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私が起きると丁度、鳥の囀りが聞こえました。時計を見てみると、六時になっていました。昨日寝たのは十一時頃だったので、大体七時間寝ているということです。健康体ですね。
私は昨日と同じく、シャツを整え、カバンの中に必要なものを入れ、電車に乗り込みました。
今日の電車は昨日ほど混んでなく、動けるほどの隙間がありました。物を落としても拾えるぐらいの広さです。それでも、座れる席は無く、その状態が終電まで続きました。
終電に着くと昨日と相変わらず人々がずらずらと降りていきました。昨日の時のようにならないよう、私は押されながらも慎重に降りていきました。
会社に着き、中に入ろうとすると───
急に当たり一面が赤くなり、警鈴が部屋全体に響き渡りました。光源がすぐ近くにあるのか、かなり眩しく、目を閉じても目の奥が少し痛むほどでした。
少しの時間も経たず、奥からアメリカさんの声が聞こえてきました。
「来るなって行っただろ!おまっ、ちょ、おい!お前の頭は腐ってんのか!?」
「腐ってるわけなくな~い?別にいいじゃ~ん!減るもん無いんだし~」
アメリカさんの怒号に対抗するように、柔らかい口調、しかし、かなり大きな声でもう一人の男性の声が聞こえてきました。
私のせいではないことに安堵し、声が聞こえる方向へ、壁に手を当てながら歩っていきました。
「だからっ!ちょ、抱きつくな殺すぞ!」
「え~。昔は許してくれたじゃ~ん!」
「今の私と昔の私はもう違う!帰れ!」
部屋に近づくにつれ、だんだんと声がはっきり聞こえるようになっていきます。
「あ!日本!!大丈夫!?」
後ろから元気な声、イタリアさんの声が聞こえてきました。イタリアさんはこの強烈な光に慣れているのか、すぐに私の姿を見つけ、私の肩に触りました。
「あ、は、はい。大丈夫です。それにしても、この光は何ですか…?」
「あー、どうやら『また』侵入してきたみたいだね」
イタリアさんは私の問いに対して頭を抱えながら答えました。
「『また』ですか?」
「うん。ま、まあ、見れば分かるよ。見に行く?」
「あ、はい」
「それじゃあ、道案内するね!手を握って!」
「あ、分かりました」
イタリアさんは私の手を握り、アメリカさんがいる部屋へ案内しました。
「失礼しまぁっす!」
「し、失礼します…」
私とイタリアさんの声は…
「お前はいつになったら侵入を諦めるんだ!?」
「ん~、アメリが俺に気が向いたらだよ~?」
「あー、お前のそういうところ嫌いだ。さっさと消え失せろ」
「ね~え~酷い~!!」
アメリカさんと、金髪でアホ毛?が生えている男性の声によってかき消されました。なんなら、先程よりこの二人の喧嘩はだんだんとヒートアップしています。
「あ、あの………」
私が声をかけても二人は喧嘩を止めることを知らず、警鈴の音より激しく言い争っています。
「アメリカさん!そしてロシア!日本がいるんだから喧嘩はやめなさ~い!!」
イタリアさんの声に、二人は一瞬固まりました。隣にいた私はイタリアさんの声に耳を塞ぎました。
「あ、嗚呼、すまん、日本」
「え?え?日本ちゃんもう来てたの?え?知らなかったんだけど…え、アメリ!日本ちゃん復活してるなら話してよぉ~!」
「お前に話す義理など無い」
「ねえ酷い~!」
私とイタリアさんがいるのにも関わらず、またもやお二人は喧嘩を始めてしまいました。アメリカさんは冷静に、しかし苛つきを隠せず、もう一人の方はヘラヘラしながら。
「アメリカさん、ロシア、もうやめてよぉ…」
まるで言うことの聞かない弟たちをまとめているお姉さんのようにイタリアさんは呆れながらお二人に話しかけました。すると…
「ロシアさん。早く戻って仕事しましょう」
喧嘩しているお二人の後ろから、男性の声が聞こえました。その声は私の鼓膜、そして脳へと響き渡りました。
二人の間を見てみると、そこには黒髪の男性がいました。身長は私と同じぐらいの男性。彼が私の目を見た瞬間、私の体はきゅっと固まりました。
「うー、ごめんって北くーん!もうちょっと待ってて!ね!?」
