テラーノベル
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私が世界一だと思っていた。
私には才能があった。
音楽の才能、絵の才能、そして文才。
正直言い、ここまで才能を持っている私は天才だと思い込んでいた。
だって、学校で私より絵が上手い人も、音楽が得意な人も見た事なかったから。
私はよく学年に絵を描いている人が居ると、
「一緒に絵描こうよ!」
と誘っていた。当時、誰かと一緒に絵を描くのがすごく楽しかったのだ。
休み時間、暇になっては隣のクラスに行きお絵描きに誘う。
いいよ!と言われる瞬間が嬉しくて嬉しくてたまらなかった。
チャイムが鳴るまで、喋りながらひたすら絵を描きまくる。
こんなので学校を楽しめていた。
そんなこんなで1ヶ月が経ち始めた頃。
4月23日。
学校に絵が上手い人が居ると、なんとなく不快感を覚えていた。
そりゃ凄いとは思うし、尊敬もする。
だが、何故か嫌なのだ。
全然嫌じゃないのに。むしろ参考にさせてほしいくらいなのに。
線画も綺麗で、アナログもデジタルも完璧に使いこなしている。
影の塗り方も、目のグラデーションも綺麗だ。
光の入れ方や体の描き方…バランスも良いし。
一体私はどこに不満があるのだろうか…。全て完璧じゃないか。
その子の絵に対し、私の絵は少しバランスが悪い。体も上手く描けない。
絵を描くための機材なんて無い。
尊敬するけど…なんていうのだろうか。
ずっと心臓に何かが纏わりついてくる…みたいな。
まあいいか。いずれ消えるだろう。
…なんなのだろうか?
一応様子を見ておくか。
あの日から、心臓に纏わりついてくる何かが多くなった。
頻度も日に日に高くなっているような気がするし、少し息苦しいくらいだ。
そうだ。そういえば、2月2日の今日、ようやくこの感情について理解が出来た。
私はプライドが高いのだ。
あのモヤモヤも息苦しさも、全てがあの子への嫉妬から来ている。
プライドが高いという自覚がついてきてから数日後、私は絵を描く人を避けるようにしていた。
いつ、またあの劣等感が襲いかかってくるか分からないから。
そうして入ろうと決めていた美術部もやめた。
怖いのだ。
もし私と同い年で私より絵が上手かったら?
もし私と同い年で私より音楽が得意だったら?
もし今私より絵が下手な人が、
私を追い越してきたら。
そう思うと、徐々に色々な思考に走っていき、最終的には自殺しようかなんて思考にまで陥ってしまう。
最初から負けず嫌いな性格だったが、
ここまで来るともう性格やらなんやらの問題じゃない。
いくらプライドがあるからって、さすがに嫉妬が過ぎるだろう。
努力して得た物を、勝手に嫉妬され憎まれ陰で愚痴を言われているあの子も気の毒なものだがな。
でも、そうだとしても、私より上が居ることによって
同い年や年が近い人を嫌いになりやすくなった事は事実だ。
なんとかならないのだろうか?
年が近い人に追いつかれないかの焦りで冷や汗が止まらない。
どうしたらいいのだろうか?
同じような人はいるのだろうか…
いや、
解決法なんて無いのだろう。
私は私を褒めて称えて崇め続ける。
1番の近道でありますように。