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「結局着いてきたのかよ。」
「怪異に襲われる可能性があって、俺の事務所の位置も正確に把握していないお前が事務所に戻って来られるとでも?」
マッピング能力が高かったとしても、第一怪異も目撃して既に第五怪異に襲われた奴が他の怪異に襲われない保障なんて出来るわけがない。月華が家のドアを開けて、月華、俺と家に入ってから、疑問を投げかけられた。
「………。つーかアンタ事務所って…同い年なんだよな?高校行ってんだよな?…事務所、普段どうしてんだよ。依頼来たりしねぇのか?」
「…依頼が来たのは兄貴が事務所を担当していた頃ばかりだったな。…兄貴が当時の怪異ほとんど封印したから、比較的平和なんだよ。 」
俺の兄貴は優秀なんて言葉では足りないくらい、怪異への対応力があった。兄貴が昔連れて行ってくれた神社で、例の黒い鳥居を見た。
「…そーかよ。でも俺が怪異に襲われたの、見ただろ。」
「……そうだな。」
兄貴の行った封印が、少しずつ弱まっていたのか。怪異が強くなっていっているのか。必要な物をまとめている月華を見ながら、俺は頭の中でそんな小さな不安を駆け巡らせていた。そもそも事務所は兄貴から受け継いだばかりみたいなものだし、自分の事務所だと言い切るのも変に感じてきた。でも今は俺が事務所担当なわけだし、しっかりしなくてはならない。不安を感じる暇なんてないんだ。
「…よし、まとめられた。あんま物なかったな。服毎日選択はしてたけど数個あるの着回してばっかだし。行くぞ剣。 」
「戻るのは俺の事務所なんだが。」
まぁこれから事務所を拠点にすることになるのなら変なことは言ってないのか。
「剣はいつから怪異と関わってんだ?」
事務所へ向かう道中、月華に聞かれた。
「…始めて関わったのは中学1年、始めて見たのは5歳だ。」
「そんな早くかよ…。よく生きてたなアンタ。」
「…普通の人間ならこの時点で死んでてもおかしくない。」
「…?普通の人間って……。」
「俺は祓い屋巫女と呼ばれる人間の息子だ。兄貴もそうなる。ただ、俺達の母親は怪異を自分の命と引き換えに封印した。」
「…!?は…わ、悪かったな嫌なこと思い出させて…。」
気まずくさせてしまった。そんなつもりはなかったのだが…。確かに酷くショックは受けた。だが母は祓い屋巫女として仕事を全うした。心優しく、強い自慢の母だ。
「気にしなくて大丈夫だ。…確かに辛くはあるが、誇らしいからな。」
「そ、そうか…。」
そこからほとんど無言のまま、事務所に着いた。
「……やっぱ広いなおい。」
「事務所だからな。」
「理由になってねぇぞ。」
「………。」
こうしてふざけたようなやり取りをするのはいつぶりだったか。兄貴が他の事務所に行ってからというもの、本当に依頼がどっと減った気がする。それでも怪異が完全に消えたわけではないし、依頼が来ないのもおかしな話だ。…やはり依頼が減ったのは依頼をする前に巻き込まれているということだろうか。
「おいぼーっとすんなって。さっさと教えろよ、怪異について。」
「…分かった。まずは第一怪異の説明からな。」
俺は早速、第一怪異「古き神社の黒い鳥居」について説明をはじめた。本で見たなら分かってはいると思う。念のためだ。
「1つ目、黒い鳥居には近づくだけでは特に大きな害はない。 」
この黒い鳥居は、近づいたり見たりしただけでは人に何の影響も与えない。ただそこにあるだけで、鳥居の様子が変わってこちらを取り込もうとすることもない。
「2つ目、黒い鳥居はくぐってしまってからが問題。」
先程も言ったように、近づく、見るという行為だけではなんともないが、この怪異の危険さは鳥居をくぐってからだ。この黒い鳥居はくぐるとあの世に繋がっており、あの世の怪異に現実でされたら死んでしまうレベルの攻撃を受けたら鳥居をくぐることは出来なくなってしまう。
「最後に、黒い鳥居はくぐってから脱出手段がないわけてはない。」
黒い鳥居をくぐってあの世で運良くあの世の怪異に襲われさえしなければ、黒い鳥居をくぐってこの世に戻ってくることが出来る。黒い鳥居があの世に繋がっているなら、戻ってくるのは現実的に無理な話なのでは?と思われるかもしれない。俺もはじめはそう思った。ただ、兄貴は依頼で黒い鳥居をくぐり、無事生還していた。兄貴の予想では、黒い鳥居をくぐった後に着くあの世にいる間は、心肺停止状態みたいなものなのではないかとのこと。それだと黒い鳥居をくぐってから長居をしてしまうと死んでしまうのでは?…それはそうらしい。しかし兄貴は長居していた。が、無事生還した。この点から考えられたのは、やはり兄貴が祓い屋巫女の息子であったこと。だから助かったということだ。だからおそらく俺が長居しても問題ない。ただ月華は……長居は厳禁だ。もしも月華が苦しむような素振りがあったり症状が現れたら早急に月華には引き返して鳥居をくぐってもらう。いや…引き返さなくとも、進んで行っても鳥居は存在するって兄貴は言ってたな。どちらからでもいいから月華には俺より早く鳥居をくぐらせる。
「…とまぁこんなところだ。」
「情報が多いな。…でも俺が読んだ本より詳しい情報が聞けたな。」
「…古本のコーナーで見つけたのならかなり昔のだったんだろう。情報がまだ少ない時代だ。無理もない。」
こうして月日を重ねて情報がどんどん分かっていったからこそ今があるんだろう。おそらく何も分からないままだったら昔よりも被害者は多かったはずだ。
「……まず第一怪異の説明をしたわけだが、それ以降の怪異の話はまた今度にしよう。一気に詰め込まれたら頭が追いつかないだろ?」
「そうだな。あんがとよ。剣。」
「ん。」
少し月華との会話にも慣れてきた気がする。兄貴からは俺は不思議な人と思われても仕方ないかもしれないと言われていたからこうして話せる奴が出来て正直嬉しい。