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こんにちは!主です!
今回はDIO×夢主(家政婦)のお話です!
あと、このキャラと夢主合わせて欲しい、などのリクエストも募集していますのでコメントもお気軽にして言ってください!
それでは、どうぞ!!
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DIO「貴様は……怖くないのか? 私が“化け物”であることを」
その問いかけに、私はただ紅茶の湯気越しに彼を見つめ返した。
夢「……化け物だろうと、今日の紅茶は喜んでくれましたし。なら、それでいいんじゃないですか?」
部屋には、再び静寂が戻った。
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半年前
DIOの屋敷に来たのは、偶然だった。
夜にだけ動くこの屋敷は、街でも“妙な場所”として知られていた。だが、高給であることに目がくらんだ私は、夜間勤務の家政婦としてその門を叩いた。
最初に出迎えたのはエンヤ婆と名乗る老人で、彼女の指導のもと、掃除、洗濯、料理と淡々と業務をこなしていく日々が始まった。
ただひとつだけ、奇妙な“ルール”があった。
『決して主の部屋には近づくな』
だが、それは三日で破られた。
DIO「――貴様か、茶を運んだのは」
振り返ったその男の顔は、恐ろしいほど整っていた。金髪に紅い瞳、夜にしか存在しない不思議な気配。人間離れしている、と思ったのが第一印象だった。
夢「は、はい……。紅茶を、と……」
DIO「ほう、貴様があの、冴えない人間の中でも特に小柄な女か」
いきなりの悪口に思わずむっとしたが、彼は笑っていた。人を弄ぶような、気まぐれな笑みで。
DIO「……気に入った。名は?」
夢「……夢、です」
その夜を境に、私はDIOの食事――というより、紅茶と菓子を用意する役割を与えられた。吸血鬼には人間の食事は不要なのではと思ったが、DIOは笑って言った。
DIO「舌はまだ持っている。贅沢を嗜むぐらいは許されるだろう?」
それから、夜な夜な私はDIOの部屋を訪ねるようになった。
紅茶の温度、香り、味。それについて彼が時折感想を述べるようになり、私もまた、恐れず彼に応えるようになった。
DIO「貴様はおもしろいな。私を恐れず、媚びもしない」
ある夜、彼は私の手を取り、じっと見下ろして言った。
DIO「その小さな体で、私の世話を焼こうというのか? 無謀なことだ」
夢「……誰もが、あなたのように力を求めてるわけじゃありませんから」
DIO「ふふ……強くなりたくはないのか?」
夢「いいえ。でも、私は私のままでいたいです」
ふいに、DIOの紅い瞳が細められた。
まるで、“面白い獲物”を見つけた猫のように。
ある日、私は指を切った。
台所で食器を洗っていた時の些細な傷だ。
血が滴る手を押さえながら廊下を歩いていると、背後からふわりと気配が迫った。
「……血の匂いがする」
DIOだった。
吸血鬼の本能が目を覚ましたのだろう、彼の瞳は普段より深く紅く、熱を帯びていた。
夢「だ、大丈夫です、ただの傷ですから」
DIO「見せてみろ」
私が差し出すより早く、DIOの手が私の手首をとった。
DIO「ん……」
そして、彼はその指先を、ゆっくりと唇へ運んだ。
夢「……っ!」
温かい舌が、絡み、血を舐め取る。痛みはすぐに引き、代わりに妙な痺れのようなものが体を走った。
DIO「吸われはしない。だが、味見くらいはさせてもらうぞ」
彼の声は囁きに近く、艶やかだった。
DIO「……貴様は、やはり特別だ」
その言葉の意味を問うことはできなかった。目の前の男が、怪物であることを、私は初めて骨の髄まで理解したからだ。
けれど――それでも、彼を恐れられなかった。
それから、DIOは私を“自室に呼ぶ”ようになった。
本を読む時も、窓辺で夜風に当たる時も、時には無言でただ私の存在を傍に置くこともあった。
「退屈しのぎだ」と彼は言っていたが、私が風邪を引いた時、いつもは冷たいその手が額に触れた瞬間、私は確信した。
この人は、気に入った“モノ”には、執着するのだと。
ある夜、DIOは言った。
DIO「……この館を出ようなどとは考えるな」
夢「……」
DIO「貴様がここを出たら、私は“追う”ことになる。そして、見つけたら、もう手加減はしない」
その声は脅しにも、哀願にも聞こえた。
夢「どうして、そんなふうに……」
DIO「貴様は、私の安寧だ。血では満たされぬ渇きを、君が和らげてくれる」
紅茶の香りに包まれた部屋で、吸血鬼がそう囁いた。
私はそれに、応えなかった。
けれど――彼のそばから離れることもなかった。
夜の館にて、怪物の心に巣食った“特別な存在”として、私は今日も紅茶を淹れる。
扉の向こうから響くのは、あの低く艶のある声。
吸血鬼の言葉は、甘く、そして逃げ場を与えない。
けれど――それでも私は、茶を差し出す。
逃げられないのなら、せめて、穏やかに。
それが、彼に気に入られた家政婦の運命なのだから…。
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