テラーノベル
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アキ天DXBOX!
#1.お尻ぺんぺん
公安対魔特異4課の執務室。その片隅で、天使の悪魔は今日も今日とて完全に「無」になっていた。
「……ん」
ソファーに寝そべり、ソフトクリームの案内冊子を眺めながら、気怠そうに羽をパタパタと動かす。彼に課せられた「人間の寿命を吸い取る能力」は、現在マキマの命令(という名の特殊な契約術式)によって一時的に完全に封印されていた。つまり、今の彼はただの「ちょっと足が速くて羽が生えているだけの、めちゃくちゃ綺麗な男の子(悪魔)」である。
触れても死なない。それはいい。だが、能力が使えないことをいいことに、彼は拍車をかけて働かなくなっていた。
「おい、天使」
部屋のドアがバタンと大きな音を立てて開き、書類の束を抱えた早川アキが入ってくる。その額には見事な青筋が浮かんでいた。
「またデビルハンターの巡回をサボったな。お前の担当区域、また別の班が肩代わりすることになったんだぞ」
「だって、外は暑いし……。僕、悪魔だから労働基準法とか関係ないし。人間くんが代わりにやってよ」
天使はぷいっと横を向き、完全に聞く耳を持たない。
アキは深くため息をつき、眼鏡のブリッジを指で押さえた。こいつは優しく言っても、怒鳴っても、のらりくらりと躱すだけだ。肉体的なペナルティを与えようにも、これまでは「触れたら死ぬ」という鉄壁の防御(?)があった。
だが、今は違う。能力は封印されている。
アキの目が、冷徹な光を帯びた。
「……そうか。ならもう仕事はいい。お前の大好きな、高級プレミアムソフトクリームが家に買ってあるんだが……。溶ける前に食いに行くか?」
「えっ、行く! 人間くん、急に話がわかるようになって嬉しいな!」
天使は現金なもので、目を輝かせてソファーから飛び起きた。
それが、恐怖のディナーへの招待状だとも知らずに。
## 罠、そしてお仕置き
早川家のリビング。
帰宅するなり、アキは上着を脱ぎ捨ててネクタイを緩めた。天使はトコトコと冷蔵庫へ向かおうとしたが、その前にアキが立ち塞がる。
「人間くん、アイスは?」
「アイスの前に、お前にはちょっと『教育』が必要だ」
「え……?」
アキは有無を言わさず、ソファーにドカリと腰掛けた。そして、呆然とする天使の腕を掴み、ぐいっと自分のほうへ引き寄せる。
「わっ、ちょっと、人間くん!?」
能力が封印されている天使の力なんて、鍛え上げられたデビルハンターのアキの敵ではない。アキは天使の体を自分の膝の上にうつ伏せの状態で固定した。
「な、何するのさ! 離して!」
「サボり癖が治らないのは、痛い目を見てないからだ。能力が使えない今のうちに、そのひん曲がった根性を叩き直してやる」
アキは容赦なく、天使のズボンと下着をまとめて膝の下まで引き下ろした。
空気に晒される、真っ白で滑らかなお尻。
「ひゃあ!? な、何、脱がせて……っ、やだ、やめてよ人間くん!」
「うるさい。自業自得だ。……数えるからな」
**ペシィィィン!!**
静かなリビングに、お肉が弾けるいい音が響いた。
「いたぁっ!?」
想像以上の痛みに、天使の体がビクッと跳ねる。アキの手のひらは容赦なく硬い。
「1。反省の色が見えるまでやめないからな」
**ペシィィィン!!**
「いったい! 痛いよ人間くん! 悪魔にお尻ペンペンなんて、何考えてるの!?」
**ペシィィィン!!**
「2、3。口を動かす暇があるなら、自分のサボりっぷりを思い出せ」
容赦ない連打が、容赦なく白い肌を赤く染めていく。
最初は怒っていた天使だったが、叩かれるたびに脳に響く痛みに、すぐにプライドが崩壊し始めた。
「ひぅ、うあ、痛いっ! 痛い痛い!」
**ペシィィィン!!**
「4」
**ペシィィィン!!**
「5」
「ううっ、ひっく……! ごめんなさい、ごめんなさい人間くん! 悪かったから、もう叩かないで……!」
ついに天使の目から大粒の涙がポロポロと溢れ出した。アキの膝に顔をうずめ、シクシクと泣きじゃくりながら、小さな手を後ろに回してアキの手を止めようとする。
「人間くん、痛いよぉ……っ、もうサボらないから、明日からちゃんとパトロール行くからぁ……っ!」
「……本当に、心を入れ替えて働くんだな?」
アキは振り上げた手を止め、低く凄みのある声で念を押した。
天使は涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら、コクコクと激しく首を縦に振る。
「う、うん……! 働く、ちゃんと働くからぁ……ひっく、うう……」
真っ赤になったお尻を抑え、可哀想なほど震えている天使を見て、アキは「やれやれ」とようやく手を引いた。ズボンを上まで戻してやり、頭をポンポンと叩く。
37
棒人間
72
霜焼け
4,251
「……よし。じゃあ、約束通りアイスやるよ」
「うう〜……、人間くんのバカ……。鬼、悪魔……(僕が悪魔だけど)……」
