TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

『エネルギー貯蓄の報告書ってどこ置いた?』

『アブノーマリティを管理するのってどんな感じなんだろうなぁ』

『今日の食堂の日替りメニューはハンバーグだぞー』

『本物の銃なんて初めて見たな…』

『銃は護身用なんですって。なんかカッコいいですよね~!』


オフィサーたちの他愛のない会話。

家や学校では絶対に聞かない話ばかりで、自分が羽になったという実感がわいてくる。

ここは、L社のO−996支部のコントロールチーム。

今日から俺は正式に職員として働き始めるのだ。

今は業務開始前の自由時間。書類の確認をしたり、雑談したりと各々が好きなようにしている。

そんな中、俺は特に何もせずこの光景を眺めている。アブノーマリティという漠然とした不安をどうにか頭から振り落とそうと、オフィサー達の会話に耳を傾けているのだ。


「ねえ!!」


突然耳元で大声を出され、体がビクリと反応する。


「オリバー!今の聞いた?」


雑談しているオフィサーを指で差し、目を輝かせる女性。

この女性は、これから一緒に働く同期のアリサだ。

アリサとは研修の時に初めて出会い、何だかんだでタメ口で話すぐらいには仲良くなった。

アリサはとにかく活発で表情豊かであり、この会ってから今までの短い期間に彼女の笑顔に元気を貰えることが多くあった。

ただ、あまりにも自由奔放で衝動的に体が動いてしまう節があるので、羽としての自覚を持ち言動を直すように、とマルクト様に厳しく言われてしまったと聞いた。ちなみに本人に直す気は全くない。


「あのオフィサーさんが、今日の食堂の日替わりメニューはハンバーグなんだって言ってた!」


さっき聞こえたオフィサーの会話を思い出す。確かにそんなことを言っていた。


「考えていたらお腹空いちゃった!今は自由時間だし、早めの昼食ってことでもう食堂行っていいかな?」


アリサは美味しそうなハンバーグを思い浮かべたのか、ぺろりと舌なめずりをした。


「いやもうすぐ業務が始まる時間だぞ。出社初日に飯食いに行って遅れました〜、はまずいだろ…」

「あー…確かに……そんなぁ〜 」


アリサの声のトーンが下がった。明らかに落ち込んでいる。

勝手に期待して勝手に落胆して。自分勝手ではあるが、しゅんとした元気のない姿はちょっと可哀想だ。


「あれ、アリサくん、オリバーくん。どうしたんだい?」


背後から声をかけられる。

振り向くと3人分のバインダーを持った長身の男性が立っていた。

彼の名前はサミュエル。俺たちより一日だけ早く働き始めた、同じエージェントだ。

サミュエルはスラッとした長身に、整った顔立ち、そして人柄の良さ…これ以上は言わずもがな、モテるイケメンである。

出会ったのはつい最近だったが、アリサの積極性とサミュエルの穏やかな性格も相まってあっという間に打ち解けてしまった。


「サミュエル、ちょっと聞いて!ハンバーグ今すぐ食べたいのにお昼休憩までおあずけなんだよ〜!」


アリサがサミュエルに泣きつく。オフィサーの目線が結構痛いのでやめてほしいが、今の状態のアリサには何を言っても聞かないだろう。

サミュエルは嫌な顔一つせず、少し考える素振りを見せると、


「ハンバーグは無いけど、これならあるよ」


ポケットから小さな飴を取り出した。

アリサがそれを見た瞬間、目を輝かせる。


「え!貰っちゃっていいの!?」

「こんな物でいいなら食べてくれると嬉しいな」

「わーい!やったー!」


先程までの元気のない姿は何だったのか、子どものように大はしゃぎして飛び跳ねている。

それまでアリサをなだめていたサミュエルが俺の方へと向き直ると、バインダーとペンをそれぞれ一つ手渡された。


「これ、アブノーマリティの作業に使うから持っていてね」


バインダーに挟まれた紙には、アブノーマリティ観測記録と書かれている。


「すまん、わざわざ取りに行ってくれて

「うん。一日しか差はないけれど、頼ってくれていいからね」


優しい!さすがモテる男。


「あ、オリバーくんも飴いる?」

「俺は遠慮しとくよ。甘いのそんなに好きじゃ…」


〈業務開始時間です〉

俺が言い終わらないうちに、機械的な女性の声のアナウンスが流れた。それを聞くとオフィサーたちは示し合わせたかのように動き始める。

業務開始の合図だ。


「ついにお仕事が始まるんだね!どんなアブノーマリティがいるんだろう!」

「心臓バクバク言ってる…うまくやっていけるだろうか…」


アブノーマリティの事で不安がむくりと膨らむ。

こういうときはひたすら前向きなアリサを見習いたい。


〈職員オリバー、”たった一つの罪と何百もの善”に愛着作業を行ってください〉

アナウンスに続いて事前に配布された無線機から音声が流れる。

これがマニュアルに書いてあった『管理人からの指示』だろう。

出される指示は作業指示、移動指示、待機指示、鎮圧指示などがあり、俺たちエージェントはその指示に従って働く。

指示は基本、個人に伝達され、自分以外には内容が聞こえない仕組みになっている。


「わあ!たった一つの罪と何百もの善?の収容室前で待機して、って聞こえたよ!」


どうやらアリサには待機指示が来たらしい。この様子だと、サミュエルにも何かしら指示が来ているだろう。


「僕はF-04-03へ愛着作業をして、と指示が来たね。ってことはオリバーくんは罪善さんの作業かな?」


罪善さん…たった一つの罪と何百もの善の愛称だろう。短くて聞き取りやすい。俺も使ってみよう。


「ああ、その罪善さんに愛着作業を行ってください、ってきたな」



「分かった。それじゃ二人に伝えておきたいことがあるから、よく聞いてね」







こんにちは、おおくくろです。小説を読んでくださりありがとうございます!

勢いで書き上げたのでおかしいところはいくつもあると思いますが、生暖かい目で眺めてくれるとありがたいです。

今回はただのキャラ紹介みたいなもんなので、罪善さんの登場は次の話になります。

全然関係ない話ですが、図書館始めました。司書補さんたちに囲まれて幸せです。

loading

この作品はいかがでしたか?

40

コメント

7

ユーザー

新作嬉しいです…! 図書館良いですよね〜私も今現在司書補さんに囲まれてます(*´꒳`*)

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