テラーノベル
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次の日の朝、私は街門の外に出てみた。
街門……と言ってもいくつかあるけど、今回は人が一番多く出入りする南西の街門だ。
「――うわぁ、人がたくさん……ですね」
「そうだねぇ♪」
私の驚く声に、ジェラードは明るく、いつものように答えてくれた。
今日はジェラードと二人きり。最近にしては少し珍しい組み合わせだ。
……それよりも、驚いたのは人の多さである。
確かに話には聞いていた。
ガルーナ村の一部の人もそうだが、やはり『魔女の試練』を越えられない人は多くいるのだ。
しかしそういう人も、こと収穫祭の期間はタダで帰すわけにはいかない。
だから街の外でも、自然発生的に市場のようなものが作られて、結果、ある程度のお祭りも行う流れになっていた。
「……昨日、『魔女の試練』を無くすって話をしたじゃないですか」
「うん」
「でも、もし無くしたら……たくさんの人が、一気に街の中に入って来ますよね……」
「だろうねぇ……」
想像以上の人数に、私はやはり悩んでしまった。
それなりに建物は出来てきたとはいえ、マーメイドサイドはまだまだ発展途上の街だ。
こんなにも大勢が街の中に押し寄せたら、キャパシティオーバーになるのは火を見るより明らかなわけで――
……結果論だけど、『魔女の試練』は良い感じで調整弁になってくれていたんだなぁ……。
「――気軽に無くすのは、かなり危険ですね。
ひとまず収穫祭が終わるまでは現状維持かな……。でも、ガルーナ村のみなさんは招待したいからなぁ……」
「それじゃ、抽選で街の中にご招待する……っていうのはどう?
抽選に当たった人は『魔女の試練』は免除にして――
……ガルーナ村の人は、抽選のときに小細工するということで」
「あ、それは良いかもしれませんね。
ついでにそれ、前夜祭でやると盛り上がるかも」
「ははは♪ アイナちゃんも、いっぱしのイベンターだねぇ♪」
さすがにそろそろ、主催者側にまわるのも慣れてきたからね。
でもそう言われると、やっぱり自信が持ててくるというものだ。
「まぁ、その辺りはポエールさんと相談してみますか。
ただでさえ忙しいとは思いますけど」
「うん、そうしよっか。
それに、別に収穫祭までにやらなきゃいけないってことでもないからね」
「問題が無ければすぐやっても良かったんですけど、さすがにこれでは……」
改めて、私は大勢の人たちを眺めてみた。
『魔女の試練』を無くせば、この街はどれくらいの人口になってしまうのだろうか。
ひとまず水の問題は解決しているけど、他の問題も考えていかなければいけない。
食糧もそうだし、仕事もそうだし、あとはそろそろ――政治的なところも必要になってくる気がする。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「――そういえばジェラードさんって、最近はあちこち飛び回っていませんよね」
街門からポエール商会に向かう途中、私は何となくジェラードに聞いてみた。
以前に比べればジェラードの所在も掴みやすく、連絡もすぐ取れてしまうのだ。
「うん。ちょっとやっていることがあってね」
「やってること?」
ナンパ以外で?
……なんて言うと、話の腰を折ってしまいそうだ。ここは自重しておくことにしよう。
「ふふふ♪ 本当はもう少し秘密にしておきたかったんだけど――
……でも変に話が漏れて、心配されるのも申し訳ないから教えちゃうね♪」
ジェラードはウキウキしながらそう言った。
子供が良い結果のテストを見せたくしているような、そんな印象を受けてしまう。
「良い話、ですか?」
「もちろんさ!
……実は僕ね、裏で秘密組織を作り上げたんだよ!」
「は……?
それ、バラしちゃって良いんですか!?」
……秘密にしない秘密組織。
それはもはや、その存在意義が危ぶまれてしまいそうだ。
「大丈夫だよ! だってアイナちゃんのためなんだから、アイナちゃんには知っておいてもらいたいよ!」
「……そうすると、他の仲間には秘密ですか?」
「んー……。ルーク君とエミリアちゃんには良いかな?
あとはグリゼルダ様も、大丈夫」
私の仲間の中でも、信頼のおける上位3人……って感じかな?