しばらくアキの膝の上でシクシクと泣いていた天使だったが、差し出された高級ソフトクリームを見ると、まだ涙目のまま、ハグハグと必死に食べ始めるのだった。
その後、数日間だけは、信じられないほど真面目に働く天使の姿が目撃されたという。
#2.能力封印
いつも通りに目が覚めたはずだった。
でも、布団から起き上がろうとした瞬間に、身体の芯が妙に軽いことに気がつく。
「……? なんだ、これ……」
自分の両手を見つめる。いつもなら、人間に触れればその寿命を吸い取ってしまう、忌々しくて強力な悪魔の力。それが、今はカケラも感じられない。
試しに、近くにあったクッションを恐る恐る素手で触ってみた。……何も起きない。寿命が吸い取られる感覚が、まったくない。
「ボクの能力が……消えてる……?」
背中の翼はそのままなのに、力が完全に封印されている。しかも、なんだかいつもより身体に力が入らなくて、まるでただの、無防備で弱い人間の女の子にでもなってしまったみたいだ。
ゾッとした。悪魔としての防衛手段を失った恐怖で、急に心細さが押し寄せてくる。
「……人間に、触れる……? いや、それどころじゃない。早く、人間に報告しないと……」
ボクはガタガタと震える足で、なんとか立ち上がった。
## 2. 突然の告白(アキ視点)
朝の執務室で書類に目を通していると、ノックもそこそこに天使が部屋に入ってきた。
いや、入ってきたというより、縋り付くような足取りで転がり込んできた。
「どうした、天使。そんなに顔を青くして……」
「人間くん……ボク、大変なんだ。触って、みて……」
「は? 何を言って──」
いつもなら「触ったら寿命が縮む」と絶対にこちらに近づかないはずの天使が、自ら俺の服の袖を掴んできた。驚いて身を引こうとしたが、天使の細い指は俺の肌に直接触れている。
「……っ!? お前、何やって──」
「ほら……何も、起きないでしょ? ボクの能力、封印されちゃったみたいなんだ」
天使の言う通り、俺の寿命が吸い取られる感覚はない。
それ以上に、間近で見る天使の様子がおかしかった。いつもなら気怠げで生意気なはずなのに、今は潤んだ瞳で俺を見上げ、小刻みに震えている。その姿は、まるで庇護を求めるか弱い女の子そのもので、俺の胸の奥がドクン、と妙な高鳴りを上げた。
「……とりあえず、マキマさんに報告だ。行くぞ」
「うん……置いていかないでね、人間くん……」
弱々しく頷く天使を見て、俺は必死に理性を保とうとしていた。
## 3. 支配の懸念(マキマ視点)
「なるほど、能力が完全に封印されている、ね」
机の後ろで手を組み、目の前の二人を見つめる。
天使くんは早川くんの背中に隠れるようにして、怯えた目でこちらを見ている。確かに、今の彼は悪魔の力を失い、ただの無防備で可憐な少女のようだ。こんな状態の彼を放置すれば、他の悪魔や不逞の輩に何をされるか分からない。
「今の天使くんはとても危ないわ。治るまでの間、早川くん、あなたの家で同棲して彼を保護しなさい」
「俺の家で、ですか?」
早川くんが驚いた声を上げる。
私が本当に心配しているのは、天使くんの安全……だけではない。
(今の、あんなに無防備で女の子みたいに可愛い天使くんを前にして……早川くんが、男としての理性を保てるかしら?)
能力が封印された天使くんは、あまりにも無防備で、男の欲を刺激する存在になりすぎている。
もし早川くんが、彼に対して”発情”してしまったら──。
けれど、他に預けられる適当な場所もない。
「お願いね、早川くん。彼を守れるのはあなただけよ」
私は微笑みながら、泳ぐ早川くんの視線をじっと見つめていた。
## 4. 同棲開始(天使視点)
マキマさんの命令で、ボクは人間くんの家で暮らすことになった。
昼頃に荷物も持たずに人間くんの部屋に着くと、急な話だったからか、部屋の中は少しバタバタしていた。
「……人間くん、ボクはどこにいればいい?」
「あ、ああ……居間のソファにでも座っててくれ。お昼、何か食べるか?」
「ソフトクリーム……がいい……」
「そんなもん昼飯になるか。大人しく待ってろ」
ぶっきらぼうだけど、人間くんはいつも通り優しい。
でも、時折ボクを見る人間くんの目が、いつもの「厄介な悪魔を見る目」じゃない気がする。なんだか、見てはいけないものを見るような、熱くて、戸惑ったような視線。
能力が使えないボクは、人間くんに嫌われたら生きていけない。
その不安から、ボクは無意識に、人間くんの後ろをずっとトコトコとついて回ってしまった。
「おい、ついて歩くな。危ないだろ」
「だって……離れるの、怖いんだもん……」
上目遣いでそう言うと、人間くんは急に顔を真っ赤にして、ぷいっと横を向いてしまった。
## 5. 歪む日常(アキ視点)
夕食を終え、風呂を済ませて、ようやく寝る時間になって重大なことに気がついた。
急な同棲だったから、布団の用意がない。俺の部屋には、シングルベッドが一つあるだけだ。
「……悪いが、布団がない。今日はこのシングルベッドで二人で寝るぞ」
「うん、ボクは構わないよ。人間くんの隣、あったかそうだし……」
