テラーノベル
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⚠️📢🍍、ちょいグロ表現
誰かが言った。
人が持つ記憶の過半数は誰かとの思い出だと
「…………」
そんな言葉を聞いて、信じてる訳ではない。 だって俺、忘れられない記憶なんて沢山持ってるもん。楽しかった事、 嬉しかったこと、失敗したこと、武勇伝も黒歴史だって。
誰かとの思い出以外の小さな事は、頭から離れられないものは誰だってあるんじゃないかと思ってる。
「……君、現代の人?」
幽霊が見えるなんて、今これを見てる人は絶対に忘れられないでしょ?
幽霊が見えるようになったのは産まれてからだった。
田んぼと自然しかないこの田舎町で産まれて、すくすくと育った。大好きな両親と、柔らかく笑って見守ってくれてる祖母に沢山の愛情をくれて、俺は受け取っていた。
そして 目が見えるようになってからかもしれない。 透けて見える女性や、おぼつかない足取りで歩く老人、俺の布団の傍で眠る黒猫。1人減ってはまた新しい人が帰ってくる。
まさに俺が育ったこの家は大家族なんだと思っていた。 そんな事をお母さんに話したら、顔を真っ青にして俺にこう言った。
『るいは、父さんと母さんとおばあちゃんの4人家族だよ?』と。
何を言ってるのか、さっぱり分からなかった。今日はエイプリルフールでもないし、お母さんが嘘ついてるとも思えなくて。
俺の後ろで見ていた人影に気配を感じて、聞いてみようかと振り向いた。すると、無表情だったその人は、俺の顔を見ては口角だけをニヤリと不気味に上げていた。
そんな姿を見てから、今になって恐怖が芽生えた。俺に何が見えてるのか、俺の前に現れるのはなんなのか、病気にかかったのだろうか。祖母から聞いてみたらそれは幽霊なのだと教えられた。
病院で治療しても治らない、これから先は付き合っていくしかない。そんな余命宣告を言われたような絶望感に、俺は耐えれなかった涙を流し、祖母は背中を摩ることしかできなかった。
それから成長し、目に見える生きていない者の姿は俺の生活に馴染んでしまっていた。最初は怖かったものの、慣れてしまったのかそこまでの支障がなかった。
だから気を抜いてしまったんだろう。道端にうずくまって苦しそうにしてる女性に、幽霊とも気づかず心配で声をかけてしまった。
そしてその女性は俺の顔を捉えると、歪んだ笑顔を見せ、急に顔がドロドロに溶けだし、長く尖らせた爪を持った手で俺の腕を捕まえた。
俺は怖くて必死に腕を振りほどき、誰かに助けを求めて泣き叫びながら、家へと帰った。
泣きながら帰ってきた俺に親は驚き戸惑い、祖母は何かを知ったかのように俺の顔を見つめていた。
その夜、祖母に話してみれば生霊や地縛霊、絶対に目を合わせてはいけない悪霊等、色々な事を教えられた。特に、今日出会ったような悪霊は厳しく、俺に伝わるように。
まだ小学生の俺からすれば何を言ってるか分からなくて、右から左へと流れていくだけであったが、悪霊だけは頭に叩き込む。
「じゃあ、おじいちゃんは?」
「おじいちゃんはねぇ、お空に旅立ったからここにはもういないのよぉ」
俺の祖父は俺が産まれるずっとずうっと前からいなくなった。戦争で亡くなってしまったと、話してくれていた。
亡くなった時の顔は見れていない。こっちに届いたのは米国の戦場で落とされてた白い骨。身体はそのまま焼き焦がれて、塵となって消えたのだろう。
そんな話をしてくれる祖母は、歳を重ねてしわくちゃになってしまった顔を見ても分かる寂しそうな目をしている。小さかった俺はもう話を聞きたくなくて口を閉ざしていた。
俺の学校は夏休みが始まった。
クラスメイトは電車に乗って海に向かう子や、森に行っては虫取りをする子だっているんだろう。