ジェラードとしては、知っている人数を絞りたいというところもありそうだ。
「ふむ……。
分かりました、その認識でいます」
「ありがとう♪
それでね! 僕の専門を活かして、諜報部隊を作っているんだよ!」
「おぉ……!?
ジェラードさんはいろいろと調べ物をしてくれましたけど、あんな感じですか?」
「そそ! 街の規模が大きくなっていけば、情報も増えていくからね。
やっぱり情報は命だから、自分たちで触れるようにしておいた方が良いのさ」
「人を通すごとに、情報って微妙に変わっちゃいますからね……」
「うん、うん。理解が早くて助かるよ。
ま、ルーク君の管轄する自警団の、特殊部隊版って感じかな?」
表のルークに、裏のジェラード。
……なるほど、綺麗に棲み分けが出来てしまっている。
「アイーシャさんの仲間……情報部門のフルヴィオさん。あの人も部下がたくさんいますしね。
……拙者の人も、そうでしたっけ」
「あの辺りを見てね、僕も本格的に組織化をしていかなきゃなって思ったんだ。
ポエール商会も、そういう分野は少し弱いから」
「へぇ……。ポエール商会も、結構しっかりしてると思っていたんですけど」
「情報にも得手不得手があるからさ。商取引に関しては、やっぱりポエール商会は凄いよ?
でも、そこはもう押さえたから」
「え? 押さえた……?」
「うん。ポエール商会の情報部門の担当者をね、ちょっとこう……こっちに引き入れた? って言うか?」
「……それ、スパイ……ですか?」
「そこまで積極的なものじゃなくて、監視的なところっていうか……。
ほら、アイナちゃんとポエール商会はかなり友好的じゃない?
でもさ、例えばポエールさんが代替わりとかしたら、100%安全とは言い切れないでしょ?」
――今は良い。
しかし、その『今』がいつまで続くのかは誰にも分からない。
……ジェラードはいつも私の先を見ていてくれる。本当に、頼もしい仲間だ。
「んー…、分かりました。
何だかジェラードさん、ポエール商会にぐいぐい迫ってますよね。
ほら、例の女性職員さんとか」
前々からジェラードが接触している女性職員さん。
恋も仕事も、ポエール商会に深く食い込むとか――
「あ、ごめん。さっき言った情報部門の担当者って、その子のことなんだけど……」
「そうだったんですか!?」
「ところでアイナちゃんとエミリアちゃんさ、何だか勘違いしてない?
最初から僕、あの子をナンパしてるわけじゃなかったんだよ?」
「そうだったんですか!?」
私の口から、驚きの言葉が2回続いた。
あんなに通っていたのだから、てっきり……ねぇ?
「……まぁ、彼女から探りを入れていったのは事実だけどさ。
それにしても、僕 イコール ナンパ っていうのは酷くないかな!?」
「だって、私がジェラードさんと初めて会ったのはミラエルツですよ?
ジェラードさん イコール ナンパ だったじゃないですか!!」
「う……。言い返せない……!」
「そのあとは私もいろいろと助けてもらいましたけど……。
でも私、最初はナンパされましたからね? 忘れてませんからね?」
「僕は忘れてたよ……。
いや、アイナちゃんとは運命的な出会いだったよね……」
「ナンパは、運命的な出会いだとは思いたくないですね」
……他の仲間は運命的な出会いだったと言っても過言では無い。
でも考えれば考えるほど、ナンパから始まった運命っていうのは――何だか正直、やっぱり嫌だなぁ。
自転車和尚
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しめさば
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コメント
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みぅです🤍🥀 506話、読みました〜! 街門の外の人の多さ、確かにあれだけの人数が一気に入ってきたらキャパシティやばいですよね…。アイナちゃんの「調整弁」って気づき、すごく現実的で好きです。 そしてジェラードの秘密組織!「ナンパじゃなかった」って言われても、アイナちゃんが「ナンパから始まった運命は嫌だ」って返すところ、思わず笑っちゃいました😂 彼の真面目な一面とちゃっかりした感じのバランスが良いなぁ〜。裏と表の棲み分け、じわじわ面白くなってきました🌙