──夜の静寂を破るように、焚き火の炎が揺れていた。
シオン・ヴェルナーは広場でグラスを傾けていた。組織の襲撃を退けた後、楽園の住人たちは勝利に浸り、酒を交わしていた。
しかし、シオンの心は静かだった。
「……このままではいずれ滅びる」
口元に微笑を浮かべながらも、シオンの目は冷静に現状を見据えていた。ならず者たちは強い。
組織の襲撃を退けるだけの力はある。だが、それは一時的なものにすぎない。組織は必ずより強大な戦力を送り込んでくる。
この楽園は、ただの逃げ場ではない──”革命の火種”になりうる。
「……何を考え込んでやがる?」
酒瓶を片手に、カインが隣に座る。
「お前が静かにしてると、逆に不気味なんだが?」
「私が考えごとをするのが、そんなに珍しいか?」シオンはグラスを揺らしながら微笑む。
「普段は飄々としてるくせに、こういう時はやけに真剣になるからな」カインは肩をすくめた。「で? 何を企んでる?」
シオンはグラスを置き、静かに言った。
「ならず者たちを”組織”にする」
カインの表情が険しくなる。「冗談だろ? 俺たちは組織みたいなルールに縛られるのが嫌で、ここにいるんだぞ?」
「わかっているさ。だが、今なら滅びる」シオンは焚き火を見つめる。
「ならず者のまま、無秩序に暴れるだけでは、いずれ統括組織に潰される。だが、”革命軍”としてまとまれば、話は変わる」
「革命軍、ねぇ……」
「統括組織はギフターを管理することで世界を支配している。構造を崩すには、”管理されないギフター”が集い、戦うしかない」
シオンは立ち上がり、周囲のならず者たちを見渡した。
「ここにいる者たちは、組織に背を向けた者ばかりだ。ならば、その意思を貫き通し、”逆者”として一つにまとまる道もある」
カインはしばらく黙っていたが、やがて小さく笑った。
「……お前、ほんとに貴族みたいなヤツだな」
「誉め言葉として受け取っておくよ」
シオンは軽く笑いながら、焚き火の炎を指でなぞるように見つめた。
──この炎が、革命の始まりになる。
統括組織に支配された世界に、新たな火種が生まれようとしていた。
作者からコメント
「はんばああああああああああああああああああぐ」