そんなみんなが楽しい夏休みを満喫してる中、俺は祖母から貸してもらった鞄と水まき桶を持って田んぼの間の一本道を歩いてく。
毎日のように気温が下がらない暑い中、大人なのか幽霊なのか分からない人達を横切っては目的地へと歩んでく。
ようやくして着いたのはお墓。何故かお墓の掃除はいつの間にか俺が任せられていた。
両親は夏休みなど関係なく仕事に行って、祖母は足腰を痛めながらも農作物を採取している。誰も行けない状態だから、毎日暇な俺が掃除をする事になっていた。
荷物を墓の前に置いてもらって、近くにある川へ水を汲む。暑いからか川は少し温く感じたが、暑く汗が止まらない今は少しだけ気持ち良く感じる。
水が入った重い桶を持ち運んでは祖父のお墓の前に置き、祖父のお墓の前にしゃがみ、顔の前に手を重ねては心の中で許可を貰う。
そしてお墓の上に少しだけ水をかけてから、水で濡らした布巾を絞って、お墓を拭いた。
最初は怒らせたりしないかと心配もしたが、綺麗にしつつこんなに暑い中、冷たい水を浴びせてあげてると思えば今はなんとも思わなかった。
前を拭き終え今度は後ろへと回ろうとした時、誰かがこちらを見つめていた。
祖父のお墓の後ろに立っている男性はここらでは見たことがない、綺麗な茶髪を持って見つめる目は茜色に輝いてる大人っぽい男性。
だが、着てる服はそこらでは馴染みがない。ここが田舎だからと、和服を着てる人達はいるけれど、るいにとっては男性が着てるものは人生が始まってから見たことが無かった。
だけど顔だけは、よく見ていたものだった
思わず見つめているとその男は俺の姿を見ては、目を見開き口を開けた。
「お前、俺が見えるのか?」
そう言われてハッと気付かされた。何かも分からない幽霊と目を合わせてしまったこと。だけど、今更目を逸らしたって余計に疑われるだけなんだろう。
どうしようかと少し焦っていれば、また口を開いてはこちらに近づいて来た。
「何もしねぇよ。悪霊じゃねぇんだから」
「……ほんと?」
俺の強ばった表情を緩めてくれるように、こちらに微笑みながら祖父のお墓の隣に座った。何もしてこないと分かると、無意識に安堵の溜息を吐き出してしまった。
幽霊に気を取られてしまい、手を止めていた掃除を再開する。幽霊は俺が拭いてる姿を見ながら話しかけてくる。
「えらいね?この歳でお掃除なんて」
「いや、別に…任されてるだけで…」
「これは、君のおじいちゃん?」
「う、うん…」
「…そっか、じゃあ嬉しいだろうね」
俺の話にも柔らかく答えては、ニコニコと笑う幽霊。悪霊ではない事が確かで、でも騙されてるのではないかと、出そうな足がそこまで踏み込めれなかった。
お墓を吹き終え、水浸しになったお墓を今度は乾拭きをする。そして、近所の人がやってる花屋さんで買っておいた色とりどりの花を添えてあげる。
「君、お名前は?」
「っ…る、るい…」
「ふーん、るい君か。いい名前だね?」
何時までも離れない幽霊さん。1度目をそちらに向ければ、俺が掃除してるところを見守る姿がある。
しゃがんでいて気づかなかったが、幽霊さんが着てる服に名札みたいなものが書いてあった。だが、なんて書かれてる分からない。
「…幽霊さんのお名前はなんて言うの?」
そう聞くと、俺が名札を見ていたことに気がついたのか、あぁ、と声を漏らしてから言った。
「…なつって、呼んで?」
「るいって、現代の人だよね 」
この暑い日差しに照らされてる中、あらかた掃除が終わり水を飲んで休憩をする。隣にいるなつという男はもういないのか汗1つ流さず涼しげな顔で話を続けていた。
俺はとっくに、コイツが悪霊なのかという疑いは消えていた。
俺と居たって暇だろうに楽しそうに話しかけてきて、逆に話しかけて見れば素直に答えてくれて、幽霊は全て悪い奴ばかりじゃないのだと分かった。