天使は無邪気に笑って、先にベッドに入り、ちょこんとスペースを空けてくれた。
シャツ一枚になった天使の身体は驚くほど細く、シーツに包まれる姿は完全に女の子のそれにしか見えない。
「……クソっ」
ベッドに入り、背中を向けて寝ようとするが、どうしても意識してしまう。
すぐ後ろから聞こえる、天使の小さくて可愛い寝息。寝返りを打った天使の身体が、背中にコト、と当たった。
その瞬間、昼間からずっと溜め込んでいた、天使に対する「可愛い」「組み伏せたい」という歪んだ衝動が、一気に溢れ出した。
下腹部が熱い。頭がどうにかなりそうだ。
マキマさんの心配通り、俺は……能力の消えた天使に、完全に発情していた。
「……おい、天使」
「ん……なあに、人間く……っ!?」
振り返り、天使の細い手首をベッドに縫い付けるように掴み、その上に覆い被さる。
暗闇の中、俺の目は獣のようにギラギラと光っていた。
## 6. 夜の侵蝕(天使視点)
「な、に……? 人間くん……?」
急に上に乗っかられて、ボクは息を呑んだ。
見上げる人間くんの顔は、見たこともないくらい熱く、ギラついた目でボクを見下ろしている。その身体から放たれる圧倒的な雄の気配と、太ももに押し当てられる硬い質量に、ボクは瞬時に理解した。
人間くんは、ボクに発情している。
「人間くん、ダメ……ッ、ボクは悪魔、で……」
「うるさい……。今の前のお前、めちゃくちゃに弱くて、女の子みたいで……ずっと、おかしくなりそうだったんだ……!」
「ひゃあうっ……!?///」
大きな手がボクのシャツの中に滑り込んできて、柔らかい脇腹を愛撫する。
能力が封印されたボクの身体は、ただの人間と同じ……いや、それ以上に敏感で、触られるだけで脳がとろけそうな快感が走る。
「あっ、は、ぁ……! ダメ、それ……あ、熱いよぉ……っ///」
「お前がそんな声出すから……もう止まんねえ……」
首筋に熱い唇が押し当てられ、吸い上げられる。
いつもはあんなに優しい人間くんが、今は獰猛な獣みたいにボクを貪っている。怖くて、でも、男の人としての人間くんに激しく攻め立てられる快楽に、ボクの身体は一瞬で屈服していった。
「ん、んうぅーっ……! はぁ、あ、アキ……アキくんっ……♡///」
初めて名前で呼ぶと、人間くんの愛撫はさらに激しさを増していく。
能力の消えた無防備な身体は、人間くんの熱に侵食され、夜の闇へと深く溺れていった──。
#3.猫コス彼シャツ天使
## ある日のリビングにて
「あー……なぁ、デンジ」
「んあ?なんだよ、アイス食うなら半分よこせよ」
早川家のリビング。アキが仕事で不在の昼下がり、天使の悪魔はソファに寝転んだまま、ポツリとつぶやいた。最近、胸の奥がずっとモヤモヤしている。原因は分かっている。同棲しているはずの恋人――早川アキだ。
「人間くんがさ……最近全然構ってくれないんだ」
「あ?あいついっつも真面目くさった顔して、お前の世話焼いてんじゃねえか。ハンバーグの肉多く入れたりよ」
「そういうことじゃなくて……」
天使は不満げに唇を尖らせる。能力を封印されて、今はただの「ちょっと生意気な同居人兼恋人」になっているというのに、肝心のアキが全然男として迫ってこない。
「……セックスも、もうずっとしてない」
「ぶっ!!!?」
デンジが盛大に炭酸飲料を吹き出した。ゲホゲホとむせ返りながら、信じられないものを見る目で天使を見る。
「マ、マジかよ!?アキの堅物野郎、お前みたいな可愛い奴が毎日隣に寝てんのに、よく理性保ってんな!?」
「でしょ?僕、魅力ないのかな……」
「いやお前は普通に可愛いだろ!胸はねえけど顔はそこらの女よりよっぽど可愛いじゃねえか!」
デンジは腕を組んで「うーん」とうなり、何かを思い出したようにニヤリと笑った。
「そういやさ、前にアキのパソコンで勝手にGoogleの検索履歴見たんだわ」
「……何してんのさ」
「いーだろ別に!そしたらよ、あいつ**『男 ネコ耳 ギャップ』**とか**『彼シャツ 後ろ手縛り』**とか、クソやべえワードで検索してたぞ!」
「は……っ!?」
天使の顔がカッと赤くなる。あのアキが、そんな破廉恥なワードを検索していたなんて。
「あいつ、普段はすましてるけど絶対むっつりスケベだぜ。よし、天使!アキをビビらせてやろう。お前、その格好でアキの帰りを待て!」
デンジがどこからか持ってきたのは、なぜか家にあった黒い猫耳と尻尾のヘッドドレス。そして、クローゼットから引っ張り出してきたアキの大きめのワイシャツ。
「これを着て、猫耳つけて、手首を後ろでリボンで縛って、床にぺたんって座って待つんだよ!」
「な、何言ってるの!?そんなの恥ずかしすぎる、絶対に無理――」
「いいからやれって!アキの度肝抜いてやろうぜ!」
## 翌日の夜
カチャ、と玄関の鍵が開く音がした。
「……ただいま」
連日の激務で疲れ果てたアキが、ため息混じりにドアを開ける。リビングの明かりはついているが、いつもならソファでゴロゴロしているはずの天使の姿がない。
「天使? 起きてるか……」