そう金髪の男性が黒髪の男性に言った後、私の手を颯爽と握ってきました。私は急に握られたことにビックリし、固まってしまいました。
「俺の名前はロシア!いやあ、記憶喪失って聞いてビックリビックリ!あ、で、この子は北朝鮮!通称北くんだよ!そんなことより、今夜空いてる?もしよかったら一緒に一杯どうかな?」
金髪の男性、ロシアさんが早口に私にそう言い、目をキラキラさせながら迫ってきました。
「ロシア。日本から離れろ」
私の心を感じ取ったのでしょうか。アメリカさんがロシアさんの腕を掴み、そういいました。ロシアさんの腕がキリキリというほど。
「痛っ!?ちょ、アメリ~!痛いってば──ねえ、アメリ!!?」
ロシアさんの声が震えるほど、アメリかさんの力は強かったようです。イタリアさんはその様子に苦笑いし、黒髪の男性、北朝鮮さんは無表情でアメリかさんのロシアさんの方を見ていました。
「…………ま、まあ、いいや。アメリに嫉妬されるぐらいなら日本ちゃんは狙わなくていいや!」
「嫉妬などしてない。お前が内の社員に手を出すのに反吐が出るだけだ」
「へえ?アメリ、そんなこと言うんだ~?」
二人の空気はどんどん重くなる一方、黙って様子を見ている北朝鮮さん、冷や汗をかきながら二人を慰めようとするイタリアさん。私は、ただ北朝鮮さんの事を見ていました。
「はあ、もういいや。今日は帰る。アメリは俺に構ってくれないし」
「私はお前に構う義理などない。消え失せろ」
「はいはい。分かったよ。じゃあねアメリ。北くん!行くよ!!」
「分かりました」
ロシアさんが北朝鮮さんと出ていく直前、北朝鮮さんは私の方を睨みつけました。
彼は、何者なのでしょうか?
見たことのある人
「─────本、日本!!」
イタリアさんの声にハッとし、周囲を見ると、イタリアさんとアメリカさんが心配そうな顔で見ていました。
「日本、大丈夫?一分ぐらい反応なかったけど…」
「ま、まあ、急に起こった出来事だからな。理解できないのも分からなくもない」
イタリアさんは私の意識を確認するかのように手を振り、アメリカさんは少し呆れているような表情を浮かべました。
「す、すみません。………一体、あの二人は…?」
私が問いかけると、アメリカさんは深刻そうな顔をし始めました。
「ああ、ロシアの事か。………あいつは定期的にこの会社に来る、所謂侵入者だ。そして、北朝鮮はロシアの部下だ。あいつらが何故この会社に来るのかは未だに分かっていない」
アメリカさんは淡々と話し始めました。
「で、では、何故アメリカさんはロシアさんと離れたいんですか?」
私がそう問うと、アメリカさんは言葉を飲んでしまいました。
「あ、いいです!すみません。アメリカさんの気持ちに気づかず!」
私はアメリカさんの心情を読み取り、速攻謝りました。ロシアさんとは過去に色々あったのでしょう。
「嗚呼、いいんだ。………いつか、話してやる 」
アメリカさんはそう答え、遠くの方を見つめました。その顔は、哀色に染まっていました。
「そうだ。今日はイタリアが案内するんだったな」
「は~い!そうで~す!」
アメリカさんの言葉にイタリアさんは元気よく答えました。
「それじゃあ、イタリア。あとは日本を頼んだ」
「わっかりました!」
イタリアさんはアメリカさんにハイタッチをしたあと、私の手を引き、部屋から出ました。
「さて、と。ごめんね~!朝から騒がしくなっちゃって!」
「あ、いいんですよ!イタリアさんが謝ることではありません!」
イタリアさんが申し訳なさそうに謝っているのを見ると、心が痛くなる感覚がしました。実際、イタリアさんが悪いわけではないですが、イタリアさんは自分の責任と言わんばかりに謝ってきました。
「さて、それじゃあ、ウチらのところに行くか!」
「はい、分かりました!」
イタリアさんが元気よく言ったので、私も元気に答えました。イタリアさんの声は廊下に響き渡りました。
私たちが部屋に入るのと同時に
「イタリア~!助けてくれよ~!」
と、誰かがイタリアさんに泣きすがってきました。その人はオレンジ髪でポニーテールの女性………いえ、男性でしょうか?