「…どう?今、生きていて」
少し難しい質問を投げられる。答えるか少し迷ったが答えを待ってるかのように俺のことを見つめてるなつさんに、素直に答えた。
「…別に、楽しくないよ」
そう言うと、微笑んで口角を上げていたなつさんの口が真っ直ぐに線へと変わった。
「…俺、昔から霊が見えるから周りから変な目で見られてて、学校でも虐められてるし」
口から出てきた素直な言葉は、次々に吐き出されていく。止められるはずもなく、学校であった話や先生にも助けて貰えない話、親にも言えてない事も話してしまった。
それでも、言葉を挟まずに真剣に聞いてくれるなつさんの姿を見て、改めて良い奴だと感じられた。
「そっか、そうなんだね…」
話し終えれば、再びなつさんは微笑んで俺の頭を撫でてくれた。
だがなつさんは消えていて、後ろの景色が透けて見えるような手はもちろん俺に触れられていない。 だけど、ほんの少しだけ彼の温もりが頭に感じていた。
「ここは、今でも辛いことばかりなのか」
「っもう、いいって…」
しばらく俺の頭を撫で続けてるなつさんに、俺は少し恥ずかしくなってしまい、不器用な声で制してしまった。そう言えばなつさんも、素直に手を離してくれた。
「俺は、記憶なんてないんだよ」
今にも消えそうな小さな声で言われた言葉に、俺は隣を見てしまった。
気づいたらここで眠っていたこと、並んでる墓のどれが彼のかと聞くも分からない、別の場所にあるのかも聞いても分からないと。
前世の事も、あまり記憶にないのだと言った。
「ただ、俺には大切な人が居たって事しか、記憶にないんだ」
「たいせつな、人」
「うん、俺の、大好きで恋焦がれていた人」
そう言うなつさんの顔は彼を思い出してるのか、顔を赤らめながら嬉しそうに話をしている。それだけで、その人の事が大好きだったことがこちらにも実感されていく。
「…なつさん、綺麗な顔してるもんね」
彼を見ての第一印象で思ったことを言ってみると、驚いた顔をしてはほんの少しだけ恥ずかしそうに顔を赤らめた。
「ッやめろよ、恥ずかしい事言うの…」
俺に見られないように目を逸らしてるなつさんに、少しだけ可愛さを感じてしまった。その人もきっと、こういう素直に出せない彼が好きだったのだろうと、勝手に感じていた。
「お前、掃除終わったんだろ?」
気づけば空は少しだけ茜色に染まっていた。掃除が終われば家に帰ってくるのにずっとここで話し込んでいたから、きっと今おばあちゃんは心配してるのだろう。
あとはお供え物と挨拶だけを言えば終わる。水まき桶と一緒に置いてある鞄から、お線香とろうそく、マッチ棒を取り出し、お墓の前に置いてあった古びて小さくなったろうそくを取って新しいのに変える。
そして、マッチ棒を擦って火をつけた。
すると、後ろにいたなつさんは少し顔を強ばってしまった。
「なつさん?どうした?」
「っ…いや、なんでもないッ、続けて」
顔を逸らして見ないようにしてるなつさんに、俺は持っていたマッチ棒についてる火を見る。彼に 記憶がなくても、昔に起きた出来事がきっかけでトラウマが残っていたりするのだろうか。
俺は急いでろうそくに火を灯し、線香に火を当てて先を燃やし立てる。手を合わせてお墓で眠るおじいちゃんに挨拶してから、ろうそくについてる火を消した。
「なつさんは、火が苦手なの?」
「…多分、な」
なつさんが言うには、お盆とかで来る人がつける火を見て、逃げ出してしまったり、無意識に身体を強ばってしまったりするらしい。
「どうしようもねぇよ、治らんもんは」
呆れたように笑うその顔に、俺は何も答えずに見つめることしか出来なかった。
ここには週1の頻度で来ると言うと、なつさんは毎日ここにいると言ってくれた。そして昼過ぎに水まき桶と鞄を持って、彼のとこへ行く。