アキがリビングへ一歩足を踏み入れた瞬間、その場でフリーズした。
「あ、人間くん……おかえり……」
床に直接「ぺたん」と座り込み、上目遣いでアキを見上げる天使。
その頭には黒い猫耳、お尻からは黒い尻尾。
身にまとっているのは、アキの白いワイシャツ一枚だけ。ダボダボの袖から覗く手首は、なぜか後ろ手に見事なリボン結びで縛られている。
天使の顔は、これ以上ないほど真っ赤に染まっていた。恥ずかしさと緊張で、体があわあわと震えている。
「……天使。それは、何の真似だ」
アキの声が、いつもより明らかに低い。
天使は泣きそうになりながら、デンジに吹き込まれたセリフを必死に絞り出した。
「人間くんが……最近全然構ってくれないから……。その、これ、アキの性癖、なんでしょ……っ?」
その言葉を聞いた瞬間、アキの脳内で何かが激しく弾け飛んだ。
(あのクソガキ、俺の検索履歴見やがったな……!)という怒りは、目の前のあまりにも刺激的すぎる恋人の姿によって一瞬で吹き飛ぶ。
白いシャツから伸びる、すらりとした白い太もも。
後ろ手で縛られているせいで、強調される胸のライン。
そして、恥ずかしさに耐えかねて涙目になっている、大好きな顔。
「……構って欲しかったのか」
「ひゃんっ!?///」
アキはネクタイを乱暴に引きちぎるように外すと、床に座る天使に一歩ずつ近づいた。その目は、普段の優しいアキのものではなく、完全に「肉食獣」のそれだった。
「仕事が忙しくて、お前に触ったら歯止めが効かなくなると思って……これでも我慢してたんだがな」
アキが天使の前に膝をつき、その顎をグイと持ち上げる。
「自分からそんな格好して、そんなこと言ったんだ。……もう手加減してやらないからな」
「あ、人間くん……待っ……///」
天使の制止の声は、すぐにアキの深いキスによって塞がれた。
後ろ手が縛られている天使は、逃げることも、アキを押し返すこともできない。
翌朝、腰が砕けて一日中ベッドから起き上がれなくなった天使は、「二度とデンジの作戦には乗らない」と心に深く誓うのだった。
#4.衝撃
「おいおいおい、マジかよ……」
俺、デンジ。ただいま、人生最大級の精神的ブラクラに直面して脳みそが完全にフリーズしているところ。
時計の針は深夜2時を回ったところ。
リビングでポテチを食いながらテレビを観てたんだけど、コーラが切れたからキッチンに行こうとしたんだ。そしたら、廊下の奥——早川アキの部屋のあたりから、なんか妙な音が聞こえてきた。
「……ん、うぁ、んぅっ……あ、は……っ!」
最初は気のせいかと思った。あいつ、いっつもクソ真面目な顔して寝てるし、うなされてんのかなって。でも、近づくにつれて、その音はどんどん生々しく、はっきりと鼓膜を震わせ始めた。
ベッドが軋む、ギシギシっていう鈍い音。
それから、肉と肉がぶつかり合うような、ペタペタとした wet(ウェット)な音。
極めつけは、聞いたこともないような、高くて甘ったるい、でも苦しそうな声。
「ゃ……、もう、むり……っ、にんげん、くん……ッ!」
人間くん?
その呼び方で、俺の脳裏にあのワガママで生意気な「天使の悪魔」の顔が浮かんだ。
いやいや、まさかな。だってあいつ、触れたら寿命吸い取るんだぜ? アキがそんな危険なことするわけ……。
だけど、好奇心と、なんかヤバいことが起きてるっていう直感が、俺の右手をアキの部屋のドアノブに向かわせちまった。
今思えば、あの時の俺の右手をチェンソーで切り落としてでも止めるべきだった。
ガチャリ、と静かにドアを開けた。
「……ッ!?」
声すら出なかった。視界に飛び込んできた光景が、俺の常識を、世界観を、宇宙規模でブチ壊した。
部屋の明かりは消えていて、月光だけがベッドの上を照らしている。
そこにいたのは、四つん這いにされて、お尻を高く突き上げさせられている天使の悪魔。
しかも格好が完全に狂ってた。アキのやつ、どんな趣味してんだよ。天使のやつ、体格に合わないブカブカの**白シャツ(多分アキのやつ)**を1枚だけ羽織って、下は何も穿いてねえ。さらに頭には黒い**猫耳**、お尻の割れ目からは黒い**猫の尻尾**が生えてやがる。
「あ、あんっ! ひ、んぐ、あ、あぁーーッ!///♡」
天使はシーツを涙目でキツく握りしめて、身体をビクビクと震わせていた。
シャツの裾から覗く太ももは赤く手形がついていて、めちゃくちゃ無理やり奥まで入れられてるのが一目でわかった。あいつ、普段はあんなに生意気なクセに、今はただのメス……いや、男だけど、とにかく完全にアキに屈服させられてる。
「……っ、天使、動くな……!」
背後から天使の腰をガッチリ掴んで、狂ったように腰を振っているのは、あの「マキマさん一筋」なはずの早川アキだった。
いつも綺麗に結んである髪はボサボサに乱れて、顔は獣みたいに紅潮してる。
てか、寿命はどうなってんだよ!?って思ったが、よく見たら天使の頭の上の輪っかに、なんかお札みたいな変な呪符がベタベタ貼ってある。**能力封印**されてやがるんだ。アキのやつ、確信犯じゃねえか!
