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恵は不要なものを墓に埋めたにも関わらずそれは何度も掘り返され、更に芽来の周囲を嗅ぎ回る不穏な動きに苛立ちを隠せなかった。誰かが自分の素性を明かそうとしている。そこで脳裏に浮かんだのは下弦の月の夜、大野牧場に停車していた一台のタクシー、北陸交通株式会社の101号車だった。


「邪魔だったのよ」


恵は精神鑑定に回される事となった。




「この疫病神!」


右肩や肘、膝に怪我を負った源次郎は佐々木咲に泣きつかれ、井浦は佐々木咲に疫病神と怒鳴られマンションから叩き出された。




ぴーちちちち




長閑な河北潟干拓地に井浦結と島畑源次郎の姿があった。源次郎は畦道に腰を下ろすと白と黄色の菊の花を蓮根栽培の沼地に手向け、線香に火を点け薫る煙に目を細めながら静かに手を合わせた。


「井浦さん」

「なんだしまじろー」

「彼にとってこの場所はお墓なのかもしれませんね」

「墓ぁ?」


井浦は口に咥えていたタバコの吸い殻を革の靴で踏み潰した。


「父親も母親も、まぁ僕も埋葬されるところでしたが」

「とんでもねぇな」

「ある意味、神聖な場所だったのではないかと」

「そうかぁ?」


「子どもの頃の自分をここに埋葬して、女の子の芽来さんとして人生をやり直したかったんじゃないかな、と、僕はそう思いました」


「まぁ、あいつは不憫だな」

「はい」



ぴーちちちち


源次郎はヨイショと立ち上るとジーンズのポケットに手を入れ、路肩に停めた黒い捜査車両へ向かって歩き出した。


「井浦さん、あの覆面パト捜査車両、どうしたんですか」

「県警の前に落ちてた」

「へぇ」


背伸びをする形の良い肩甲骨、井浦はその背中に向かって声を掛けた。


「なぁ、しまじろー」

「はい」

「俺と同じ墓に入らないか?」

「はぁ」

「考えておいてくれ」

「それは咲さんに相談してみないと分かりません」

「ちっ」






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