コメント
11件
好きにゃん!
神☆
この物語はフィクションです。
実在する団体、及び人物には関係ありません。
【???視点】
「良い子も悪い子もいらっしゃい」
「色付き風船を1つ、貴方に差し上げましょう。」
〘第一話 群青色と少女の願い〙
【遥香視点】
〈早く起きなさぁーい!〉
「んむぅ…」
〈聞いてるのー?遥香ぁ!〉
「うるっさいなぁ…」
仕方ない、起きるか…
「起きてるよぉ!」
〈早く朝ご飯食べないと遅刻するわよ!〉
「やべっ」
やばいやばい、遅刻したら成績が…
急いで支度をしてから、朝ご飯を食べずに家を飛び出す。
「行ってきまぁーす!」
〈言ってらっしゃい〉
やばいやばい
あと5分しか時間ないよ…
「こうなったら…」
全力で走るしかない!
学校
「ゼェゼェ……ぎりセーフ」
そんなことを呟きながら教室のドアを開ける。
ガラガラガラ
「お…おはよう…」
柚紀「お、遥香〜!」
私の名前を呼びながら手をぶんぶん振っているのは柚紀(ゆずき)。
幼稚園の頃から一緒だから、幼馴染、といったところだ。
「朝から元気すぎるでしょ…」
柚紀「そりゃあ遥香と違って毎朝走ってないしー?」
「ん?もっかい言ってみ?」
柚紀「ナンデモナイデス」
由実「なんで柚紀はカタコトなのよ〜w」
由実「それと、遥香。」
「ん?」
由実「もう座んないと先生来るよ」
慌てて時計をみると…ホームルームまであと僅か
「まじかよ」
悠真「頑張れ〜w」
…悠真は後で締めておこう。うん。
考えながら歩いて席につく。
由実「ぎりぎりだね〜」
クラスのお母さんである由実。面倒見がとてもいい。この子はこのクラスで初めての友達。今は親友だけどね。
悠真「遅れた方が面白いのに〜…」
こいつは悠真。悪く言ったらクラスのおふざけ男子。良く言ったらムードメーカーだ。
「悠真、後で覚えてろよ…?」
悠真「……」
あ、黙ったぁ〜!
怖いかなぁ?
悠真「遥香…怖」
先生「ホームルーム始めるぞー」
先生「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
はー…相変わらず話し長え
めんどくさい…
先生「これで終わり。」
先生「次は移動教室だから遅れんなよー」
生徒「はーい!」
分かれ道
「はー!やっと帰れるぅー!」
由実「どんだけ帰るの好きなのよ」
「すごい好き」
由実「そっかぁ」
「じゃーね」
由実「また明日。」
自宅(マンション)
えーっと…今は…6時…
やることないから寝よ…
「おやすみぃ…」
「ん〜…」
「今…は…」
「え…?午前4時…?」
こんな時間帯だと誰も起きてないんだろうなぁ…
外にでよぉ…
自宅(マンション)の外階段
「はぁ〜…寒っ…」
???「おぉ…先客が居ましたか…」
ビクッ
「誰…?」
???「虹屋です」
そう言って彼女は微笑んだ___。
【???視点】
「おぉ…先客が居ましたか…」
朝早くに来たのに先客…
何かあったのでしょうか…?
ビクッ
おや、びっくりさせてしまいましたか…
遥香「誰…?」
「虹屋です」
【遥香視点】
朝早くにマンションに侵入して
“虹屋”なんてものを名乗ってる、綺麗な人。
ふんわりとした淡い緋色の髪。
こちらを振り返って微笑んだ顔は整っていて、瞳は…青みがかかった銀色だった。
綺麗、そんな言葉が1番似合う人。
そんな彼女の手にはまだ膨らませていない青い風船があった。
「質問、いい?」
???「どうぞ。」
「それ、何?」
???「あぁ…これ?」
???「見ての通り風船。私の仕事道具だよ。」
「虹屋って何?」
???「空に色をつけるお店だよ」
「あなたは…誰?」
???「虹屋の、_______といいます」
「名前まで綺麗…。」
____「ありがとうございます」
そう笑った彼女はやはり、綺麗だ。
____「せっかく出会ったので、願いを1つ、叶えますよ。“遥香さん”」
「私の…名前…なんで…?」
____「知らないことはないんですよ」
____「さぁ、願いを。」
「私は…朝に起きれない。」
「これを…どうにかしたい」
こう言ったら彼女はきょとん、とした。
____「そんな簡単なことでいいんですか?」
「うん。」
____「それじゃあ、ちゃーんと見ててくださいね?」
コクリ、と頷く。
すると彼女は手に持っていた風船を膨らませ始めた。
膨らませ終ると金の紐をくくりつけ、紐を手に持った。
すると…
ヒュッっと息を呑む
すると彼女は風船の紐から手を放した。
ふわふわと浮かんでゆく風船。
やがて、風船は空に吸い込まれていった。
…嗚呼、これだけなのか。
少し、がっかりした自分がいた。
___「ここからだよ。」
___「しっかり見てなさいね。」
そう声をかけられて上を見る。
すると___________
風船が吸い込まれた場所。その場所から群青色に変わり始める。
群青色に変わって場所の近くからまた、群青色に染まっていく。
まるで…空に絵の具を垂らしたみたい。
「綺麗…。」
___「気に入って貰えたかな?」
「ぅ…」
感動のせいだろうか?
声がでない。
言葉の代わりに頷くと彼女は笑って
___「それはよかったです!」
と、言った。
___「それじゃあ、もう帰りますね。」
___「仕事も終わりましたし、これで遥香さんの願いも叶うでしょう。」
え?もう帰る?
……嫌だ。私も着いて行きたい。
彼女が空を染めるのを見ていたい。
____「では、また会う日まで。」
彼女はどんどん進んでいく。
私は…
着いて行きたいと言っていいのだろうか…?
きっと、いや、絶対にダメだ。
彼女は私に“特別”と“綺麗”を見せてくれた。
こんなにも願いを叶えてもらったのに、彼女になにかを願うのはおかしい。
だから…
私は…
「ありがとう!!」
彼女の後ろ姿に向かってそう叫ぶ。
すると彼女は驚いたようにこちらを振り返ったが、笑顔で手を振ってくれた。
彼女はどんどん遠下がっていく。
「ありがとう…ありがとう…」
もう、彼女の姿は見えない。
それでも尚、『ありがとう』と呟き続けた。
その後
「んぅ…」
私は朝早くに起きる。
まだ、空の色が変わらない内に。
彼女がくれた“特別”な“綺麗”を見るために。
今日も、
あの空は“特別”で“綺麗”だった。
明日もきっと、
“特別”で“綺麗”なのだろう_______。
〘第一話 群青色と少女の願い:完〙