そして、俺がドアを開けたその瞬間が、一番最悪のタイミングだった。
「あ、は、ダメ……ッ、なか、また、でちゃう、あ、んあぁーーーッ!!///♡」
「くそ、あ、……っ!」
アキが一段と深く腰を叩きつけた瞬間、天使が今日一番の黄色い悲鳴をあげてのけぞった。
同時に、繋がった部分から、アキの熱いのがドクドクと中に溢れて、入りきらない白い液体が天使の太ももを伝ってボタボタとベッドに垂れ落ちるのが見えた。まさに**中出し**の瞬間。
……あ。
アキと、目が合った。
「う、うわあああああああああああああッッッ!!!」
俺は全力で絶叫しながら、親の仇かってくらいの勢いでバタンッッッ!!!とドアを閉めた。
心臓がバクバクといって、破裂しそうだ。見ちゃいけないものを見た。いや、人類が見ていい光景じゃなかった。
次の瞬間、閉まったドアの向こうから、聞いたこともないようなアキの怒号が響いてきた。
「う、うわあああああああああああッッ!? デ、デンジィィィィィィッッッ!!!」
いつもの冷静なアキはどこにもいなかった。完全にパニックになった男の叫び声だった。
俺はそのままリビングに脱兎のごとく駆け戻り、ソファに飛び込んで毛布を頭から被った。
……明日から、あいつらとどんな顔して飯食えばいいんだよ……。俺の純情を返しやがれバカヤローーーッッ!!
#5.エイプリル天使
窓から差し込む春の陽気が、早川家のリビングを穏やかに照らしていた。
アキが朝食の片付けをしている背中を見ながら、ソファで気怠げにアイスを食べていた天使は、ふと思いついた。
「ねぇ、人間くん」
「なんだ」
「……実は僕、女の子なんだ。今までずっと黙ってたけど」
アキの手がピタリと止まる。天使は内心でニヤリと笑い、さらに畳み掛けた。
「だから……責任とって、僕と結婚しよ?」
嘘だ。100%の嘘。
今日はエイプリルフールだし、ちょっと動揺するアキの顔が見たかっただけ。能力も今はなぜか封印されているし、触れ合える今のうちに少しからかってやろう──そんな軽い気持ちだった。
しかし、数秒の沈黙の後、アキが振り返った時の表情は、天使の予想とは正反対だった。
「…………そうか」
アキの瞳には、かつてないほどの決意の炎が宿っていた。
「え、あ、人間くん……?」
「待たせて悪かった。ずっと悩んでいたんだろう。一人で抱え込ませて済まない」
アキは流れるような動作で上着を羽織ると、棚の引き出しから重要書類をまとめているケースを取り出した。中から出てきたのは、なぜか既に手元にあった**「婚姻届」**。
「……なんでそれ持ってるの?」
「いつかお前が、この先どうしたいか言い出せるようになった時のために、準備だけはしておいた」
アキは迷いのない手つきで、証人欄以外の項目を爆速で埋めていく。
「天使の悪魔」という名前で通るのか、それとも戸籍をどう工面したのか、公安のコネをフル活用した形跡がそこにはあった。
「よし、行くぞ。区役所だ」
「待って、人間くん、あの……!」
「恥ずかしがらなくていい。お前が勇気を出して言ってくれたんだ、俺が応えないでどうする」
アキの顔は、これまでに見たことがないほど晴れやかで、そして**「絶対に引き下がらない」**男の顔をしていた。
もしここで「嘘だよ」なんて言えば、この男の覚悟を泥で汚すことになる。何より、期待に満ちたこの真っ直ぐな視線を裏切る勇気が、天使にはなかった。
玄関で靴を履きながら、アキが優しく微笑む。
「……ずっと、お前が隣にいてくれればいいと思ってた。女の子だろうが悪魔だろうが、関係ないからな」
役所の窓口で、受領印が押される音が響く。
天使の頭の中では「詰んだ」という文字が、エンドロールのように流れ続けていた。
「人間くん……」
「ん? お腹空いたか? 今日はお祝いに美味いもんでも食って帰ろう」
幸せそうに自分の手を握るアキ。
その温もりを感じながら、天使は遠い目で窓の外を眺めた。
(……本当は男だって、いつ言えばいいんだろう……)
能力が封印されている今、アキを物理的に止める手段はない。
結局、エイプリルフールの嘘から始まった「奥様」としての同棲生活が、その日の午後から本格的にスタートしてしまった。
#6.お仕置きされる天使
「……またサボりか」
中央特異課の執務室、山積みにされた書類を前に、早川アキは低く冷え切った声を漏らした。
バディである天使の悪魔は、今日も今日とて配属されたデスクに姿はなく、代わりに残されていたのは小綺麗なソフトクリームの空きカップだけ。これで今週に入って何度目かもわからない。
