「ダマッテホシイ 」
君にも黙って欲しい。なんて言うのは、多分怪物のやることのはずだ。それより、三枝が今知りたいのは、なぜ人間が怪物になってしまったかだ。三枝は顔を伏せた。気分が悪い。彼等の顔を見ただけで吐き気がする。恐ろしい、おぞましい、憎らしい、いっそこの手で崖にバーンと……。そこまで嫌っちゃいないんだ。
時計の針が8時20分になってチャイムは鳴った。この時間は本を読む時間だろうに、彼等はまだうるさく鳴き喚いている。ああ帰りたい。
「ネエ、三枝」
話しかけるな。とは言わない。三枝はそう心に決めていた。三枝は人間だからだ。
ああ、帰りたい。