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それにしても……
どうしてこんなにも美しいんだろうか。
それは、あまりにも完璧な美しさだった。
あらゆる穢れを排除し、浄化しつくした、 まさしく奇跡と呼ぶに相応しいほどの輝き。
だが、同時にそれは……ひどく無機質でもあった。
そこにあるのは無垢ではなく、ただ純粋なまでの無色なのだ。
それはまるで……硝子細工で作られた人形のような。
空っぽでありながら、完全なカタチを保っている。
矛盾を内包しながら、矛盾のない世界。
この世のすべての汚れを拒絶しながら、 それゆえにすべてを拒絶することのできないモノ。
だが、それでも構わないのだ。
たとえそれが偽りであろうとも……
こうして手にすることができるだけで充分だから。
たとえそれが偽りであろうとも……
こうして手にすることができるだけで充分だから。
触れれば壊れてしまいそうな危うさを感じながらも、 オレはその幻想的な美しさに惹かれていた。そこにあるはずの空を映す窓はなく、 ガラスの向こう側に広がる景色は見えない。
だが、透明な壁越しにも感じるのだ。
それは、遥か遠くまで続く青い海だと。
ここはどこなんだ……? なぜここにいる……? 思考はまとまらず、記憶を呼び起こすこともできない。
しかし、不思議と不安はなかった。
ここには誰も来ないし、自分からも動かないからだ。
そして、この場所にいる限り、 外の世界のことを考える必要もない。
ここでは、ただ眠るだけでいいのだから。……ここには、誰もいないわ。
本当にそうなら、どれだけ楽になれるかしらね……。……さあ、どうでしょう? あなたが望むなら、いつでも歓迎しますよ。……わたしたちは、あなたの味方です。
ええ、もちろん。……たとえどんな姿になっても、 私たちだけは最後まで一緒にいます。……あなたが望むかぎり、いつまでも。
あなたが望めば、私はあなたの望む姿になろう。
だが、本当にそれでいいのかい?……それはまた、どうしてだい? わたしが望めば、きっと、あなたも……。
あなたは、自分が思っているよりもずっと強くて、優しい人よ。
だから……お願いね。
わたしがいなくても大丈夫だって、証明してちょうだい。
じゃあね。……さようなら