「ええ!?す、スペインどうした!?」
「ドイツに、また借金返せって言われたんだよ!!今日もサボろうと思ってパチスロ行ったら、ポルトガルが俺を会社に連れていきやがってよ!!もう本当最悪!!」
スペイン、と呼ばれた人は、イタリアさんに愚痴を言いながら地団駄を踏んでいました。
「はあ、スペイン何してんの……あ!スペイン!隣を見て!」
「んあ? 」
その人は私の方を見ると、数秒間固まり
「は、はあああ!?に、ににに日本!?何でここにいる!?え!?入院してなかったっけ!?」
と、慌てる様子を見せました。イタリアさんはその様子に爆笑し
「あー、そっか!スペインずっとサボってたから分からないか~!」
と、煽るように言いました。
「ぐっ………はあ、仕方ねえ。俺の名前はスペインだ!ま、スペインと呼んでも良いし、長髪とも呼んでも、パチカスと呼んでも、何だっていいぞ!」
オレンジ髪のポニーテールの男性、スペインさんはキリッとした目付きになり、キメポーズを取りながら私に話しかけました。
「すっごい自虐だね!」
「してねえよ!」
イタリアさんとスペインさんは仲がとても良いのでしょうか。かなり話が盛り上がっている様子でした。その様子を見に来たのか、たくさんの人が私たちの回りに集まってきました。それはもう、身動きがとれない程です。
「え!?日本だ!?え?え!?」
「待って!みんな落ち着いて!!うわあ!!本物だあああ!!」
「お前が一番落ち着け!」
「うわあ!久しぶり~!久しぶりすぎて吐きそうだよ~!」
そんな言葉たちが、次から次へと飛び交ってきました。
「ほーら!みんな落ち着いて!みんな、一回仕事に戻って!日本に挨拶するのは日本が話しかけてからにしよ!ね!?」
イタリアさんが皆さんにそう言うと、皆さんは頷きながら撤退していきました。
………たった一人、鋭い目をした男性以外は。
「…………」
その人の目は私の瞳を貫き、目に光が宿りました。その瞳はなんとなく怖く、獲物を見つけたような目付きでした。
「あ、あ~!日本!この子がドイツ!!ドイツ、そんな目だと日本が怖がっちゃうよ 」
どうやらこの男性がドイツさんのようです。
「……」
ドイツさんはイタリアさんの言葉が聞こえていないのでしょうか。私に一歩一歩近づいてきます。私は恐怖のあまり、目を瞑って物事を進ませるしか方法はありません。しかし、何も起きず、警戒心消さずに目を開けると、そこには確かにドイツさんが、すぐ目の前にいました。彼の顔を見ようとすると、首が痛くなるような感覚がします。
「あ~!ドイツ!!日本が怖がってる!!も~!無愛想にもほどがあるよ~!?」
「うるせえ…」
イタリアさんの声に反発するように発した声は、低く、獣の声でした。私の体は硬直し、その場で縮まりました。
「……………日本」
「は、はいっ!?」
突如呼ばれたことにより、私の声は裏返ってしまいました。
「……ふっ」
しかし、ドイツさんの顔が緩み、笑顔を見せたと思った瞬間、そのまま席へ戻ってしまいました。
「……?」
私がドイツさんの行動に困惑していると、イタリアさんはため息と微笑みを浮かべました。
「いやあ、ごめんね?ドイツ、ちょっとツンデレなところあるからさぁ…素直になれればいいんだけどねぇ… 」
やれやれというようにイタリアさんは言いました。私が病院で寝ている間に、イタリアさんとドイツさんは何かあったのでしょうか…?
「さてと!じゃあここでやってる仕事を紹介するよ~!」
イタリアさんは先程の雰囲気を塗り替えるように、手を叩いた後、ホワイトボードを持ってきました。そして、ホワイトボードに何か図を書き始めました。
「ここでは、潜入調査が主な仕事内容だね~!潜入で手に入った情報をまとめるのが大体の人の仕事かな!」
図を書き終わった後、イタリアさんは少しホワイトボードの方に視線を向け、自賛するような顔をしました。
「この図は、その仕事の流れだよ!潜入担当がその目的の場所に潜入する。その子達が戻ってきたら、その情報をまとめて資料にする。そして、それをアメリカさんに渡す、って感じかな!」
ニコニコとしたイタリアさんの前で、私は少し頭がこんがらがってました。潜入調査とは、一体何の意味があるのか。危険が伴わないのか。私がする、とは言ってなくても、そんな不安と心配が私の頭を駆け巡る。
「あれ?不安そうな顔してるね?」
私の異変に気付いたのでしょうか。イタリアさんは深緑色の瞳を私の顔に向けました。
「まあ、日本のことだから、多分潜入調査心配でしょ?それなら大丈夫!」
クルリとイタリアさんが回った瞬間
甲高い鈴のような音がイタリアさんの方から聞こえてきました。
少し耳が痛くなり、私は耳を押さえる。イタリアさんはスマホを取り出すと、慌てたような顔でスマホを耳に当てました。すると、鈴のような音は収まり、静けさが戻りました。どうやら、イタリアさんの電話の着信音だったみたいです。先程の元気さとは違い、眉を下げながら電話するイタリアさん。
「もしもし?どうしたの?………………はあ!?またバレた!?君達本当何してるの!?とりあえず、早く戻ってきて!後で話は聞くから!!」
イタリアさんは電話を切った後、まるで仕事終わりかのような疲れた顔になっていました。
「だ、誰からだったのですか…?」
「フランスからだよ。潜入してることがバレて、今、逃げてるところらしい」
先程大丈夫、と言っていたイタリアさんですが、やっぱり危なかったかも、と呟いてました。
「本当、相談ぐらいはしようよ。仲は悪くても、同じ仕事仲間なんだから……」
ぶつぶつと言っているイタリアさんは、そのまま廊下の方へと行ってしまいました。
置いていかれた私は回りを見渡す。イタリアさんがいない中、何をすればいいのでしょうか?