アキの額に青筋が浮かぶ。普段なら「まったくお前は……」と呆れつつも、好物のソフトクリームで釣って連れ戻すのがいつもの流れだった。だが、今日の彼には溜まりに溜まった苛立ち、そしてそれ以上に、心の奥底で煮詰まり続けた黒い衝動が限界を迎えていた。
「おい、天使。何をしている」
給湯室の裏、日当たりの良い廊下の隅で、翼を丸めて気持ち良さそうにうたた寝していた天使の悪魔を、アキは見下ろした。
「ん……あ、人間くん。うるさいなぁ、今は充電中だよ。悪魔だって労働基準法を守る権利があると思うんだよね……」
「……そうか。なら、飯にでも行くか。お前の好きな美味いソフトクリームの店が、少し離れた場所にあるんだ」
アキの顔からは完全に感情が消え失せていた。あまりにも静かで、あまりにも冷徹なその声に、天使は微かな違和感を覚える。いつもなら怒鳴るか、無理やり襟首を掴んで引きずっていくはずのアキが、妙に物分かりが良い。
「え、本当に? 人間くんが奢ってくれるの?じゃあ行く行く」
「あぁ。だが、その前に……車を出すから、公安の上着は置いていけ。汚れると面倒だし、外は少し暑い」
「んー、まぁ確かにこのジャケット、肩が凝るからいらないや」
天使は疑いもせず、素直に黒いスーツの上着を脱いで壁のフックに掛けた。アキの目は、その下にある白いシャツへと向けられる。
「……シャツのボタンも、上の3つくらいは外しておけ。車内は冷房が効くまで時間がかかるからな。熱中症にでもなられたら、後味が悪い」
「へえ、今日の人間くんは妙に過保護だね。じゃあ、お言葉に甘えて」
細い指先がボタンを器用に外し、鎖骨から胸元にかけてのみずみずしい白い肌が露出する。天使がどれほど強力で恐ろしい悪魔であろうとも、その見た目はあまりにも儚げで、無防備な少年そのものだった。
すべては、後で「脱がせやすくするため」の罠。
アキの瞳の奥で、昏い炎が音を立てて燃え上がった。
地下駐車場に停められた、アキの私物の車。
天使は当然のように、寝転がれるスペースのある後部座席のドアに手をかけた。
「あ、僕は後ろで寝ていくから。着いたら起こしてね」
「待て。後ろには荷物が積んである。助手席に乗れ」
アキは頑なにそれを拒み、自ら助手席のドアを開けて天使を促した。
「えー、ケチ。助手席って狭いから嫌いなんだけどな……」
少し不満げに唇を尖らせながらも、天使は助手席へと腰を下ろした。その瞬間、アキの口元に冷酷な笑みが浮かぶ。
バタン、と重々しい音を立ててドアが閉められた。
「……? 人間くん、シートベルトが自動で――」
カチャリ、という鋭い金属音が車内に響く。
それは通常のシートベルトの音ではなかった。座席の背もたれとヘッドレストの隙間、そしてシートの足元から、特殊な硬質合金製の拘束具が飛び出したのだ。
「ひゃんっ!?」
ガチリ!! と、天使の両手首が頭上のヘッドレストに固定され、同時に両足首もガッチリと座席のベースに固定された。万が一の悪魔暴走時に備えて、アキが個人的に特注し、車内に仕込んでいた「対悪魔用自動拘束システム」だった。
しかも、今の天使はアキの「能力封印術式」が施された特製のミサンガを腕に巻かれており、触れた人間の寿命を吸い取る本来の能力が完全に使えない状態にあった。
「な、何これ……!? 動けない……! 人間くん、冗談はやめてよ! 開けて、外してよ!」
天使はパニックになり、慌ててドアのノブ手を伸ばそうとするが、両手首は頭上に固定されて届かない。それどころか、アキが運転席のスイッチを押すと、内側のドアノブは完全にロックされ、手動では絶対に開かない仕組みに切り替わった。
この車は、外から中は一切見えないマジックミラー仕様。
さらに、極厚の防音材が仕込まれており、中でどれほど叫ぼうとも、声は一太刀も外へは漏れない。
完全なる、二人だけの密室。
「人間くん!? 冗談でしょ!? 怒ってるなら謝るから! サボったのは悪かったから、これ外して! ねえ!!」
「……謝っても遅い。お前がいつもサボって、俺をどれだけ苛立たせているか、その身体にじっくり教えてやる」
運転席に乗り込んできたアキの目は、完全に据わっていた。その呼吸は荒く、肌は異常なほどに紅潮している。
「……っ、人間くん、おかしいよ……! なんでそんなに息が荒いの……? まさか、発情……してるの……!?」
悪魔の直感が、アキの異常な状態を察知した。アキは、天使への抑えきれない独占欲と、溜まりに溜まった性衝動により、完全に狂わされていたのだ。
