赤井はふっと笑った。それは黒い絵本じゃないだろ、と。
「だーー!」
頭を押す名前のそこへ舌を這わす。
「ううっ、ん、んっ…」
「まだわからないか」
赤井は膝を持った。名前は首を振る。
「いやあっ…いいの、やめないで…っふああ!」
つ、と舌先を離せば糸が引いた。ゆっくり中指を飲み込ませる。
くいと曲げると、溢れたそれが、シーツを濡らした。名前は手首をおさえてくる。
「シュ…もうっ…が、我慢できな…」
かたかた震える名前に、赤井は迷った。いかせてしまおうかどうか。
だが脳裏で自分のでひっくりかえっている名前を想像した瞬間、言われたとおりにした。
「もっと…」
「シュウ」
「もっと求めてくれ…」
「ああっ!」
ふたりはきつく抱き合ったままお互いを受け入れた。
もっと乱れてーーもっとみだらに見せて……。
「んやあっ!」
のけぞる名前の腰を抱き、思い切り揺らす。
「っく…締まりすぎて…っくるしーー」
「も、もっと!」
「!」
もっと夢中になってーーシュウ…!
「ふあああああっ」
「馬鹿やろ…っーー」
優しく溶かして差し上げるはずだったのに、名前は叫び、のけぞるほうを望んだ。
いいことばかりを……。
「ん…」
朝日に目が覚めると、目の前に赤井がいた。頭を撫で続けている。
名前は微笑んだ。
「おはよう…」
「ん…からだ大丈夫か…」
名前は恥ずかしそうにまた頷く。1度枕に顔を埋めてから、ちらと赤井を見てまた埋めた。
「嬉しい…シュウ…ひとつになれた」
「っ」
かあ、と赤井が赤くなるので名前は目をぱちくりする。
「なかにもくれて…嬉しい」
「お前頭大丈夫か…」
「へ」
変わりすぎじゃ?まさか手を出さないから恥ずかしがってたのか?
たぶんそうかと思った瞬間、赤井はまた眠くなってきた。
黒い絵本め、と言えたかわからないが、眠気にやられた赤井の最後の映像は名前の笑顔だった。
コメント
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わあ……読み終えました。すごく繊細で、でもぐっと熱いお話でしたね。冒頭の「名前」と呼ばれるだけで恥ずかしくなるヒロインの設定が、最後の「ひとつになれた」にどう繋がるのか、その流れが本当に丁寧で。赤井さんの「待つしかない」「でももう止められない」っていう葛藤が、彼の優しさと誠実さをしっかり感じさせてくれました。特に「抱き枕」のくだり、あれはもう…胸がぎゅっとなりました。言葉にできない気持ちを、こんなに美しく描けるのは素敵だなあ🤍