立ち止まっても意味がないので、私は軽く仕事の様子を見ることにしました。
「日本!久しぶりね!!」
そういってきたのは、髪が赤と青、そして白 で構成されている、胸が大きい女性でした。
「よかったあ!!本当、久しぶり!!体調は大丈夫なの?変なやつに絡まれたりしなかった?」
涙目になりながら、その女性は私の体を抱きしめました。
「あ!ゴリラが日本を抱きしめてる!日本が潰されるじゃねえか!」
明るい男性の声が聞こえ、その方向を見ると、お世辞にも大きいとは言えない、赤と白で髪が構成されている男性がいました。その人は女性を指差して、笑っています。
「あんた…………今度は半殺しじゃ済まなくなるわよ…?」
しっかりと顔は見えませんでしたが、なんとなく背筋がゾッとしました。
「す、すみません。流石に言いすぎました。許してくださいノルウェー」
小さな男性は女性に土下座をしました。女性は私の頭にかかるほどのため息をつき、私の体を離しました。変わりに、私の肩を強く叩きました。
「本当、あいつ人のことを考えない発言をするんだから………どうにかしてほしいわね…」
私に同情を求めたのか、私の方を見た瞬間、ハッとした様子で女性は私の目を見ました。
「ご、ごめん!!日本、記憶喪失なのに前みたいに接しちゃった!うわあ、ごめん!本当ごめん!」
女性は手を合わせて私に謝罪しました。
「だ、大丈夫ですよ!あまり気にしないでください!」
私がそういうと、女性の顔はパッと明るくなり、私の手を握りました。
「やっぱり日本は優しいわね!本当尊敬するわ!」
そういって、私の手をさらに強く握りしめました。
「あ、一応名前言っておかないとダメよね?私はノルウェーよ。ごくごく普通な女性社員。これからも、と言うのかしら?まあ、よろしく!」
ノルウェーさんはニカッと笑顔を浮かべ、男性の方を見ました。
「ああ!僕はデンマーク!僕も一般的な社員だよー!!でも、ノルウェーはゴリラだから気を付けてね!」
「殺されたいようね?」
「ノルウェーはとても美しい!!世界でとっっっても美しい!!だからその拳をしまって!!!ちょ、ぎゃああああああ!!?」
デンマークさんは余計なことを言うからか、ノルウェーさんに一発殴られていました。
「ううっ、痛ぇっ」
デンマークさんは頭を手で擦りながら、ノルウェーさんを睨み、そして逸らしました。
「本当、デリカシーゼロね。あんたは」
「はいはい。せめて日本の前では言わないようにする」
デンマークさんは唇を尖らせて、拗ねたように縮こまってしまいました。
「ここでは、主に何をしているんですか?」
「主に潜入調査の結果をまとめているわ。まあ、九割の人はまとめ担当じゃないかしら?潜入調査で固定されているのは二人だけだし」
「二人だけ、ですか?」
「そうね」
「まあ、潜入調査なら全員したことあんじゃね?定期的に二人が潜入調査している最中に新たな調査すること多々あるしな」
私の質問に嫌な顔一つせず、二人は私に優しく教えてくれました。イタリアさんの時より詳しく。
「まあ、専門じゃなければ、潜入調査も難しくはないぜ。危険でもないしな。こんな僕でも、潜入調査は成功してるからな!」
「失敗しかけた人が何言ってるのよ」
デンマークさんはテヘッと舌を出しました。まったく………そんな感じでノルウェーさんはデンマークさんを見てました。潜入調査は、どうやらそこまで危険ではないものも多いようです。先程、イタリアさんに聞けなかったことが聞けて、心の靄がスッキリした気持ちになりました。
「日本、それで、まだ紹介したい人がいるんだけど………」
ノルウェーさんがそう言った瞬間、とある声が会社のオフィス内に響き渡りました。
「……今の声…」
私は声の主を探しに行こうと、ノルウェーさんの言葉を無視し、廊下へと走りました。
「え、ちょ、日本!?話はまだ終わってなかったんだけど!?」
廊下をしばらく走っていると、正座している二人と、立っている人がいました。
「えっ…」
「イタリアさん!?そして、イギリスさんとフランスさん!?」