「嫌だ……! 嫌だ、来ないで!! 誰か……誰か助けて!! マキマさん!! パワー!! デンジ! 誰でもいいから助けてよぉ!!」
閉じ込められ、完全に逃げられないと悟った瞬間、天使はプライドも何もかも投げ捨てて叫び散らした。窓ガラスを足で蹴ろうとするが、足首の拘束はびくともしない。涙目で狂ったように叫ぶ声は、狭い車内で虚しく反響するだけだった。
「無駄だ。ここはお前の声も届かない、誰も助けに来ない檻だ」
アキは天使の体にのしかかり、事前に3つ外させておいたボタンの隙間に大きな手を滑り込ませた。
「ひっ……あ、熱い、触らないで……っ!!」
「触るさ。お前が悪いんだ。俺の目の前で、そんな無防備な姿をして……」
バリ、と音を立ててシャツが引き裂かれる。アキの指先が、天使の白い脇腹や、敏感な胸元を容赦なく愛撫し始めた。衣服を脱がせやすくするために上着を脱がせ、ボタンを外させたアキの計算は完璧だった。
「ん、ぁ……っ!! んぐ、うぅ……っ!!」
能力が封印されている天使には、人間の、それも鍛え上げられたデビルハンターであるアキの力に抗う術はなかった。頭上で固定された手首が擦れて赤くなる。
「はぁ、はぁ……天使……お前が、欲しかった……ずっと、こうしたかった……っ」
アキの熱い呼気が首筋に吹き付けられ、尖った犬歯が天使の鎖骨に深く突き立てられた。
「痛いっ……! あ、あぁ……っ、人間くん、ダメぇ……そこ、変な感じが……っ、ひう、ぅ、///」
恐怖に支配されていた天使の瞳に、次第に別の色が混ざり始める。アキの執拗で、容赦のない指先の動きと、首筋を吸い上げられる快感が、天使の未熟な身体を強制的に開発していく。
「あ、は……っ、ん、んぁっ……♡ ダメ、壊れちゃう、人間くんの、指、あつい……っ♡ ///」
「壊れるわけないだろう。悪魔なんだから……もっと、俺を中まで受け入れろ」
アキの硬く猛る質量が、衣服を剥ぎ取られた天使の太ももの間に割り込み、最奥へと容赦なく突き立てられた。
「あがッ……!? あ、ああぁぁぁーーっ!! ♡♡ ///」
背中が大きく反り返り、頭上の拘束具がガタガタと激しく音を立てる。
外の世界から完全に隔絶された暗闇の車内で、天使の悪魔は、狂おしいほどの快楽と愛の檻に、永久に閉じ込められることとなった。
「ん、ぉ……あ、熱い、よぉ……人間くん、の、なか、いっぱい、きちゃ、う……っ♡♡ ///」
もう、助けを呼ぶ声は、甘い悲鳴へと完全に塗り替えられていた。
#7.逆転されちゃう天使
「……よし、準備はいい? 触手の悪魔」
公安の個室。天使の悪魔は、特異4課の備品(?)である触手の悪魔を呼び出し、目の前で拘束されている早川アキを指さした。
今日の天使はいつもと違う。マキマから借りた「能力封印の首輪」を自ら嵌め、アキに触れても寿命を吸い取らない状態――つまり、物理的に「わからせる」準備は万全だった。
「いい、アキ。君はいつも僕を子供扱いするけど、今日はその余裕をへし折ってあげる。……さあ、触手。こいつを徹底的に犯して、泣かせてやりなよ」
天使は勝ち誇った笑みを浮かべ、アキの目の前で指示を出した。アキは猿轡を噛まされながらも、「何やってんだお前は」と言いたげな呆れ顔で天使を睨んでいる。
だが。
**ニュル……。**
触手の悪魔が向かったのは、アキではなく、指示を出した主――天使の悪魔の方だった。
「……え? ちょっと、方向が違うよ。人間くんはあっち」
天使が怪訝そうに眉を寄せた瞬間、ぬめりとした感触が彼の細い足首を絡めとる。
「ひゃっ!? な、何……やめ……っ!」
触手の悪魔は、アキのようなくたびれたスーツの男には微塵も興味を示さなかった。それよりも、目の前にいる「能力を封印され、神々しい香りを放つ、無防備な天界の美少年」の方が、遥かに食欲(と性欲)をそそったらしい。
「あ、人間くんを……人間くんを犯せって言ってるのに! 離し……あ、ああッ!///」
天使の羽がバサバサと激しく揺れる。触手は容赦なく彼の服の隙間に潜り込み、敏感な脇腹や内腿を執拗に這い回った。能力が封印されているため、天使は触手に触れても相手を殺すことができない。ただの「少し力の弱い少年」として、蹂躙されるしかなかった。
「やだ、くすぐったい……そこ、ダメ……っ!/// ぁ、はぁっ……///♡」
目の前で繰り広げられる、主客転倒のセルフ自爆ショー。