前からお墓の掃除なんて面倒臭くてやりたくなかったけれど、なつさんが居ると思えば自然と外へ駆け出していた。
長い階段を駆け上がって、おじいちゃんがいるお墓に着けば暇そうにお墓を散歩している彼の姿があり、俺の顔を見ては微笑んでくれた。
いつも通り川に水を汲みに行き、布巾を絞ってお墓を拭いてあげる。傍にはなつさんが見守ってくれている。
あらかた拭き終えれば、汲んだ水の中に入れてたおばあちゃんからくれた2本のラムネを取り出して開けた。
「なつさんも飲む?」
「…有難いけど、俺飲めなくねぇか?笑」
ラムネを渡しても身体が透けてしまい、持つどころか渡すこともできなかった。仕方なく、俺は冷えたラムネを飲み始め、なつさんは1本余ったラムネを眺め始める。きっと初めて見たのだろう。
「最近はこんなもんがあんのか…」
「…なつさんが生きてた時は、なんかなかったの?」
ラムネを眺めていた茜色の瞳は、次に俺の顔へと捉えた。
「何もなかったよ。食事も睡眠も取れない有様だったからね」
小学校の社会で習った昔の話。先生も似たようなことを話していたのを思い出す。
聞いてから最初はそこまで信じていなくて、面白く感じなかったけれど、戦場で生きた亡くなった人の話を聞くだけで、信憑性が少しずつ湧き出してくる。
「るい君が思ってる以上に、酷いもんだったからね」
「どれくらい?」
反射的に言ってしまい、触れてもいいのかと聞いてから少しだけ後悔した。でも、そう言われたなつさんは左胸につけていた名札を撫でて呟いた。
「…死の隣合わせだったよ」
「………」
「毎日誰かが死んで、空気はずっと誰かの血と火薬の匂い、食事も米と雑草と川で取ってきた爬虫類ばかり」
「名前が貼られてたのも、顔も身体もぐちゃぐちゃにやられて死んだ人が誰なのか分かる痕跡を残すためのものだからね」
今とは真逆の、グロっぽく彼が死にかけてた世界の話に顔が引きつってしまう。それでもそれが日常と化されてたなつさんは、思い出すかのように淡々と話す。彼の言葉と低い声色に、耳が塞ぎたくなった。
「俺って、産まれた時からこんな容姿だったから、街の人から敵国の奴だって言われてたんよ」
俺は確認するように彼を見てしまう。確かに茶髪に毛先が少し赤が入っていて、瞳も今でも淡く輝いてる茜色に染まっている。 どこから見ても、日本人の外観にはさほど見えない彼。
「でも、それでも俺の隣に立ってくれたのが昨日話したアイツなんよ」
「……好きな、人?」
「そう」
恥ずかしそうに、でも顔は嬉しそうにはにかんでいて、余程彼の事が大好きだったのが伝わってくる。きっと、会いたいんだろうか。
「その人は、どこにいるの?」
そう聞いてみると、さっきまで笑ってた顔は沈むように暗くなってしまった。
「…分かんねっ…笑」
なつさんもそこまでは思い出せないのだろう。それからお互い、蝉の鳴き声を聞きながら何も言わずにいた。これ以上聞いてしまうと、彼が壊れてしまいそうで怖かった。
「よかったね。今を生きれていて」
「………」
「るい君は、授業で教えられた事しか覚えなくていいんだからね。」
何も解決できてないまま、俺はあとの片付けに取り掛かってしまった。
誰かが言った。
『___なつ』
人が持つ記憶の過半数は誰かとの思い出だと
『俺さ、なつのこと___』
「……いるま…」
コメント
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るい君のおじいちゃんが📢くんってことかな…?それで🍍くんは📢くんのことが好きで…でもるい君にはおばあちゃんがいたから🍍くんの恋は叶わなかった…みたいな感じかな…とても神作で好きです🫶社会地雷とは??長文失礼しました
最低点数27点の社会大地雷系の私が書いたものです。お許しくださいませ😊