拘束されたままのアキは、最初は驚いていたものの、次第に「こいつ、何やってんだ本当に……」という深い溜息を(猿轡越しに)漏らした。
「に、人間くん……助けて……これ、止めてよぉ……っ!///♡」
涙目で助けを求める天使。だが、触手はすでに彼の腰を高く持ち上げ、一番柔らかい場所を突き上げる準備を始めている。
「……ん、ぅあああッ! 待って、僕が……僕が『分からされる』のは、予定に、ない……っ!!///♡」
天使の悪魔の情けない悲鳴が、皮肉にも静かな部屋に木霊した。
#8.彼女出来たと嘘ついたら天使の反応が可愛すぎた
いつも通りの、少し気怠いリビングの空気。
夕食の片付けを終えたアキがソファに腰掛けると、隣でアイスを齧っていた天使の悪魔が、猫みたいにすり寄ってきた。
能力が封印され、触れても寿命を吸い取られなくなってから、天使はすっかりアキにベタベタするようになった。元々あった人間の情を、今は隠そうともしない。
そんな天使の無防備な様子を見て、アキの心に、ふと小さないたずら心が芽生えた。
「なぁ、天使」
「んー? なに、人間くん」
アイスを咥えたまま、綺麗な顔がこちらを向く。
「俺、彼女出来た。」
「……え?」
ピキ、と天使の動きが止まった。
咥えていたアイスの棒が、ポロリと手元に落ちる。
「昨日、任務帰りに告白されてさ。付き合うことにした」
嘘だ。もちろん、真っ赤な嘘。
いつもクールで、どこか飄々としている天使がどんな反応をするか、ほんの少しからかってみたかっただけだった。
「……かの、じょ?」
「あぁ。だから、そのうちこの家にも連れてくるかもしれないから、お前も心の準備しとけよ」
アキはなるべく平静を装って、テレビに目を向けた。
だが、隣からの返事がない。
不審に思って視線を戻したアキは、思わず息を呑んだ。
「……っ」
天使の大きな瞳に、みるみるうちに涙が溜まっていく。
綺麗な顔が絶望に歪み、唇が小さく震えていた。
「天使……?」
「……ボク、聞いてない」
声が 震えている。
嫉妬。困惑。そして、胸が張り裂けそうなほどの悲しみ。
色んな感情が混ぜこぜになった瞳でアキを凝視したあと、天使はガタッと勢いよく立ち上がった。
「おい、待て、天使!」
アキが手を伸ばすよりも早く、天使は自分の部屋へと走り出す。
バタン! と激しい音を立ててドアが閉まり、内側からガチャリと鍵がかかる音が響いた。
「……あ」
やってしまった。
アキは頭を抱えた。想像以上の拒絶反応に、背中に冷や汗が流れる。
すぐに天使の部屋の前に移動し、ドアを激しくノックした。
「天使! 開けろ、今の嘘だ! からかっただけだ!」
「……嘘つき! 人間くんのバカ! 大嫌いだ!」
奥から聞こえる声は、完全に泣きじゃくっていた。
いつもなら「人間なんてどうでもいい」なんて顔をしているくせに、今は一人の男に置いていかれる恐怖と嫉妬で、ボロボロに泣いている。
「本当に嘘なんだ! 彼女なんていない、お前以外の誰もこの家には入れないから!」
アキは必死にドア越しに訴えかける。
しばらくの沈黙のあと、ガチャ、と静かに鍵が開く音がした。
ゆっくりと開いたドアの隙間から、赤くなった目でアキを睨みつける天使が顔を覗かせる。
「……本当に、嘘?」
「あぁ。本当に嘘だ。悪かった、俺が全面的に悪かった。お前が可愛くて、つい意地悪したくなったんだ」
アキが両手を上げて降伏を示すと、天使はふいっと視線を逸らした。
だけど、その頬は涙で濡れたままで、まだ怒りと寂しさが隠しきれていない。
「……人間くんは、ボクだけのものだもん」
小さな声で ぽつり、と天使が呟く。
能力が封印されたその白い手で、今度はきゅっとアキのシャツの裾を掴んだ。
「当たり前だろ。ほら、涙拭け」
アキは苦笑しながら、天使を優しく抱き寄せた。
胸の中に収まった天使は、まだ小さく 鼻をすすりながら、二度と離さないと言わんばかりにアキの背中に腕を回した。
ここまでお疲れさまでした!
アキ天アキ天
コメント
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「アキ天SS」一気読みしたわ…!めちゃくちゃ刺さった🔥 最初はお尻ペンペンでお仕置きされる天使が可愛すぎたのに、だんだんアキの理性ぶっ壊れていく流れが最高。特にエイプリルフールで「女の子」って嘘ついたら本当に婚姻届出されちゃうとこ、天使の「詰んだ」顔が目に浮かぶ😂 無防備な姿に発情するアキのギャップと、泣きながら縋る天使の危うさがエロくて萌えたわ…続き待ってる🔥